初めての結婚式、お呼ばれ

最近、第一次結婚ラッシュが来ているようだ。SNSを見れば、誰かしらが結婚報告をしている。悲しいことに、僕はSNSや人伝で、知人の吉報を聞くことが多い。別にね、ご祝儀だって安い訳じゃないし、微妙な知人に招待されて、断るのも気まずいからね、いいんだよ、呼ばれなくたって。でも、27歳になって、周りの友人が、結婚式お呼ばれを何回か経験している中、自分はまだ、結婚式お呼ばれ童貞であるということが、少し癪に障るのだ。人間の悲しい「性」ですね。

そんな僕にも、昨年末頃に、初めての結婚式招待状が・・・。差し出し人は、新卒で勤めていた会社の1つ先輩であったYさんと、その彼氏である、M君。僕が、まだその会社で働いているとき、Yさんには、よくお世話になっていた。そんなYさんに「友達になってあげて」と言われて知り合ったのが、同い年のM君である。社会人になって、仕事以外の繋がりでできた唯一の友人。同じ職種、同い年ということ、そして何より、M君の社交的な性格もあって、年に数回、ご飯をいくような関係になったのである。仲の良かった先輩のYさんと、M君、新郎新婦、共に知っている人の結婚式ということもあり、即答で結婚式へ参加する旨を伝えた。そして、なにより、僕の結婚式お呼ばれ童貞を卒業させてくれる、そんな機会を自らドブに捨てるはずがないのである。

初めての結婚式、ワクワクと不安が入り混じる、複雑な感情。マナーがなってなくて、周りから白い目で見られないか不安になった。着ていくものはどうしよう。大学の入学式のときに両親に買ってもらったスーツを着ると、幼い印象になるし、3年前に買った喪服は、自分がおじいちゃんになって太っても大丈夫なようなサイズで買ったので、ダボダボになっているしで、結婚式に来ていけるような、フォーマルで、クールなスーツを持ち合わせていなかった。ということで、これを機にスーツも新調することにした。初めての結婚式お呼ばれ、童貞卒業の服だ。よくある紳士服店のスーツでいくのは嫌だ。

男とは、たとえ童貞であったとしても童貞と思われたくない生き物である。by 安田舞天

そんな僕は、右も左もわからず、東京丸の内のユナイテッドアローズで、イケてる店員さんに言われるがままに、ブラックスーツとネクタイを購入。白いチーフを胸ポケットに入れると、大人な装いになると言われ、5000円の白い布まで買わされてしまった。お手洗いの後に、このチーフで、手を拭いてはいけないらしい。完全に、見た目の装いのためだけにポケットに入れる布。よくわからないけれど、大人の男になるということは、そういうことなのだ。なかなかの出費になったが、僕は満足した。これで、ドヤ顔で式に出席できる！

そして昨日、結婚式当日。下手くそな字で自分の名前が書かれた、ご祝儀を100円均一で買った、袱紗に包んで、ソワソワしながら式場に入った。式場は、北欧モチーフのようで、ムーミンの世界に潜り込んでしまったかのようで、驚いた。そして、そんな世界で久しぶりに再会した1つ年上の仲が良かった先輩Oさん(ちょっと酒臭い)。あろうことか、彼は二日酔いだった。挙げ句の果てには「二日酔いの日に、晴れだと、嫌だよな。あの太陽が鬱陶しい」と言い出した。いや、あなたの同期の結婚式！言うなら「晴れて良かった」でしょうが！「あの太陽は、言うなら炎上する前のベ○キーと同じだよね、体調悪いときに見ると、明るさが逆に鬱陶しくなる」と、立て続けに、ぼやいている。しかも、そんな彼をよーく見ると、スーツのジャケットが黒なのに、パンツはネイビー。東京靴流通セ○ターで買ったような革？靴と、中学生がしま○らで買ったようなベルト。かたや、僕は、東京のセレクトショップでスーツと、ポケットに5000円する、使用用途のない白いチーフだぞ！見た目を気にする、しないで、こうも違うのか。Oさん、社会で生きにくいだろうけど、人生楽しんでそう。羨ましいと思ってしまった。

式が始まると、幸せそうな新郎新婦と、涙ぐんでいる新郎新婦の両親の姿に、周りが感動の渦に包まれた。すごい幸せな空気。結婚式に呼んでくれて、ありがとうございます。初めての結婚式が、この2人で良かったと、心から思える素敵な式でした。最後の両親への挨拶では、式場にいる人たち全員の、人の良さが溢れ出ていて、思わず涙が。
ふと横を見ると、さっきまで隣で、BGMにのって熱唱していた、O先輩が、顔をくしゃくしゃにして、号泣していた。こんな、淀んだ人間すらも、浄化させるほどの力を持つのか、結婚式というものは。

帰り際、O先輩は、ドレス姿の新婦に、「えっちだね」と、ささやいていた。自分が新郎だったら、どついている案件である。
とか言っている僕も、今、note上で、結婚式お呼ばれ童貞とか言っているのだから、同じ穴のむじな。淀んだ空気を結婚式で浄化しても、すぐにまた淀んだ空気が、人を覆ってしまうものなのだと学びました。大人にさせてくれて、ありがとう。Y先輩、M君。末長く、お幸せに。