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63.音楽の枠を広げる挑戦者たち = IMPERIAL TRIUMPHANT

IMPERIAL TRIUMPHANT(インペリアル・トライアンファント ≒ 帝国の大勝利)は2005年にアメリカ、NYで結成されたアヴァンギャルド・ブラックメタルバンド(カテゴライズが難しい、、、一応英語版wikiではこう書かれていました)です。2020年に4枚目のアルバム「Alphaville」をリリース、こちらはそのアルバムからの1曲。とにかくこれが素晴らしいアルバムです。いわゆるブラックメタル系なのでとっつきづらい音楽性ですが、フリージャズとブラックメタル・ハードコアを融合させて、そこに映画音楽のような「風景・物語性のある音」を組み合わせることで独自の音世界を築き上げています。「ジャズ+ブラックメタル」とか言われもしますが、個人的にはキングクリムゾンの影響も強く感じました。言葉の意味通りの「プログレッシブ(進化的な)・ロック」の最新形とも言えるでしょう。プログレだと昔はAmon Duulというバンドもいましたね(今もメンバーを変えて継続中、、、なのかな)。この辺りのルーツバンドの方が聞きやすいのでまずはAmon Duul IIをどうぞ。

続けてKing Crimson、こちらは1995年、復活作「Thrak」リリース時のツアー映像です。

個人的にはこういう流れのジャズ・ロックというか、プログレの系譜と、ハードコア~スラッシュ~ブラックメタルの流れがぶつかってIMPERIAL TRIUMPHANTができたのかと感じました。メタルの影響(ブラックメタル的なトレモロリフとか)もありますが、それよりはハードコア的な各楽器のゆるさというか、ノイズだとか、リズムのずれだとかも含めて音楽としていく迫力重視、ジャムセッション的な空気感を感じます。

この二曲の後に、改めてIMPERIAL TRIUMPHANTをどうぞ。

聞きやすく、、、なりましたかね。こちらは演奏シーンも出てきますが黄金仮面をかぶった3人組というなんともシアトリカルな出で立ちも特徴的です。

ポップスや王道メタルの「耳に残るフレーズ」とか「メロディ」を主体にしているわけではなく、音風景というか、「ある音が想像させるシーン」をつなぎ合わせて、全体的な物語を感じさせる、音像全体で変化していくタイプの音楽です。そのあたりはフリージャズとかに近いですね。メロディがないわけではないので聴いているとメロディが耳に残る場面もあるでしょうが、全体としては演劇的、なんというか「音そのものを楽しむ」というタイプの音楽です。激烈な方向に大きく振れていますが、他ではなかなか得られない聴感。

ちなみに今までは「ロック(メタル)をベースとしてジャズを取り入れた」感じの音像を紹介しましたが、逆もあります。ジャズ+メタル、だとこちらの方が印象は近いかも。こちらもこの機会に2曲紹介しましょう。

まずはそうした音作りの走りである「Heavy Metal Be-Bop」から「Inside Out」。

「Heavy Metal Be-Bop」は1978年にアメリカのジャズ・フュージョンバンドBrecker Brothersがリリースしたライブアルバムです。その名の通り、当時としてはハードロック、メタル的な音作りです。当時のメタル(LAメタル前夜)なので「メタル?」という感じを受けるかもしれませんが、ジャズとしてはかなり硬くて歪んだ迫力のある音作りです。

もう1曲、もうちょっとイメージに近いであろうバンドを紹介します。

Confluxはアメリカ、シカゴのジャズメタルバンドです。ジャズ寄りながらしっかりメタルの音像ですね。

ここまでがジャズとメタルの融合。しかしこのアルバム「Alphaville」は衝撃的でした。メタル・ミュージックの限界はまだまだ広がりますね。

今年リリースでもう一枚、衝撃的だったアルバムはIgorrrの「Spirituality and Distortion」。こちらは打ち込み、サンプリング主体で、「機械によって人力をはるかに超えた猛烈な曲展開による新しい音楽体験」を得ることができました。音像的にはこちらと同じく激烈寄りで攻撃性高め。この2枚は衝撃度では今のところ今年の双璧です。

それでは良いミュージックライフを。



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