見出し画像

amazarashi / ボイコット

amazarashi、2007年結成、2009年デビュー。1980年生まれの秋田ひろむ率いる日本のロックバンドです。音像的にはヘヴィロックになるのかな。何枚かアルバムを聴いたことはあったのですがちょっと内向的すぎてそこまで好きではなかったのですが、「未来になれなかったあの夜に」のMVをたまたま見て心を惹かれたのでアルバムを聴いてみました。内向的・内省的な世界観はそのままに音楽的説得力が上がっています。ちょっと北欧メロデスの荒涼とした世界観に通じるものもあったり。激烈性ではもちろんぜんぜん違う(amazarashiはメタル色はほぼない)のですが、慟哭感や、バッキングのギターがメロディアスにコード展開していく感じとか。1980年生まれということはメタルブーム直撃世代だし、ちょうどメロデスが最盛期だった90年代中盤に多感な中学生なので可能性はありますね。BUMP OF CHIKENの藤原基央も1979年生まれでほぼ同年代。バンプもインディーズ期の「グングニル」とかメジャー2ndの「ユグドラシル」とか、北欧メタル、メロデスの影響を感じますね。インタビューで本人が話しているのを読んだわけではないのでメロデスを直接聞いていたのか、あるいはメロコアとか、日本のバンドが解釈した別のものを聴いていたのかはわかりませんが。この2バンドはなんとなく音像にそういう北欧からの影響を感じます。話をこのアルバムに戻すと、作曲能力も開花していて70分超とかなり長尺のアルバムですが曲調のバラエティで聴き通すことができます。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.拒否オロジー 2:53
左右にゆれるギター、ヘッドホンが壊れたかと一瞬思った
ナレーションが入る、野太い芯のある声
最近あまり邦楽を聴かなかったら意味より音が先に入ってくるようになったなぁ
オルタナっぽいギター、ピアノ、詩の朗読
語尾まで力強く発音している
弦楽器が入ってくる
コーラスが入ってくる、マイナー調
泣きのメロディ、エモ感
同じフレーズを繰り返しだんだんハーモニーが厚くなる
最初からけっこう感情が昂っている感じ
★★☆

2.とどめを刺して 4:19
ベース低音、ハンドクラップ
歌が入ってくる、この歌いだしは良い
「君は失望の彼女みたいだ」
言葉が入ってくる
ギター、シンセが和音を切れの良いアルペジオで
音程移動が激しいコーラス、コード進行はどっしりしているが裏声を使ったり歌メロは凝っている
リズムが変わる、ギターがアブストラクトに入ってくる
けっこうベースは手数が多く動き回っている
意識はしていないだろうがキーボードの使い方がちょっと近作のAmorphisとか北欧メロデス勢っぽい
泣きメロ+キーボードによる哀愁メロディだと想起するのがメロデスなんだよね
ギターの代わりにボーカルがメロディを奏で、グロウルにあたるゆがみ成分はギターが担っているのでそこは逆だけれど
なんというか北欧メロデス的な荒涼とした世界観があるマイナー調のメロディ
予想より良い、以前(3年前ぐらい?)に聞いた時より明らかにいいバンドになっている気がする
★★★★

3.夕立旅立ち 4:30
アコースティックな音像、リズムが入ってくる
ボーカルパフォーマンスがいい、声の使い方が朗々としていて歌い上げるところがグッとくる
サビがフォーク的、後ろのバッキングのエレキかキーボードのフレーズはメロデス的なのだけれど
サビのメロディの落としどころがもうちょっと洗練した展開ならもっとよかったなぁ
ヴァースはフォーク的でも良いのだけれど
サビ、「い」音でずっと延ばすのがちょっと強くて耳に付く
歌いだしは良かったのだけれど
★★★

4.帰ってこいよ 6:07
ハキハキとした言葉を連ねる歌メロ
力強い、フォーク的な声、言葉がはっきりしているのはいい
ボーカルが浮き上がるのではなくバンドサウンドに溶け込んでいるのは聴きやすい
「芽吹かざるとも」が何かの呪文のように聞こえる、ネブカドザル号がマトリックスにあったなぁ
ボーカルとキーボードやピアノの反復フレーズが絡み合うのは心地よい
これ、もともとはどこから来たんだろう、ポリスとかかなぁ
日本の音楽シーンに持ち込んだのは、、、ピロウズとかだろうか
Radwimpsとか相対性理論も反復フレーズとボーカルを絡める印象がある
このバンドはそれがドマイナー調だから北欧メロデス感になるわけだ
この曲はマイナーフォークソング的
ああ、こういうはっきりした言葉をハキハキと歌うのはゆずとか19(ジューク)とかに近いのかもしれないな
どこかで聴いた、と思ったが
叫ぶ詩人の会とかはたぶんマニアックすぎて通っていないだろうし
たぶんああいう2000年ごろのフォークリバイバル的な、横浜サウンド(?)的なところの流れかもしれない
前に聞いた時よりメロディとコードがかみ合っている
閉じた世界から開けた説得力を持つようになった
ちょっとボーカルが水戸華之介的でもあるな
昔のバンドブームの、癖があるボーカル群を思い出すということ(誉め言葉)
★★★☆

5.さよならごっこ 4:32
歌いだしはいい、良いメロディ
情感が伝わってくる
言葉が強い、大事にしていることは分かるのだけれど、サラッと流れていく
それは音楽として完成度が上がったのだと思う、メロディ、歌としてサウンドに溶け込んでいる
メロディでまず感情を作って、そこで言葉の意味があとから入ってくる、ぐらいが良いと個人的には思うようになった
やはりメロディがよくないと詩も残らない、だから「歌詞」なのだ
サビは言葉とメロディのバランスが良い、跳ねるメロディ、言葉の響きで表情が変わる
今11時近く、一人で酒を飲みながら聞いているという非常にエモーショナルな時間帯
こういう音楽に浸るには良い時間なのだけれど、さて、どれだけ感情が動くだろうか
今のところ心地よくはあるけれど、琴線まではまだ触れないなぁ
★★★★

6.月曜日 6:08
ピアノ、リズム、なんとなく去り行くものを感じる、郷愁
校舎、青春の詩か
「渡り廊下で鳩が死んでた」と来たものだ、イヤなことを覚えているね
月曜日の憂鬱、か、いじめだろうか
「いじめ」というテーマはやはりエモーショナルだ、多かれ少なかれ理不尽な経験はある
自分もいじめられた、と思っていた記憶はあるが、あとから話を聞くと相手はむしろ逆に思っていたり
思春期というのは人とぶつかる、思い通りにならない「他者」を認識し始める時期なのだろう
恋愛が入ってくるとさらに「欲しいものを手に入れるために自分を変えなければならない」ことを学ぶ
おっと、話がそれた、曲が進んでいる
なめらかに曲が進んでいる、洗練されたメロディ
ただ、テーマは分かるが描写が歌詞が少しいじいじしすぎているなぁ
今の気分だともうすでに遠くになりすぎてなかなか共感できない
その分、かなり踏み込んだ歌詞ということ、ハマるとき、チャンネルが合うとものすごく響くと思う
いいコードとメロディ展開、かっこいいバンドサウンド
★★★★

7.アルカホール 5:15
クラシカルなアルペジオ、から打ち込み、ヒップホップリズムか
ボーカルが入ってくる、力いっぱい語るような
「手首の傷」とか、そんなに病んでいる系なのか
サビはかなり下から上昇していく、予想外のメロディ
面白いな、乗っていたころの小室、TMNのExpoにもこんな展開の曲がなかったっけ
別に小室っぽいわけではなく、それぐらい良いメロディだなと
アルカホール、と連呼する、そういわれるとKinksのAlcholを思い出す
これ、アルカホールというのはなんだろう、母親がアル中だった、という歌なのだろうか
アルコールのことじゃないのかな、自分がアルコールに逃げ込んでいる、というような自省の詩なのか
声を張り上げる時が一瞬野田洋次郎っぽい、声は別に似ていないと思うのだけれど、高音のわずかにビブラートがかかる感じかな
ああ、酒を飲んで忘れる歌か、「酒と涙と男と女」と似たテーマを今風に歌うとこうなるのか、なるほど
いいメロディ
★★★★

8.マスクチルドレン 5:29
ゴリゴリした音、何か潜るような音、部屋にこもっているのか
コロナの詩かな、マスクとある、これリリースはいつだろう、タイミング的にコロナの前の曲かな
「表情すら隠すくせ、分かってほしいとか」みたいなことを言っているから前のタイミングか
したくてしてるわけじゃないからな、今や
メロディがいい、曲作りのセンスが洗練されている
「最低賃金で売り払った」というフレーズはなかなか、やはり歌詞にはちょっと60年代フォークな精神があるなぁ
でも「僕がいなくても回ってく世界」みたいないじいじ感が出てくるのがなぁ
もうちょっと無頼派の歌詞だったらかっこいいんだが、友部正人とかさ「大阪にやってきた」みたいな
肉体性、飢餓感、そういったものが出てくる歌詞だったらこのサウンドと声がもっと魅力的だろう
今風に言えば竹原ピストルみたいな歌詞でもいい
音はだいぶ外に向かって開かれたのに歌詞がかなり内向的なのがもったいないなぁ
とはいえストーリーの途中だろう、だんだん開かれていくなら、その過程もストーリーだ
★★★★

9.抒情死 4:37
ノッてきた、曲のクオリティが高いまま維持されている
いいアルバムだ、これ全部で71分あるんだよね、これだけ長尺のアルバムをしっかり聞かせられるのは実力が凄い
この曲も雰囲気が変わったもののきちんとメロディは魅力的
大きく言えば「マイナー調で、最初は中音域で、サビで高音でシャウト」みたいな類型なので飽きてもおかしくないのだが
リズムの緩急やメロディの拍の取り方、サビの上昇までのバリエーションでうまく各曲の表情を変えている
これは作曲能力の高さ
後は言葉の響きもうまく使っている、この曲は「拒絶、拒絶」と言っているが、「キョ、ゼーッ!」という響きが面白い
ある意味ショッカーみたいな、奇声だよね
それが突き放す感じ、コンチキショウ感を出していて面白い
この曲は聞いている分には言葉の意味が解体されて「音」になっていて面白い
抒情「死」か、暗いなぁ
しかもリアルなテーマが多いし、、、ハイファンタジーやSFみたいなモチーフを使ってもいいと思うのだけれど
あ、それが筋少か
★★★☆

10.死んでるみたいに眠ってる 4:58
「法律なんかやぶりたーい!」というスタート
「車をぬすんではしりたーい!」おお、尾崎か
バイクじゃなくて車なのはなぜだろう、まぁそこは突っ込むところではないな
ちょっとキャラクターが変わったかな、と思ったら途中から自省と自己攻撃に
攻撃性とかいらだちを外部に向かってではなく内向させるなぁ、もちろん原因は外部にもあるのだろうけれど
こういう内向的な歌詞で共感を得られるんだなぁ、なんというかうじうじした私小説的な
やはり歌メロと演奏力の説得力ありきなんだろう、そこの説得力が高いから歌詞が入ってくる
そう考えるとこのバランスが唯一無二の感覚なんだろうな
説教臭さはない、自分に対して歌っている、内省という形をとっているから
ただ、これを口ずさむ(あるいはカラオケ)ことによって歌い手=自分になるから自分に向かってくる、内側に入る
歌ってみると印象が変わるのだろうな、聞くより歌う方が染みそう、この曲だけでなくアルバムのすべての曲に言える
★★★☆

11.リビングデッド 4:53
緊迫感のあるリズム、四つ打ち、、、でもないな、迫ってくるリズム
踊れる感じではない、緊迫感を煽るリズム
なんとなく懐かしいコーラスのメロディ、なんだろう、聞いたことがある感じだなぁ
いいメロディではある、好きな展開だが初めて聞く感じはしない
ラブサイケデリコ? うーん
アルバム曲だが好きな感じ、高校時代の自分が好きそうな感じだなぁ
★★★☆

12.独白 5:06
語り、詩の朗読
遠藤ミチロウ、「お母さん、あなたの顔もすっかり忘れてしまいました」的な
なにか危機感がある語り
ミチロウさんと比べてしまうとちょっとこれだと分が悪いなぁ
メロディがある方がいい、詩の朗読的なものは80年代パンクとか70年代フォークの人はすさまじい
今だとMorohaのハイテンションにはかなわない
バンドサウンドの盛り上がりで感情を描くが、メロディがあった方がいい気がする
どうして朗読をやりたがるんだろう、あまり表現としての必然性を感じない
一部ならいいと思うけれど、とはいえ録音物なのでライブだとまた違うのだろう
ステージ上で「やってみたい」と思うことは何か必然性がある
★★

13.未来になれなかったあの夜に (long edit) 7:12
このアルバムを聴こうと思ったきっかけになった曲
MVも含め、「売れなかったが音楽を続けるバンドマン」の詩と考えると映像が浮かぶ
難しい、硬い単語で物語は進むが、実際のところ分かりやすい物語がある
言葉が堅苦しいのは人間椅子(和嶋さん)的でもあるが、そこで描かれている感情は比較的シンプル
宮崎あおいが主演の、、、メリケンサック?なんだっけ、バンドマンの彼氏が死ぬ話
バンドマンはどこか死の予兆がある、死の淵にいる
才能ある歌い手が歌うとき、聞き手は浮遊感を感じる
そして「いつかこの人は消えてしまうんじゃないか」という感覚を持つ
どこか儚さがある、何かのチャンネルがつながるのだろう
見えないものに近づくというか、生と死の間にあるものを感じさせることが
そういう物語を思い出す、よく描き切ったものだ
ああいうMV、映像で説明してもらうと分かりやすい
(歌詞の言葉選びが”それならそうともっとわかりやすく言えばいいのに”と思わなくもない)
★★★★

14.そういう人になりたいぜ 5:58
生活音が入ってくる、身近な音
アコースティック、生々しい声が入ってくる
リバーブがあまりかかっていない
声色がよくわかる
今調べたらこのボーカルもういい歳じゃないか
こういう感覚を持ち続けられるのはある意味新鮮なんだろうな
イースタンユースとかナンバーガールとかともまた違う、もっとうじうじしている
★★★

全体評価
★★★★
かなり長尺(71分)なアルバムだが聞きとおせた
最近それほど長いアルバムは減ってきた気がする、MVありきなのでシングル主体に戻りつつあるし、アルバムも40分とか50分とか
その中でこれだけのアルバムを、しかも似たような表現手法、テーマの曲群を聞かせきる作曲・編曲能力は凄い
メロディがいいし、編曲がいい、曲ごとにキャラクターが立っている
一つの世界観を提示されてそれに浸ることができる
最初の数曲で気づいたが、北欧メロデスっぽい荒涼感はある
ギターとボーカルが逆だけれど、ボーカルがメロディ、ギターが低音というかグロウル、ゆがみ担当的な
もちろん、ギターがフレーズを奏でる瞬間もあるのだけれど、要はメロデス的な泣きのメロディと、それに絡み合う反復するメロディアスなフレーズ(リフ)みたいな骨子が似ている
ここまでマイナー感が強いバンドも珍しい気がする、なんだろう、、、中島みゆきレベルというか
まあ、中島みゆきは素っ頓狂に明るい曲もあるのだけれど
あと、歌詞が内向的なわりに音作りは外向的というか、けっこうシンガロングだし、煽情的、身体的なノリもいい
そのあたりは編曲の力だろう
聞くのと歌ってみるのとでは没入感が違うように思う、歌ったら気持ちよさそうな曲が多い

ヒアリング環境
夜・家・ヘッドホン

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?