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詩 「鍵」(2022)

 ある夏の日、女の子が僕の家を訪れた。「どうしましたか?」と僕が訊くと、彼女ははじめ黙っていた。それから彼女は自分の家に鍵がかかっていて入れない、と口ごもりつつ言った。僕はその知らない女の子を居間に入れてあげた。しかし僕は学校の宿題を終わらせていなかったので、イライラしていて、しばらくその娘を無視していた。すると、女の子はすぐ家に帰ってしまった。
 
 僕は思った。もしまだ家の鍵がかかっていたらどうしよう、こんな暑い日に。またこうも思った。もしかしたら、本当は、僕と遊びたかったんじゃないかな、と。僕は振り返る。その日の出来事を。そして僕がどれくらい彼女に冷めたかったかということを。

写真 Photography at Nagara River, Japan (2021) より

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