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Nao / And Then Life Was Beautiful

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ナオことネオ・ジェシカ・ジョシュア(1987年12月20日生まれ)はUK、イーストロンドン出身のSSW、プロデューサーです。音楽性は、メディアなどでは”エレクトロニカ、R&B、ファンクなどを組み合わせたソウル”として説明されます。2016年にデビューアルバムをリリースし、本作は2018年のセカンドアルバムに続く3枚目のアルバム。

母親がジャマイカ出身で、ロンドン在住。NAOもロンドン生まれです。父親はノッティンガムに住んでおり、母親と父親は婚姻関係はなく「友達」として子育てを行ったそう。NAOは二人の間の一人っ子です。

プライベートでは2020年6月11日に第一子を出産。母親になって初めてのアルバムとなります。TIDALのおススメに出てきて軽く聞いてみたらとても良かったのできちんと聞いてみることにしました。NMEでも五つ星獲得などメディアの評価も上々のようです。

活動国:UK
ジャンル:Soul、R&B、avant- R&B、avant-soul、electronic、funk
活動年:2014-現在
リリース:2021年9月24日

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総合評価 ★★★★

個性的な声。小女性と母性が同居するような。どこか子供のような高さを持ちつつ温かさや柔らかさがあり、ジャケットの通りヒマワリのような、光を感じさせる(あるいは光に向かっていく)声。心地よい。アルバム全体としてみると声が魅力的なのだけれどちょっと刺激が足りないというかややのっぺりして聞こえる。冒頭、1,2曲目の掴みがちょっと弱いのが惜しい。個人的な好みなのだろうけれど、ちょっとおとなしすぎる。3曲目ぐらいからテンションが上がっていく。2,3,9,10,12は良い曲。ヘッドフォンで集中して聴く、というよりBGMとして流していた方が心地よいアルバムかも。

1. ‘And Then Life Was Beautiful’ ★★★★

少しオーケストラの調音的な響き、その後アルペジオが響いてくる、そして少女のような声が入ってくる。声の掴みがOK。バックのサウンドにはちょっと(同じロンドンの)Little Simsにも近いドリーミー、ファンタジックでオズの魔法使いのサントラ的な雰囲気がある。今のロンドンのR&Bシーンのトレンドなのだろうか。ただ、ボーカルの声質は全然違う。こちらの方が声そのものの個性は強い、歌にスポットが当たっている。透明感がある、抜けがいい音楽。朝や昼間に合う。軽やかに複数のコーラスが絡み合う。


2. ‘Messy Love’ ★★★☆

落ち着いた雰囲気に。ボッサ的なエレキギターのつま弾かれるバッキング。その上でボーカルが乗る。軽くホワイトノイズが乗っているのがレコード的な質感を出している。R&B的なメロディ、絡み合うコーラスにボッサ的なバッキングの曲。力が抜けている。心地よいがちょっと個人的には音に刺激が足りない。

3. ‘Glad That You’re Gone’ ★★★★☆

ポリフォニー的なハーモニーからスタート。バックにギターが入っている。おお、この曲は掴みがいいな。ちょっと哀愁というか、情感が籠ってきて音に芯が入ってきた。ちょっとラテンアメリカ音楽的な、ギターのミュートしたリフ、レゲエロック的なギター。ポストパンクの手法的な。音像は全体としては軽くレゲエのビートが入ったソウルだけれど、ギターリフだけが少しロック感を足している。ナレーションが入ってきて終曲へ。

4. ‘Antidote’ (ft. Adekunle Gold) ★★★★☆

男性ボーカル、いかにも最近のR&B的なサウンド。ちょっとビートは独特。ラテン音楽的。ズッズタンドン、ズッズタンドン、のリズム。これなんだっけな。バイレファンキかな。昨日のクンビアとは違う。アフリカン、二グロ系リズム。かなりミニマルなトラックで、シンプルなビート、ハーモニーによって曲の輪郭が構成される。ビートがシンプルな分、リズムが前面に出てくる。酩酊的な反復。ハーモニーでスィートにコーティングしてあるがクセになる曲。抑えた熱情、哀愁を含んだ情熱的な。

5. ‘Burn Out’ ★★★★

ボーカルが踊る。ヒップホップ的リズム。ゆったりとしている。コーラスでメロディが上昇する。ドリームポップとは音像が違う、もっとクリアだけれど、どこか夢見るようなメロディ。音には刺激が少なめなのだけれど、ボーカルメロディの展開が魅力的。Bjorkのメダラ(バッキングまですべて人の声で構築されたアルバム)ほどではないがボーカルアルバムだなぁ。ビートと和音は入っているが、基本的にハーモニーが空間を埋めていて、その上にメインボーカルが乗る。

6. ‘Wait’ ★★★★

ピアノの上にボーカル、弾き語り的。今まで多重に重なっていたハーモニーがあまりなく、単体のボーカルが響く。声が細い。悪い細さではなく、なんだろう、アニメ声というとちょっと違うが、キャラクターの立った細さ。暑苦しさ、圧迫感がない。かといってホイッスルのようにとがっているわけでもなく、適度な倍音、丸みと厚さを帯びながらもシャープでソリッドな印象を与える歌声。ミッキーマウスの声のようなキャラクター性の強さがある。

7. ‘Good Luck’ (ft. Lucky Daye) ★★★★

「グラグラグラグラ」と聞こえるが「Good Luck Good Luck、、、」と言っているのだな。男性ボーカルがゲスト。曲の後半にギターソロが入る。意外と長め。ロックテイストがとこ泥個入ってくるな。心地よく流れる曲。

8. ‘Nothing’s For Sure’ ★★★★

強めのビートに低めの声。節回し。ただ、低めの声でもジェントリーな響きは変わらない。悪くない曲だがオーソドックスな展開。後半になるにつれてクールながらテンションが上がっていく。

9. ‘Woman’ (ft. Lianne La Havas) ★★★★☆

リアン・ラ・ハヴァスがゲスト。年齢も近いし(リアンは1989生まれ)、キャリアも近い、サウスロンドン出身と出身地も近いので仲が良いのだろうか。ハヴァスは個人的に好きなアーティスト。ギター一本の弾き語りでも存在感があって、声もいいしギターもうまい。この二人は声のキャラクターが全然違うから面白いな。アダルトでアーバンなハヴァスと、どこか小女性も感じさせるナオの声が絡み合う。相性が良い。コラボアルバム作ってほしいぐらいだ。トラックはゆったりとしたディスコのノリ。

10. ‘Better Friend’ ★★★★★

つかみどころのないバッキング、ややアンビエント的。その上にわかりやすいボーカルが乗る。同じフレーズを繰り返す。耳に残るメロディ。このメロディはUK的だなぁ。コーラス後のハーモニーにはアフリカンポップス的な明るさもある。やさしくつぶやくような歌、フレーズが繰り返される。いい曲。

11. ‘Postcards’ (ft. serpentwithfeet) ★★★★

少しシリアスな音像、ジャジーで夜の雰囲気のバッキング。ボーカルはそれほど変わらないが気持ち大人びて聞こえる。男性ボーカルがゲストで入ってくるがハーモニー感が強い。後半、夢見るようなコーラス、これはドリームポップ感が強いな。楽器隊も背面に引いていく。輪郭がぼやけていく。

12. ‘Little Giants’ ★★★★☆

アルペジオ、和音、ボーカル。ボーカルの表情が明るいながらもやや緊迫感がある。ハーモニーが入ってきて解放感が出てくる。声が基本的に明るい。まさにジャケットの通り、ヒマワリのような。明るい太陽を想起させる声質。ゴスペル的な祈り、神聖さもありつつどこか親しみやすさ、人間的な温かみを感じる。少女(無垢)性と母性の同居。そういえばこれは子供の歌だろうか。子供に対する歌。

13. ‘Amazing Grace’ ★★★★

これもまた神聖な響きがある。ジャジーで少しリズムがずれたバッキング。けっこう実験的な音像。ビートがほぼなく、ベース音とハーモニーだけで構成されている。アカペラに近い。途中から少しビートが入ってきて安定する。これはゴスペル、サウンドオブブラックネスとかを想起させる分厚いコーラスが入る。

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