【いまを生きる手習い塾レポート】〜(第1回)デンマークから考える、食・未来・環境〜
ひょんなきっかけでアシスタントをさせていただくことになった「いまを生きる手習い塾」のレポートです。北海道東川町でデンマークのフォルケホイスコーレを作る実験中の私が、デンマークオタクの眼差しと愛を込めてお送りします。
本日は10/13(火)に開催された、
第一回目「デンマークの食文化&環境」のレポートです。
01.世界の食の現状
「デンマークの食文化&環境」のレクチャー。まずは、ニールセン北村朋子さんによる、世界の食の現状の解説から。
ホットな話題からいくと、今年のノーベル平和賞は「食」でした。世界80カ国の武力紛争地域などに420万トンの食糧支援を通じて平和な世界を築くことに貢献したことで、国連世界食糧計画(WFP)が受賞しました。
一方では世界での食糧廃棄量は年間13億トンで、生産している3分の1を廃棄している計算。
さらには、日本の食品ロス(食べられるのに捨てられる)の量は年間612万トンだそうで、平和賞を実現した食糧支援の1.5倍、日本が廃棄しているという驚愕の事実です。
02.デンマークの食の変遷①〜デンマークらしい食文化の問い直し〜
デンマークの食と言えば、この写真はフォルケホイスコーレに滞在した時の寮の朝ご飯の様子なのですが、おしゃれで健康的でめちゃくちゃおいしくって。
でも、新しさと伝統が大切にされたデンマーク料理が食卓に出てくるようになったのはここ最近のことだそうです。
朋子さんが住み始めた2001年当時のデンマーク料理は「とりあえずグレービー」「全体的に茶色い」という感じの料理。1980年代からデンマークでは男女ともに共働きに出る家庭が増え始めた時代が始まり、缶詰や半調理品をガンガン使うように。そしてたまのご褒美外食はデンマーク料理、ではなくフランス料理。
「あれ?デンマークらしさってどこに行ったんだっけ?」
「"北欧の食"らしさをもういちど本質から問い直して新しく作り直そう」
シェフ・農業や漁業などの生産者はもちろん、卸売り、政治家、教師、消費者を巻き込んで「我々が大事にしたい北欧料理とは?」という問いを元に、
ニュー・ノルディック・キュイジーヌ10のマニフェストが作られました。
このマニフェストが面白いなあと思ったのは、「こうしなさい」「これがないと北欧料理とは認めません」という項目が一切なく、項目の中に余白と創造性があること。シェフや生産者をアーティストとして、そして一人の人間として信頼している感じが読み取れます。
03.デンマークの食の変遷②〜環境と食の関係性〜
デンマークでは、コロナ禍の6月に2030年までに温室効果ガス排出量を70%削減するという目標を掲げた「デンマーク気候法」が可決されました。
2012年からエネルギー政策に力を入れていて「2020年までに全電力消費量の50%を風力で」という目標は、2019年の時点で達成しているそうです。
それでも、2030年までの目標を達成するためにはエネルギー政策だけでは足りないということから、次は「食」からのアプローチにトライしています。
そのひとつが、気候エネルギー省と環境食糧省による「食いしん坊のための気候変動適応ヒント22」。
アイコンかわいい。そしてトーンがポップ(大事)。
この内容が、国として「地球の持続可能性のためにこういう風に食べよう」というスタンスを、メディアでも一斉に報道されているらしく、デンマーク人で知らない人はいないのでは?という話を聞いて、報道のあるべき形を感じました。
04.デンマーク国民はどう捉えているのか?
現在のベジタリアン及びフレキシタリアン(後述)の数は14%、これから肉食を減らしたい人は72%だそうです。これ、日本でアンケートを取ったらどれくらいになるんでしょうね。
実際にデンマークのフォルケホイスコーレに通っていた人によると20-30%がベジタリアンの食事を選択するし、デンマークの高校生が環境のためにヴィーガンになったという話をよく聞きます。
がっつりヴィーガンではなくてもフレキシタリアン(Flexible×Vegetarian)という時々は肉や魚を食べるゆるい菜食主義を選ぶ人たちも多いらしくて、週に1度、ミートフリーデーというところから始めるのはいいなあ、と思いました。
05.食いしん坊も、地球も、生産者も、幸せになる最上の妥協点を
後半は、デンマークのロラン島でシェフと農家を営んでいるAsgerさんも交えて。チャット欄に一番多く集まった質問はこんな内容でした。
「デンマークは元々養豚業が盛んな国。このような推進をして、畜産業に関わる業界の人たちの反発はないのか?」
「確かに、一気に今すぐ変えてください、変わってください、と一方的に言うのは生産者に対してリスペクトがないと感じます。」
「それでも、デンマークのエネルギー分野では石炭中心だったところから、自然エネルギーへ10年かけて変わることができた。だから、食も10年かけてきっと変わることができる。国はもちろん、そういう転換を積極的にする農家は資金面や制度面でも支援していくことを表明している。」
「養豚業が盛んだったということは、家畜産業の生産過程の悲惨さを知っているからこそアニマルウェルフェアに関心が高くなれるし、豚インフルエンザの流行を経て、自然環境に無理なことをしているというサインを一番身近で感じている人たちがたくさんいるということ。だから、変化をすることができる。」
既得権益が変化の足枷になるのではなく、
逆にチャンスになるということだろうか。
信頼し合う、という強烈なリーダーシップを感じました。
06.「人はこれからどう食べればいいんだろう」
最後、ニールセンさんから問いの投げかけがありました。
食と未来と環境の関係性は、ぶっちゃけ、わかってるようで、全然無知なことがわかった機会でした。調べても、まだまだよくわからない分野も多くて、どう日常の行動に落としたらいいかわからない。だから、私の今日の晩ご飯は豚汁です。
すぐ何かを選択できるわけじゃなくって、調べてみたり、信じてみたり、「あーそれでも食べたいなあ」と葛藤したり、そこから自分の選択になっていくんだろうなあ。その過程を経てきたであろう72%のデンマークの若者を心から尊敬します。
You can change tomorrow, TODAY.
今朝、東川町の北の住まい設計社でFarmer’s garden marketがあったので、行ってきました。
北海道の大地で暮らしながら、こだわりのモノづくりをしている人たちとその思いを共有できる仲間たちとの出会いの場であるこの催しで、掲げられているキーコンセプトが、沁みてきました。
今日から、未来は変えられる。
私たちの手の中にある"選び取れる力"が一番パワフルかも。
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