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A Day To Remember / You're Welcome

デイ・トゥ・リメンバー(しばしばADTRと略される、以前はEnd of a Eraという名前で活動)は、2003年にフロリダ州オカラで結成されたUSのロックバンドで、メタルコアとポップパンクの融合で知られています。

本作は5年ぶり、7作目のアルバム。激烈性が後退し、よりポップになった作品と評されているようです。2022年、ダウンロードUK(キャッスルドニントンで開催される旧モンスターズオブロック)の1日目、メインステージのセカンドヘッドライナーなので、UKで人気なんですかね。ダウンロード2022のラインナップを一通り聞いてみようと思っているので、今日は最新作を聞いてみたいと思います。

活動国:US
ジャンル:ポップパンク、ポップ、ポップロック、メタルコア、ポストハードコア
活動年:2003-
リリース日:2021年3月5日
メンバー:
 Jeremy McKinnon – lead vocals (2003–present)
 Neil Westfall – rhythm guitar, backing vocals (2003–present)
 Alex Shelnutt – drums (2006–present)
 Kevin Skaff – lead guitar, backing vocals (2009–present)

総合評価 ★★★★☆

基本的にメロコアで、ところどころメタル的なアグレッションが高まる。アグレッションが強いところはかなり本格的だけれど、全体的なベースはメロコアで、そこにすごくヘヴィなパートとすごくポップなパート、曲が入ってくる。1,2,4,7あたりはヘヴィだし、5,6,10あたりはポップ。ブルーノマーズとスリップノットが共演しているような、ポップとヘヴィの両極に触れている。とはいえポップとしてきちんと成り立つメロディセンスがあり、ヘヴィネスも借り物感がない怒号のグロウルが炸裂。ふり幅が大きい。ミクスチャー感覚が優れていて、一歩間違えばバラバラになりそうな音の振れ幅がありつつアルバム全体として聞いたときにはそれなりの統一感がある。一つのライブとして成り立っている、というか、緩急、ヘヴィネスとポップさが一つのバンドの作品、アルバムとしてきちんと同居している。いわゆるモールコア(ショッピングモールに親と行くようなキッズ向け)と揶揄されるような、売れ筋のUSメタルといえばそうなのだけれど、メロディセンスがかなり良くて聞いていて心地よい。ポップスとはつまるところ気持ちよくてなんぼだと思うので、しっかり気持ち良い歌メロ。そこに気が付くと強烈なグロウルをかましてきてなかなか面白い。11とか12あたりはメタル入門としてもいいかもしれない曲。

1 Brick Wall ★★★★☆

アコギのストロークに性急なドラムが入ってくる、ツービートを基本としてハードコアなリズム。その後メロコアっぽくなる。けっこうヘヴィなリフへ、全然ポップ感はないな、この曲はハードコア感がしっかりある。メロコア寄りだけれど。ドラムも軽めながら疾走しているし、ギターの音も芯がありザクザクしている。ブレイクダウンし、スロウでヘヴィな、腰から頭を振り回すリズムへ。モッシュピット。けっこうヘヴィなパートとメロディアスなパートのバランスがいい。

2 Mindreader ★★★★☆

メロディアスな、いかにもモダンなメタルコア、ただ、メロディはメロコア寄り。メロディアスだがちょっとマイナー調。エピタフ系の感じもあるが性急な疾走感よりはかっちりした、メタル的な音像。エモ系といった方がいいか。わかりやすく盛り上がる。ありがちな曲展開なのだけれど、緩急のつけ方がうまくて娯楽性が高い。編曲と音響が良い。これはライブで盛り上がりそうなバンド。セカンドヘッドライナーと言われれば納得。

3 Bloodsucker ★★★★☆

ウォウウォウコーラスからアコギとビート、そしてボーカル。ポップな音像だがところどころに歪みというか、ちょっと荒々しさが潜んでいる。途中からボーカルがスクリーム気味に。リンキンパークより案外うまくポップとかエレクトロニカな要素を取り入れているかも。リンキンは音像変化が極端だったからなぁ。リンキンチルドレン感はあるが、生き延びているだけあって洗練されている。エレクトロニカ、EDM的低音、ヒップホップのテイストを入れつつ全体としてはアリーナロックに仕上げてある。なかなかなミクスチャー感覚。音のセンスが良い。

4 Last Chance To Dance (Bad Friend) ★★★★☆

かなりモダンへヴィな曲、グロウルと攻撃的なリフ。と思っていたらクリーントーンへ。これ、ポップさとアグレッションのバランスがなかなか絶妙。けっこうヘヴィな箇所はヘヴィだしグロウルもかなり強め。クリーンパートのコーラスはUSメタルコアらしい歌メロ。ハーモニーが多重に重なっていく。

5 F.Y.M. ★★★★

Policeの「見つめてみたい」みたいな、ちょっとリバーブがかかってブリッジミュートされたギターサウンド。ポップな音像の曲。ディズニーとか、ハイスクールミュージカルでかかってもおかしくない感じ。F.Y.M.は「Fuck You Money」の略のようだ。音像と歌メロはポップだけれど歌詞はなかなかだな。この曲はアグレッションは弱めのまま終曲。

6 High Diving ★★★★☆

お、中盤はポップパートなのかな。この曲も最近のヒットソング的な、(最近の)コールドプレイみたいな音像。完全にポップだが、ボーカルはじめ、音像には少し陰がある。ちょっとつぶれた感じの音響、とか。単曲だけ聞けばポップだが、このアルバムの中に入っていると荒々しさを抑えている感じがする。いい歌メロ。

7 Resentment ★★★★☆

ヘヴィネスが戻ってきた。強めのリフ。ボーカルが入るとギターが引き、ベースとビートだけが残る。ブリッジでだんだん盛り上がっていき、ボーカルがグロウルへ、そこからクリーントーンのコーラス、こちらもだんだん盛り上がる。ここぞというときにかなり強烈なグロウルが出せるのは強いな。だんだんと声がつぶれていく、野獣化していく感じがある。この曲は迫力があるな。

8 Looks Like Hell ★★★★☆

R&B的なバックトラック、からスタートしたが途中からバンドサウンドに変わる。そこまでメタル感はなく、ちょっとガレージバンドっぽい荒々しさ。幽玄なシンセ音、揺らぐような感覚があるビート。メロウなヒップホップ感もある。ちょっとストーナー感もあるリフとヒップホップっぽいビートを組み合わせたなかなか面白い曲。

9 Viva La Mexico ★★★★☆

そこそこ激烈なビートだが音は軽め。コーラスが「メキシコ万歳」と、急にパーティー感が。曲調はメロコア。Sum41とかゼブラヘッドとか。90年代後半~00年代にあったメロコアっぽい王道メロディ。ただ、編曲とか音の組み合わせ方は遊び心を感じる。どの曲もベタなのだけれどなんだか楽し気な雰囲気があるんだよなぁ。

10 Only Money ★★★★☆

これまたポップな感じの曲。これまた「Only Money」と「ただ金のため」皮肉が効いた曲。金の歌が好きなのか。今Wikiを見たら前作は全米2位なのか。けっこう成功しているんだなぁ。あまりUKでは売れていないようだけれど、そのテコ入れも狙ってのDownload出演なのか。このアルバムは15位だけれど、クオリティが落ちたというよりライブができないのが響いているんだろうな。なんというかバンドの勢いみたいなものは感じる。メロディも充実しているし音に遊び心、ノっている感じがある。この曲はヘヴィさはほぼなく、「ちょっとロックテイストもあるポップ」という感じ。

11 Degenerates ★★★★☆

ちょっとヘヴィな色が強くなってきたが基本的にポップな曲。こういうポップな曲がきちんと作れる、サマになるというのはメロディセンスがいいんだなぁ。激烈さだけでなく、音の引き出しの幅が広い。オーストラリアのTwelve Foot Ninjaにも少し近いかもな。ポップとヘヴィのミクスチャー感、しかもどちらもきちんとポップ、ヘヴィネスで成り立っている、組み合わせ方がうまい。お、途中からヘヴィなリフが。Wildheartsとかにも近い感覚かも。UKらしさはないけれど。ビートルズmeetsメタリカ、というよりは、ブルーノマーズmeetsメタリカ。

12 Permanent ★★★★★

ギターの刻みの上にボーカル、バッドレリジョンあたりに近いメロコア感だがミドルテンポ、疾走感は薄い。サビはしっかり盛り上がる。やはり歌メロのセンスがいい。さまざまな音が入っているし、トラックもビートやアレンジ、重なってくるメロディが凝っている。かなりいろいろな要素が入っている。途中から激烈性が増す。おお、これはカッコいいな。影響を受けたバンドはNew Found Glory, Blink-182, NOFX, Bury Your Dead, Comeback Kid, Millencolin, On Broken Wings, and Seventh Starらしい。ほとんどメロコアで、ちょっとメタル要素がある感じ、だな。リンキンパークとかニューメタルよりメロコア、メタル要素があるメロコアの系譜なんだろう。メロディセンスはまさにそう。

13 Re-Entry ★★★★☆

終盤に差し掛かり音の勢いが増してきたように感じる。前曲も盛り上がったし、本曲も最初からなんというか音のきらびやかさ、クライマックス感がある。ライブ終盤感というべきか。いやぁ、このアルバムはかなりポップだけれどセルアウト(商業主義に迎合)した感じよりハードコアからの系譜を感じる。もちろん、商業的にメインストリームで勝負しているバンドなのだけれど、そうした「売れ筋」の音の中に、きちんと自分たちのルーツを入れ込んでいるというか、高度に融合している。「ポップな表現」も自分たちのツールとして使いこなしている感じ。

14 Everything We Need ★★★★

アコギでスタート、バラードか。本編後のアンコール、みたいな感じかな。静かに始まってだんだん盛り上がる、シンガロングなコーラスが出てくる。コーラスがキャッチーなので合唱が起きそう。ややクールダウンして終了。いいアルバムでした。




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