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半年かかった、プロポーズ

プロポーズのタイミングを図っていたものの、結局、彼女には何も言えず気づけば半年近く経過していた。気のしれた友達と飲みに行くと、必ず「安田、彼女と結婚考えているって言っていたけど、いつ結婚するの?」と聞かれ、その度に、「そろそろ」と期間の明言は避けてきた。そして気づけば、仲の良いAが「彼女にプロポーズしたよ」と先を越され、いよいよ焦ってきた僕は、プロポーズ計画を立てたのだった。

タイミングは、5月中旬にある彼女の誕生日のタイミング。誕生日を祝いつつ、同時にプロポーズをしようと考えた。毎年お互いの誕生日には、プチ旅行で、宿を取ってお祝いするので、今回は良い宿を予約しておいて、そこでプロポーズしようと考えた。そして、大切なのは指輪だ。前回のnoteを書いた時点では、指輪は不要かなと考えていたが、何かしらの「モノ」が欲しい。

形として残る「モノ」がないと、話を切り出しにくいし、折角なら記念に残るように何かプレゼントしたい。最初は指輪の箱だけ渡して、一緒に婚約指輪を買いに行きましょうと伝えようかなと思ったけど、それも味気ない気がしたので、セレクトショップで指輪を買おうと考えた。
彼女が不在の間に、彼女の部屋にある指輪を物色し、どんな指輪を持っているのか、サイズはどのくらいかを下調べ。指輪のサイズはよく分からないから、彼女の持っている指輪をこっそり持ち出して、店員さんに聞こうと考えた。買いに行くタイミングは、GW中日。彼女が友人と出かける日だ。宿は、江ノ島付近にある、海の近い、お洒落なホテルを予約。夜に、海辺に散歩に行って、そこでプロポーズしよう。よし、これで完璧。

あとは、彼女がGW不在の間に指輪を調達できればいけると考えていたのだが、GW初日に彼女がまさかのコロナ陽性に。さらに自分もコロナになってしまい、指輪を買いに行こうと計画していた日は、家で寝て過ごさないといけなくなってしまった。だが、10日後には彼女の誕生日が来てしまう。意識朦朧の中、僕は、ネットの海を指輪を求めて彷徨った。シルバー?シンプルなやつ?普段使いがいいかな?とにかく悩んだ。これまで、女性にアクセサリーをプレゼントして、成功した記憶がないのだ。高校生の頃、付き合っていた彼女にプレゼントして、ゴールドのハート型のネックレス、大学生の頃、今の彼女と付き合って最初の誕生日プレゼントで買った、花柄のイヤリング。どれも、プレゼントした後に、自分の目に入ってくることはなかった。僕は、この経験から女性にアクセサリーを渡さないポリシーを制定し、それを今まで貫いてきたのだ。
そして、今、彼女に一世一代のプロポーズをするための指輪を選んでいる。きっと、数十年後も思い出として残るプレゼントだと考えたら、なかなか決められず、1日中悩み、パールの指輪を買った。

それから、彼女の誕生日まで、とにかくそわそわした。宿はここでよかったかな?とか、指輪のサイズ間違ってないかな?とか、旅行中にプロポーズして、断れたら、旅行中気まずくならないかな?とか、それはそれは色々な考えがよぎった。だが、彼女の誕生日にプロポーズします宣言を仲の良い友達や、何なら会社の同僚の人たちにも声高に宣言してしまったので、もうこれは男になるしかない、そういう気持ちでいた。

そして、当日、江ノ島での観光を楽しんだ。宿はお洒落で、ご飯も美味しかった。ご飯を食べ終えたあと、お腹がきついから海近いし、散歩しに行こうと彼女が誘ってくれたので、ここだ!となった。彼女がお手洗いを済ませている間に、準備していた指輪をポケットに忍ばせて、散歩に出た。
雨が降ったり止んだりの天気だったのだが、幸い外は雨が降っておらず。しかも夜の海には、僕たち以外誰もいなかった。真っ暗闇の砂浜を2人で歩きながら、なにかたわいもない話をしていた。緊張して記憶がないのだが、ずっと彼女が喋っているものだから、タイミングが切り出せずにいた。彼女が、そろそろ宿に戻ろうかと言い、折り返し、歩いてきた道を辿って行った。道を戻りながら、「今だ、今だ」と何度自分に言い聞かせたことか。気づくと、真っ暗闇の砂浜から、街灯やお店の灯りがある明るい道路が見えてきていた。勇気を振り絞って、僕はポケットにある指輪の入った箱を開け、彼女に見せた。何を喋ったかは正直覚えていないけど、何か締まりのない、よく分からないことを言っていたと思う。彼女も恥ずかしそうにしながらも「よろしくお願いします」と答えてくれた。
そこで、緊張のほぐれた僕は、本当は12月のマンションの契約更新の時にプロポーズをしようと思っていた話や、その後の指輪選びの話まで、いろいろ彼女に喋った。

プロポーズをしたからと言って、何かが変わるわけではなかったし、気持ちもお互い高ぶる感じではなく、穏やかで、隠し事をしていた僕にもっと早く、話してくれればよかったのにというような、もっとカジュアルなものだった。わかっていたことではあるけれど、自分が勝手にプロポーズというものに対する理想を高くしてしまっていただけなのだなと改めて実感した。
でも、彼女は確実に嬉しそうだったし、プロポーズしてよかったなと思った。
正直、結婚とは何かということはよく分からない。でも、ずっと一緒にいるとなかなか、自分の気持ちを改まって伝えることってなかなかできない。だからこそ、こうやって気持ちを伝えるということは大切だなと思った。結婚に関することは、一世一代のイベントということもあり、金儲けする人たちの形式で溢れていて、形にだけ目を奪われてしまっていた気がする。もっとカジュアルに、大切なひとに大切なことを伝えたり、大切なことを話せたりするといいなあ。と、プロポーズをやり終えた人間だからこそ、軽い気持ちで言えるのでした。というかプロポーズはゴールじゃなくて、スタート。ここから、色々話し合って、2人で良い思い出を作っていこうと思います。

ムムム。