児童文学 「ハロウィンの夜」 (2022)
ハロウィンのある夜、ぼくは小5で塾の勉強が終わってお母さんを待っていた。マイカちゃんのお母さんとマイカちゃんが塾の先生とお話をしていたのでその隣で遊んでいた。すると、マイカちゃんのお母さんが話しかけてきた。学校のことなど話したあと、旅行についてお話してきた。
犬二匹といつも車で旅行に行って車中泊をするということである。ぼくはちょっと想像できなかった。なぜなら、旅行というとパパの車、電車、バスに乗って旅行するだけでホテルや民宿、そしてテントで泊まったことはあるけれど、車の中で夜を過ごすって心配なんじゃないかな、と思った。
楽しそうにどんどん話は続いた。わかやまに行ったときの話や兵庫に行ったときの話があった。
「わかやまのどちらにお出かけになりましたか?」
「白浜よ」と彼女は言った。
「その海で海水浴をしたことがなかったんです。砂浜が白くずいぶん海が美しかったです。そんなに海が好きとおっているとは知りませんでした。でも、ペットの入水は禁止だったのよ」と彼女は言った。「というか、看板にそう書いてあったんです」
「わかやままでの道中は大変だったでしょう 。高速道路で行ったの?あの辺りに はいろんな山道やトンネルがあるんだよね?」とぼくは言った 。
「私は高速でかめやまで降りて、それから国道二十五号線に乗ってね・・・」
彼女は大声で早口に言った。
「いいね」とぼくはあいずちを打った 。
「深夜 、国道二十五号線に走り屋がいてね」と彼女は言った。「高速道路でもないのに百キロぐらいで走っていたよ 」
「本当?」とぼくはおどろいてきいた 。「いがを通ってならに行ったの? 」とぼ くはたずねた 。
「そう」と彼女は言った。
「そしてあかし海峡大橋に行ってね 。あわじ島に行ったよ。夜景は美しかった」
彼女らはシュラフを使って泊まるらしい。でもぼくにはそれがなぜかわかった。彼女らはペットであるトイプードルの二匹のことをとても愛している。動物と一緒に泊まれるホテルって少ないから、わんちゃん達のためにドッグランのあるサービスエリアや車中泊できるような準備をしているんじゃないかな、と想像した。
今夜はハロウィンだ 。 塾の終わりごろに先生にぼくは「トリック・オア・トリート」 と言ってお菓子をもらった 。 次はパパに言ってみようかな 、 そしてパ パに車中泊の旅の話をする 。ホテル代や旅館代が浮くし、夜空の星も綺麗に見えるだろうな、外の風に体をさらすのも気持ちいいんじゃな いかな 、と思った。
これまで旅行というと、旅館でおいしい食事や温泉に入ったり立派なホテルでゲームをやったりしてくつろいだりする。車中泊は外の美しい景色を見ながら時間にとらわれず休憩して好きな時間に寝て好きな物を食べる。それって本当の自由な旅なんかじゃないかな、と思った。
旅館などではいつもパパが何時にならないとチェックインできないとか、何時までに駐車場に車を入れないととか、何時にならないとチェックアウトしなくちゃとか、すごく時間に制約される。
ほかにも、ちょうど夕日が沈もうとしている時にシャッターを切ろうかな 、と 思っていたらママが早くチェックインの時間に遅れちゃうから 、とか言う 。 せっ かく自分たちの休みを使った旅行なのにいつもいつも時間に縛られる。―車中泊っ ていうのは自分たちの心のままに予定を変更することができる。
旅行っていうのは時間と心の余裕をぼくたちに本当の意 味で満たしてくれるも のを言うんじゃないかな 、と思った 。― 色んな旅の仕方があるもんだなってひとつ勉 強になったよ 。 ― また塾の勉強も楽しいけれど友達のお母さんの話や色々な先生の話、その方がずっと人生を生きる上において重要だなと思った。
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