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【書評】DIE WITH ZERO

こんばんは。趣味の読書をアウトプットすべく書評noteを始めた。

この記事が自分の書評note2作目になる。


結論から:この本の主張とは

結論から端的に述べると、この本の著者、ビルパーキンス氏の言いたいこととは次のようなことだ。

「無駄に金を貯めこみすぎな人間が多すぎる。今しかできないことに金を使え。死ぬときには貯蓄をゼロにして死ね。」

至極シンプルだ。

ひたすら貯めて、それでどうなる?

アメリカ。我々日本人からしたら貯蓄が少なく消費や投資に回す人が多い。

ひたすらカネを貯めまくる日本人からしたらそんなイメージがアメリカ人にはあるのではないか。

ところが、著者によるとアメリカ人ですら貯蓄が多く、しかもその多くの貯蓄は使いきれずに死んでしまう人が大半というのだ。


だけど、それってすごくもったいなくないか?

今まで額に汗水たらして暑い日も寒い日も苦労して貯めてきた金を使いきれずに死ぬ人が大半だなんて・・・

70代になってもまだ「未来のために」金を貯めようとするのが人間だそうだ。

金の価値は加齢とともに低下する

また、金というのは人生において常に等価値ではない。

年齢度と幸福度のグラフ

年を取って加齢すると、健康は悪化し、物事への興味は薄れ、性欲も低下する。創造性、クリエイティビティも減退する。

もっと言うと加齢により人生の幸福度自体が下がるのだ。

老人になってから異性にモテたい!海外に住んで新しい経験をしたい!となっても遅いというのは感覚的にも理解できる。

そうなってからだと金は役に立たない。

したいことと言えば、老人ホームのベッドで寝転がってクイズ番組を見ることと昔を思い出して楽しみにふけることくらいだろう。

金から価値を引き出す能力は年とともに低下していくのだ。

一つ、例を出す。
この著者、パーキンス氏が20代前半の頃だ。
同僚が借金をしてヨーロッパにバックパッカーで貧乏旅行をした。
著者はそんなことは無謀だと彼は引き留めたが彼は気にせず欧州へと向かった。
そして彼は帰ってきた。
現地で知り合った異性とワンナイトの関係を結ぶ。現地で得たビビッドな生の知識を得る悦び。
それらを語りながら彼は言う。そういった甘美な体験は金に換えがたいと。

これを死ぬほど羨ましく感じた著者は30代になって同じ体験を得ようとヨーロッパに向かった。

だが、ここで気づくのだ。

遅すぎたと。

ボロボロのユースホテルに泊まって若者と和気あいあいできる年齢ではもはや自分はない。

この体験をするには自分は年を取りすぎたと。

かけがえのない体験にはそれに見合った年齢があるのだと。

幸福を考えるときに、過小評価されすぎている「健康」

健康は金より重い。著者はそう述べる。

「旅行を躊躇する理由」を様々な各年齢の人に聞いたデータがある。

60歳未満は旅行を躊躇する理由として「時間がない」を最も多く挙げた。

一方、75歳以上は旅行を躊躇する理由として「健康上の問題」を最も多く挙げた。

そう、高齢者になると「悪化した健康」が行動の制約になってしまう。

想像してほしい。
あなたが85歳になって介護が必要な状態でようやく港区のタワマンとプライベートジェットを獲得したとする。

楽しみようがない。それらの資産を使ってできることがない。

年齢による健康の悪化だけでなく、肥満などにも当てはまる。

肥満でいることによって、膝が悪く、運動を楽しめなかったり、腰痛やメンタルの悪化などを耐え忍ばなければいけない。

また肥満でいることは男女問わず恋愛のロマンチックなチャンスを逃すことにもつながる。

経験に投資せよ 経験こそが一番最高の投資

そして、概ね健康状態の良い若いころに経験に投資することこそが最高の投資だと著者は述べる。

人生で最後に残るのは経験、すなわち思い出である。

経験には配当もある。

その経験だけでなく、その経験によりのちの人生でプラスとなる行為につながったり、思い出という幸福度を上げる配当につながる。

記憶の配当はバカにできない。幸福は金銭だけでは測れないからだ。

自分の死と寿命、人生の残り時間を意識する

著者は自分の幸福度を最大化するために、自分の人生の残り時間を意識せよという。

自分の残りリミットを意識する、逃げずに自分の死と向き合うことで自分の人生の最適化ができるというのだ。

ずっと老いないと思っている私たち

小学校1年生の頃、6年生の12歳の人たちがずっと大人に見えた。

中学校1年生の頃には高校3年生の人たちが大人と何ら変わらない、人によってはおっさんやおばさんにすら見えた。

自分のことをずっと若いと思っている人間、自分のことを老いないと思って生きている人間はとても多い。自分も、もちろんそうだ。


今夜は車内でおやすみなさい。/小田原ドラゴン


我々は死ぬことや人生の残り時間について意識しないし、それを考えることから逃げている。もちろん自分もそうだ。避けられない本質から目をそらしているとも言える。

ある意味、老いやライフスタイルの変化など先のことを目をそらさずに熟考できるというのは知性の表れなのかもしれない。

人類の知能オリンピックで最上位にランクインするであろう著名な哲学者たちは皆死と真剣に向き合ってきた。

そして、死を意識しろという著者の主張も明らかにドイツの哲学者、マルティン・ハイデガーの思想に影響を受けている。

ハイデガーは、私たちの人生には目的はなく、生まれた瞬間から一歩ずつ、死に向かって進んでいるにすぎないと考えていた。

こういった老化や死と向き合わずに日々に忙殺されて「自動操縦」的な人生を送っているといつかツケが回ってくる。

【感想①】自分が何をすれば幸せになれるかをきちんと知りぬくこと

ここからは自らの感想・考察を述べていきたい。

著者は若いころ、健康状態の良いころに経験を積むことが最高の投資だと述べ、その例として海外旅行を述べる。

海外旅行ではなくともその人にとって最高だと思う経験に金を使えと。

個人的に多くの人にとって最高の経験とは恋愛だと思う。

恋愛離れが進んでいると言われる昨今でも、推し活などのアイドル産業は大人気だ。

女性の風俗は冬の時代ともいわれているが、それに反してホストは未だ好景気だ。

これは人間の中にある恋愛による自己と他者を重ね合わせたい欲求や承認欲求が非常に強いことを意味していると感じる。

たとえ恋愛ではなくても、その人生のフェーズごとに合った「自分が幸せと感じる経験」とは何かを深く突き詰める必要性。これを強く感じた。

【感想②】盲目的なFIREブームへの疑問

昨今ネットを見るとTwitterでもyoutubeでもFIRE(早いうちに金を稼いで早期に引退すること)が異常なくらいもてはやされていると感じる。

特に未婚男性でFIREをしたいという人が多いように思う。

だけれども、FIREをして40代後半に引退するとする。

その後、彼らは何をするのだろうか?

日本人男性、特に日本人男性は会社勤めを辞めると所属するコミュニティがなくなり幸福度が下がり、自殺率が激増するという統計がある。

そんな中で何を楽しむのだろう。

「人との繋がり」をあまりに過小評価していないだろうか。

こういった「コスパ」思考の人たちは口を開けば「結婚はコスパが悪い」
「女体なら風俗で良い」というが、

だけれども、風俗で承認欲求や孤独の本質的な代替はできない。

人間のナマの感情をもっと考慮したほうがいいのではないかと感じる。

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