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Svalbard / When I Die, Will I Get Better?

Svalbard(スヴァールバル)はUK、ブリストル出身のハードコア・パンクバンドです。ハードコア・パンクに分類はされるものの、聞いてみた感じはメタル色が強いですね。ただ、前情報なく聞いたらどこのバンドが分からなくて、北欧っぽい語法(メロデスとか)を使いつつ、どこかカラッとしているというか洗練されている、ヒップホップなど今のメインストリームの語法も使っていてUSのバンドかとも思いました。そうか、UKか。確かにBring Me The Horizenを筆頭とするUKニューコアの系譜のバンドと言われればそんな音像ですね。最近のマーキュリープライズはヒップホップ色が強いし、今のUK音楽シーンで好まれるエクストリームミュージックの形態なのでしょう。好きな人がいるのは分かりますが個人的にはあんまりニューコア系のメロディが響いてこないんですよね..。UKロックは大好きなのですが不思議です。

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2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Open Wound
コーラスとリズム、野生の血を呼び起こすかのようなトライバルな始まり方
テンポアップして急に攻撃力高めに、いきなりパンチラッシュが始まったような
格闘技的に言えば様子見のジャブから打ち合いのラッシュがスタートしたような
ボーカルはグロールだが比較的聞きやすい
けっこうポップというか、娯楽性のある音作り
バッキングはポストロック、ギターポップの語法も取り入れていてそれほどヘヴィではない
グランジオルタナすらもルーツとして、その次の次の世代なのかもしれない
ボーカルはグロールだが悲哀や怒りも感じるもののバッキングが陽性なので前向き、ポジティブな攻撃性を感じる
バッキング、バンドサウンドは有機的
ポリフォニーとホモフォニーの中間ぐらいでボーカルに焦点は当たるもののバッキングのメロディが絡み合う
ボーカルは基本グロールであまりメロディは感じさせないが、バッキングで主メロっぽいメロディがあり、それがシーンごとに絡み合っていく構成
★★★☆

2.Click Bait
北欧的、シガーロスのような空間的なコーラスからスタート
やや幽玄で、オーロラのような響き
幽玄な響きから一転してハードコアな音像へ、ただ、ギターのトーンは明るめで上品
そこからメロコアのようなテンポとバッキングになり、ボーカルもハードコアな吐き捨て型になるがキーボードとギターがメロディーを奏でる、メロデスやブラックメタルの構成に近い
メインのメロディはキーボードと単音のトレモロギターが担当
アグレッションは強いが音像は陽性で、どこかアンビエントじみている
とはいえ、一人ブラックメタルのバンド群ほどボーカルが埋もれているわけではなく、バンドサウンドとしてのダイナミズムはある
コールアンドレスポンス的な、「Fuck Off!」と聞こえるコーラスが入る、合唱パートか
ここから推測するにけっこう陰鬱で攻撃性の高い歌詞なのか
ただ、Code Orangeとかよりは陽性な感じを受ける、絶望より希望、諦念より努力、戦うこと自体は諦めていない的な
ドラムが表情を自在に変えていき、ギターとキーボードが一丸となってメロディを奏でる
ベースもユニゾン
ベースにメロコアの陽性さがあるような気がするのが特徴か
★★★★

3.Throw Your Heart Away
ドラムの手数がかなり多く、比較的テンポも早め
多少のバタバタ感はあるがそれでも小気味よさがあるのはドラムの演奏力の高さだろう
ブリッジからはブラストにデスボイス、メロディアスなリフという完全ブラックメタルのフォーマットになるがどこか聞きやすさ、洗練された感じはある
それほどブラックメタルは聞いてこなかったがブラックメタルも30年以上が経っているのでさまざまなクリシェやレガシーがあり、洗練させてきたのだろう
グランジオルタナも経てエモ、コアと言われるジャンルを通り抜けてきた音世界を感じる
どこか歌心があるというか、ロックの王道のフォーマットがベースにある
とはいえ、メインメロディはボーカルではなくキーボードとギターなのでバンドサウンドとボーカルの絡み合いがある
そこがポリフォニーとホモフォニーの融合感があって面白いのかもしれない
★★★☆

4.Listen To Someone
少し孤独感がありつつメジャー感を喪わないコードカッティングからスタート、ギターの音色が幽玄かつ優美
ドラムと共にクリーントーンのボーカルが入っていく
ボーカルの音量はかなり控えめで他に混じっている
ドラムがやや変拍子とタメで空間の隙間を作っている
ブリッジからお得意のブラスト+デス声+メロディアスなリフ、というシンフォニックブラックのパターンに
このシンフォニックなメロディがいわゆるクラシカルだったりオペラティックではなくどこか今のヒップホップ的、ドリームポップ的というか、少し寂寥感を感じさせるイマドキの音になっている
今のヒップホップはメロディアスなオケにボーカルを載せるが、あのオケのような雰囲気のあるパートが結構ある
そうした寂寥感あるパートとブラックメタル的なパートとが出てきて、緩急をつけている印象
音作りは聴きやすさというか、アンビエント、どこかドリーミーな感覚がある
USインディーズロック的、とも言えるかもしれない
ギターの刻みリフはほとんどなく、ザクザクした音圧もほぼない
ドラムはかなり表情を変え、ボーカルもグロールだが極端な刻みや迫ってくる感じは受けない
★★★☆

5.Silent Restraint
少し雰囲気が変わりメロディアスさが前面に出たアップテンポの曲、ボーカルのクリーントーンも少し入る
90年代の北欧メロデス勢の萌芽期、Dark TranquilityとかIn Flamesとか、あのあたりの雰囲気も少し感じる曲だが、北欧的メロディというよりはUS的なメロディかなぁ
疾走するエイトビート、ドラムが軽快にリズムを叩きつつ、ボーカルが吠え、他の楽器隊がメロディを奏でる
ボーカルは吠えているものの極端な歪みまではない
★★★

6.What Was She Wearing?
ギターのアルペジオというかエフェクティブなリフからスタートし、すぐにバンドが入ってくる
少し眠くなってきた。。。コンディションの問題なのか、曲の構成が似ているのか飽きてきたのか
けっこう曲ごとの表情は違うと思うのだが、なんというか起伏のつけ方やメロディがあまり個人的な琴線に響かないのかも
最後は刻みで終了、後半に連れて盛り上がった気がする
★★★☆

7.The Currensy Of Beauty
聴きやすく陽性ですがアルバムのメロディが一本調子な気もする
この曲はブラックメタル的な疾走曲、ボーカルとメインメロディが絡み合う構成
ドラムパターンの変遷は見事、ブラストに展開してコーラス解禁
ボーカルの熱量は上がっていくが、バンドはどこかしら優美さを保っている
★★★☆

8.Perlescent
音響的なポストロック、残響音の強いギターにクリアトーンのボーカルが入る
かなり開放感のあるシーン、今までの展開を天高くに昇華するような曲
ギターもクリーントーンで美しい、グロウルが負の感情や醜さの表現なら美の表現と言えるか
途中から他の曲と同じグロールとメロディアスなバッキングに移行して曲が続く
コーラスが終わると再び幽玄で壮大なパートに戻る
音楽としての娯楽性はありますがあまり情景が浮かばない、あえて言えば荒野だろうか
透明感があって透き通ってはいるが冷たさはないので北欧勢とは違うし、、、やはりどこか乾燥してカラッとしている
★★★★

全体評価
★★★☆
USのバンドだろうか、ブラックメタルとコアを合わせた音楽性
バッキングがポストロック、アンビエント的で、メロウなヒップホップのトラックのようなシーンが出てくるのが特徴的
けっこう強めのグロールで、ブラストやブラックメタル的な音像だが聞きやすく陽性なのは個性だと感じた
完成度も高いが、ちょっと曲の構成がワンパターンというか、同じ感じのテンションやメロディが続くのが少し食傷気味
こういう雰囲気が好きならたまらないのかもしれないが、嫌いではないけれど大好物でもない、ぐらいなのでもっとバリエーションがあった方が楽しめた
全体的にプロダクションも良く、完成度も高い作品だと思うがメロディがやや一本調子で、耽美と言えるほどには美しさが足りないということでこの評価

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