音楽と〇〇の話:第3回「BBF & ZUM ZUM ALLSTARS/YES, HIM A CHAMPION」

はじめまして、の方も
毎度おなじみ、の方も
おひさしぶり、の方も
おはようございます。
こんにちは。
こんばんは。
スパイクでございます。

今回は、特に
「おひさしぶり、の方も」
ですね。

前回の投稿よりなかなかの間が空きまして。

喋りたがりの筆不精。
天使のような悪魔の笑顔。
ギンギラギンにさりげなく。

今回も引き続き
「音楽とボクシング」にまつわる話を書いていきたいと思いますよ。

今回は第3回目。
御紹介する楽曲は
「BBF & ZUM ZUM ALLSTARS/YES, HIM A CHAMPION」
です。

知る人ぞ知る!?激レア楽曲


はじめに言っておきます。
おそらくこの楽曲、
今回の企画「音楽とボクシング」にまつわる話の中で
ぶっちゃけいちばん皆さんが御存知無い、であろう楽曲です。
まずリリース年が1993年。
今から数えて27年前。
月日の経つのも夢のうち。(※1)
リップ・ヴァン・ウィンクルも真っ青。(※2)
浦島太郎も裸足で海から逃げ出す歳月と言っても過言ではありません。
そんな年代物の楽曲であるため、現在は廃盤。
じゃあ、なんでまたそんな曲を題材に話が進んでいくのか?
理由は至ってシンプルです。


「好きなボクサーの入場曲で聴いたその曲がカッコ良かった」


この1点に尽きます。
そしてこのレア曲を入場に使っていたボクサーが、
元日本ウェルター級チャンピオン
元日本Jr.ミドル級チャンピオン
元東洋太平洋ウェルター級チャンピオン
吉野弘幸選手です。

左フックの名手・吉野弘幸


前回紹介した坂本博之選手同様強打が持ち味で、KO勝ちを量産。
1985年プロデビュー後日本チャンピオンを2階級制覇。
世界挑戦経験もあり、はたまたK-1のリングに上がったり、そのプロキャリアを2004年まで続けたという(※3)
かなり異色のボクシング経歴を持つボクサーでした。

ラーメン出前が生んだ破壊力抜群の剛腕

特筆すべきはその「倒し方」です。
プロキャリアも異色なら、その倒し方も異色。そしてその倒し方のルーツも、また異色です。
吉野選手はプロボクサーとしての活動当初、並行してラーメン店でアルバイトの日々。
ラーメン店でのアルバイトなので、出前にも頻繁に向かいます。
「ラーメン屋の出前」というと真っ先にイメージするのが「岡持(おかもち)」。(※4)
吉野選手は出前の時、自転車のハンドルを右手に、岡持を左手に持って毎日ラーメンの配達に励んでいました。(※5)
なんと、この「左手に岡持」を続けた効果で左のパンチが唯一無二の武器になったというのです。
一部ボクシングファンには知られた話なのですが、こうして冷静に振り返るとなかなかのぶっ飛んだエピソードです。
通常、岡持の重量は空でも3kg前後。(らしいです)
それに配達するラーメンやチャーハンが加わると…想像しただけでも上腕二頭筋が悲鳴を上げそうです。
そんな出前パワー(?)で鍛え上げた左パンチは見応えも破壊力も抜群。
チャンスと見るや、とにかく左、左、左。
左右のパンチ、ではありません。
左、左、左。です。
右パンチほとんど使いません。
とにかく、左、左、左。です。
様々な角度から左拳をぶん回し、

1発当たればぐらつき必至、

2発当たればKO必至の速射砲。

日本ウェルター級チャンピオン防衛回数記録14回(そのうちKO勝ちは9!)はいまだに破られておらず、
「日本の中量級に吉野あり」という伝説の日本チャンピオンでもあるのです。

(という背景も踏まえつつもう一度KOダイジェストをどうぞ)

そんな吉野選手の入場曲が
「BBF & ZUM ZUM ALLSTARS/YES, HIM A CHAMPION」です。
そしてここまで書いておいて、お恥ずかしい話ですが…
この曲、今回の企画で投稿しようと思うまで誰のどんな曲か詳しい事はほぼ分からない状況でした。
端的に言うと、「あの曲カッコ良かったけど誰の何て曲だったんだろ」です。不届千万。
けれど、吉野選手のイメージと相まって、今日に至るまでとても印象に残る曲であった事もまた事実。
良い機会なので楽曲にまつわるあれやこれやを調べてみる事にしました。

するとまあ、出てくるわ出てくるわ。驚愕の事実の数々が。

知る人ぞ知るレア曲…に隠された豪華メンバー

驚きその1。このアーティスト名

「BBF & ZUM ZUM ALLSTARS」。さらにはその中の「BBF」の部分。
これ、「爆風スランプ」のスピンオフ・ユニットでした。(※6)
ベースのバーベQ和佐田・ドラムスのファンキー末吉によるユニットで、
ゲストボーカルを「ZUM ZUM ALLSTARS」と称して楽曲作成を行っていたとの事。
一時代を風靡したバンドのリズムセクションを担っていた方々だけあって、
その楽曲は極めて濃厚でダンサブル。
90年代初頭の洋楽HIPHOPの影響が色濃く出ていながら、仰々しく乗っかる上ネタに
「派手に盛り上げる入場曲感」が感じられてきます。


驚きその2。脇を固める豪華ゲスト陣。
そしてゲストボーカル。
曲中でラップをしているのがなんとMonday満ちるPJ(※7)

更に更に曲中でスクラッチしてるのがDJ KRUSH!!!

今でこそ邦楽のジャンルに於いてポピュラーな
「R&B」、「レゲエ」、そして「HIPHOP」。
この御三方はそれぞれのジャンルの黎明期よりその名を馳せた、言わばパイオニアともいえる人物。(※8)
念の為確認しますが、この曲のリリースは1993年です。
この年がビーイング系アーティストの隆盛華やかりし時代ダントツのピークであった事を考えると
この楽曲がいかに異彩を放っていたかが分かります。
(↓参考として当時のヒットチャートTOP100です。)


この曲を入場曲に使っていた吉野選手も異色の存在ならば、
他でもないこの曲自体もまた異色であった、という事でしょうか。

しかし、「異色」は「唯一無二」「オリジナル」の別名でもある、と自分は思っています。奇をてらう訳でもなく、飄々としていながら、それでも滲み出てしまう個性。

表向きでは個性を伸ばそう突出した才能を育てようオリジナルであろうと喧伝しながら、
その実求められているのは
凡庸性や無毒感や事無かれ主義や可も無く不可も無しプラマイゼロがちょうどいいという(※9)
美徳のようなものが残留沈下物としてこびりついているのが浮世の常だったりするのですが
(かくいう自分自身もその「浮世の常」ど真ん中にいる同じ穴の貉なんですけどね)

そんな中だからこそ、かくも異色な「個性」は
とんでもない輝きを放ってしまうんだなあ、と。
いまだに魅了されてしまうのです。


そんな吉野選手。他にも個性的な面が。

「前歯折られちゃったんですよ。後で治療代請求しなきゃ」

(日本タイトル戦、当時最強と言われた対戦相手に見事KO勝利。しかしリング上の勝利者インタビューで相手に前歯を折られてしまった事を報告。会場爆笑)

「コッジの印象は…う~ん。胸毛が濃い。試合中気になっちゃう」

(自身初の世界タイトル挑戦を控え、対戦相手の世界チャンピオン、アルゼンチンの英雄ファン・マルチン・コッジ選手の印象を聞かれて。斜め上の回答)

「何発かは(相手のパンチを)もらうと思ったんですけど、あと根性で倒し返しゃいいやぁ、って。プロですから」

(自身のキャリアも大ベテランの域に達した時の日本タイトル戦、相手は高校・大学時代日本一に輝いた経験もある最強の挑戦者だったが倒し倒されの大激戦を制し勝利した試合後インタビュー。パンチは重いが、言葉は軽い…ようでやっぱり重い)

やっぱり面白いなぁ。

(※)解説

(※1)月日の経つのも夢のうち→「ビューティフル・ドリーマー」ですね。

(※2)リップ・ヴァン・ウィンクル→「野獣死すべし」ですね。

(※3)プロキャリアを1985年~2004年まで続けた→プロボクサーの平均選手寿命はおおむね7~8年と言われているそうですが、吉野選手は驚きの19年。途中鼻骨骨折や拳を骨折するなど怪我も少なくなかった中でのこの選手寿命の長さは驚異的。

(※4)岡持→やはり最近は岡持を知らない若い方もいらっしゃるかもしれない、という気持ちから一応説明します。要はラーメン配達用の取っ手の付いたアルミのデカイ箱で、フタは箱側面がシャッターのように開閉出来る形状になっています。

(※5)ハンドル右手、岡持は左手→今はお巡りさんに怒られちゃうんですかね。ウー○”ーイーツの方がよっぽどおっかないんですけどね。余談ですね。

(※6)爆風スランプ→スキンヘッドにサングラスのボーカルが「走るー走るー、俺ーたーちー」と歌う事でおなじみのロックバンド。現在は解散していますが運動会の徒競争やリレーなどで耳にする事が出来ます。

(※7)Monday満ちる、PJ、DJ KRUSH→Monday満ちるがラップしてるのが凄い。しかも本名の秋吉満ちる名義の曲。PJもジャパレゲ界の大ベテラン。(デビューは13歳!)でジャマイカのレゲエフェスにも参加経験多数の経歴を持つ。DJ KRUSHに至ってはもう書ききれません。メンツが凄すぎ。

(※8)パイオニア→「レジェンド」はあんまり使いたくない派。です

(※9)どっちなんでしょうねえ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?