おばあちゃんと木いちごと
ジュンク堂が好き。
買おうと思ってなかった本も、買いたくなる。
本当はソトコトの新刊をを買おうと思って雑誌コーナーに立った。
平置きされている『うかたま』が目に止まって、パラパラとめくる。
「野山で摘むベリーのおやつ」を立ち読みし、レジにまっすぐ向かった。ソトコトは買い忘れた。
併設のカフェでじっくり読んでいると、昔の記憶がどんどん蘇ってきた。忘れたくない記憶をここに残しておく。
遠い昔、約20年ほど前の話。
誕生日プレゼントに木いちごの絵本をもらった。タイトルをまだ覚えていた「イチゴは友達」という絵本。こんなタイトルだったかなあ…と検索したら、合っていてびっくりした。
この本はたしか10歳くらいの誕生日プレゼントにもらったものだ。中には、たくさんの木いちごの種類とかわいいイラストのレシピが載っていた気がする。実家に帰ったらもう一度読もう。
幼少期の私は、木いちごが好きだった。きっかけはもう忘れてしまったけど。木苺の思い出は、おばあちゃんとセット。
15歳まで両親と祖父祖母と同じ家で過ごした。周りは田んぼに囲まれ、右隣は一軒家、左隣は中くらいの川が流れているようなポツンとしたところにある家。
川に沿うようにずっと続く砂利道には、草や野花が生い茂り、そこをおばあちゃんと2人で散歩した。朝や夕方の少しひんやりした中を。時には、お隣の家の男の子とその子のおばあちゃんと。
夏の終わり頃、あぜ道の草の間に小さな薄ピンクの花が咲く。
そしてもう少し秋が近づくと、紅くてキラキラした木いちごが実る。その木いちごは一粒一粒がぷっくり膨らんでいて、深い紅色のビーズが集まったみたいだった。
おばあちゃんは野いちごって言ってたな。
熟すと、手をそっと添えて傾けるだけでぽろっと実がとれる。
味は、若い実だと酸味があって、熟した実は少し水っぽくてうすら甘い。
おばあちゃんは酸っぱいのが苦手だから、摘んだのはひとりで食べていた気がする。
「そんながん、んもねえすけ」って言いそうだなあ。
(そんなの旨くないって新潟弁ね)
私も今食べたら実はそんな美味しくないのかな。
夏の終わりの草の青くさいにおいと、おばあちゃんと、紅い木いちごの味が、ふっと蘇ってきたジュンク堂帰りの電車の中でした。
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