見出し画像

Blanco / Blu Celeste

画像1

ブランコことリカルド・ファブリコーネは、イタリア、ブレシア出身のアーティストで、2003年生まれで2021年時点で18歳。以前、Apple Musicの各国ランキングを見ていたらイタリアで首位だったので知ったアーティストです。デビューアルバムがリリースされ、現在もApple Musicで首位独占中。本国ではかなり人気が高いようですが、あまりまだwebに情報がないんですよね。どうもSoundcloudとTikTokから活動をスタートしたようで、TikTokでバズったのでしょうか。あとはノースビジョンコンテスト(EU内のソングコンテスト)でサンマリノ代表としても出場したようですが、これはそんなに影響力はなさそう。公式YouTubeの閲覧数もかなり少ないし、ユーロビジョンほどの規模ではないようです。同じくイタリアのマネスキンがユーロビジョンからブレイクしたのとは違うルートの様子。おそらくSNSから火が付いたのでしょう。

アーティストとしてはラッパーに分類されているようですが、以前リリースされたシングルを聴く限りではかなりロック感があったんですよね。マシンガンケリーみたいな感じなのでしょうか。アルバムはどんな音像なのか、聞いてみましょう。

活動国:イタリア
ジャンル:エモ、ロック、ポップ、ヒップホップ
活動年:2018-現在
リリース:2021年9月10日

画像2

総合評価 ★★★★☆

イタリアン・ロックの新星。ヒップホップの感覚も持ちつつUSのエモのようなボーカルの熱さも持っている。ロックのテイストが入ったポップス、というべきか。オリヴィア・ロドリゴなんかにも近いかも(性別と歌い方は違うが)。スター性があり、衝撃的。イタリアでは一大ムーブメントを起こしている様子。マネスキンに次いでイタリア圏を飛び出したら面白い。複数のスターがいると「ムーブメント」になる。しかしこれだけロックっぽい音なのに「ヒップホップ」に分類されているのは謎。ヒップホップの影響はもちろん入っているのが分かるが、リズムが全然違う気がするけどなぁ。いわゆるZ世代のアーティストの中では一番、個人的な好みかも。

バッキングは本当に「バッキング」に徹している。バンドアンサンブルとか間奏のせめぎあいみたいなのはない。ボーカルが主役でひたすらボーカルが盛り上げていく。表現力もあり、歌メロも良いのだけれど、もう少し楽器隊との絡み合いとかがあるとスリリングさが増したなぁと思うところもあるので個人的嗜好から☆減点。どの曲もいいのだけれど最後の方になるとやや食傷気味になってくるんだよね。ただ、ポップスとしては素晴らしい出来。どの曲もしっかりメリハリがありつつ3分程度と短い。ビートルズのようにあっという間に駆け抜けていく。12曲34分。

ピアノと二人で行った水中ライブの様子がYouTubeに上がっていた。カリスマ性がある。

1.Mezz’ora Di Sole ★★★★

遠くから迫ってくるような音、勢いよく言葉が流れ込んでくる。言葉数はヒップホップと言えばそうだが、、、メロディアスでこれはどっちかといえばロックじゃないかなぁ。韻を踏んでいるわけでもないし、ちょっとオートチューンで声は補正されているが、メロディアスでエモーショナルなボーカル。なだれ込んでくるような歌メロ。バックトラックはオーケストレーションも入ったもの。エモっぽい。

2.Notti In Bianco ★★★★☆

これもロックなリズム、ブレイクビートではない、シンプルでミニマルなロックビート。メロディアス、かつテンションが高い。この曲のサビはいいな! これは自作自演なのだろうか。そうだとしたら作曲センスがずぬけている。天才的だったころのミシェルポルナレフを彷彿させる。作曲リストを見たらほかに2名参加しているが本人(本名のリカルド・ファブリコーネ名義)も書いているようだ。ビリーアイリッシュみたいな感じか。凄いな。さりげなくMVに出てくる人がメイデンのTシャツを着ている。

3.Figli Di Puttana ★★★★☆

この曲もカッコいい。ややブレイクビート的だがあくまでノリはロック。手を挙げて観客が合唱しながら揺れているのが見える。なんだろう、声がちょっと切羽詰まっているというか、デビュー当時の尾崎豊のような完成されている青臭さみたいな勢いがある。このボーカルとメロディで持っていく。あと、一曲一曲はかなりコンパクト。

4.Blu Celeste ★★★★

これは最近のイタリアンポップスっぽいバラード。こういう緩急をつけるというか、ビートがしっかり切れている感じが多い。ああ、もしかしてイタリアの基準だとこれがヒップホップなのかな? リズムはほとんどヒップホップ感がないのだけれど(ロックやポップのリズム)、言葉の切り方とかにはヒップホップの影響もあるかも。ただ、常にメロディアスだけれど。やはりイタリアは歌心がある。ヴァースの言葉の切り方こそヒップホップだがバックはアンビエント感もあるピアノトラック。音数がシンプルで、ボーカルが完全に曲を引っ張っていく。ボーカルの存在感が強い。 

5.Sai Cosa C’è ★★★★☆

80年代ニューウェーブ的なイントロ、から熱いボーカル。ちょっと裏声を使ったり、ニューウェーブ感が強いのだけれど、ボーカルはかなり熱い。パニックアットザディスコとかマイケミカルロマンス的なエモの影響も感じる。これは面白い音像だなぁ。

6.Paraocchi ★★★★☆

ベースがややゴリゴリしている。ちょっとパンキッシュなのもいいなぁ。そういう意味ではポストパンク(ニューウェーブもポストパンクの一部、というか、同時代のムーブメントで相互に近い)なのかな。エモを通過しているけれど。イタリアにもハードコア、パンクシーンもあったし、ポストパンクシーンもあったからな。でも完成度が高い。やはり欧州音楽の中心地だっただけのことはある。オペラとか、歌モノだとイタリアの方が本場なんだよね。中世、ルネッサンス以降。やはり歌メロ、メロディのつくり方や人の声の活かし方は優れている。メロディがグッとくる。

7.Lucciole ★★★★☆

声を震わせるボーカルが印象的なバラード。とにかく言葉数が多い。言葉数というか、次々にボーカルが出てくる。間奏で息をつく間がなくボーカルに引っ張られていく感じ。ボーカルが熱い。この熱量は凄いな、オペラというかカンツォーネというか、畳みかけてくる。粗削りでパンキッシュなのだけれど。

8.Finché Non Mi Seppelliscono ★★★★☆

裏声を活かした歌メロ、裏声が掠れているのがカッコいい。トラックはまたベタな80年代的なビート。この落差が面白い。ニューウェーブなんだよなぁ。UKのチャーチズの新譜もかなり80年代回帰していたが、こういうトレンドなのか。レトロだけれど懐かしさだけでなく新しさもある。

9.Pornografia (Bianco Paradiso) ★★★★☆

ギターコードのカッティングと飛び込んでくるボーカル、ポップパンク的。だが、いわゆるメロコアではない。ギターの刻みリフはなく、もっとプリミティブなプロトパンクっぽいシンプルさと、ボーカルはよりメロディアス。メロディセンスはイタリアならではだなぁ。シンプルなトラックに、モダンな影響も含んだイタリアらしいメロディが乗る。これはヒットするわ。あとはイタリア圏を飛び出せるかどうか。でも、マネスキンに続くかも。というか、スターが何組かいるとムーブメントになりやすい。イタリアは勢いがあるかも。

10.David ★★★★☆

雰囲気が変わり、アンビエントでささやくような歌い方に。バッキングも幽玄な世界観。ボーカルの熱量はすぐ上がっていく。ボーカルだけでよくここまでドラマを作れるなぁ。

11.Ladro Di Fiori ★★★★☆

これも存在感のあるボーカル。ヒップホップ感、イマドキのポップス感が強い。そういえばジャスティンビーバーとかもこんな感じなのだろうか。あまりきちんと聴いたことがないんだよなぁ。ただ、BLANCOはかなりハイテンション。バックトラックはブランコの引き立て役に徹していて、ボーカルパフォーマンスと歌メロだけで曲を引っ張り続けていく。ポップスってこういくものかもなぁ。ロックテイストが強い曲もあるが、そうでもない、モダンなポップスも多い。半々ぐらいか。この曲はロック色薄目。

12.Afrodite ★★★★☆

ギターとボーカルからスタート、バラード。この曲はロック的なテイストもある。フィードバックするノイズ。ただ、全体としてはR&B的な音作りか。ボーカルだけは熱量が高く、エモ的な、声を涸らす熱唱。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?