見出し画像

ゴールデンカムイ 実写版映画の馬シーンまとめ

先日、映画『ゴールデンカムイ』を観てきました。X(旧・Twitter )での前評判(高評価)をたくさん読んでから観に行ったので、正直ハードルが上がった状態での鑑賞だったと思いますが、それをしっかり飛び越えてきてくれる映画でした。とても面白かった!

二階堂兄弟が私のイメージに1mmの狂いもなかったことなど、いろいろ感想を述べたいところではありますが、この記事のテーマは「馬」なので、さっそく馬シーンについて少し書きたいと思います。

※ネタバレ含みますので、ご注意ください。
※一回しか見てないので記憶違いがたくさんあるかもしれません!


馬は実写かCG・VFXか?

ヒグマやオオカミのレタラはすべてCG・VFX(そりゃそうか)、馬については実写とCG・VFXのシーンが混在していました。馬や人にとって危険があるシーンについてはCG・VFXだけれども、そうでないシーンは『ほぼ実写』だったのではないかと思います。

私の予想では、囚人を運ぶ馬、街中で荷を曳く馬、軍人たちの乗る馬、土方歳三が乗る馬などは基本的に実写。最後の馬橇のシーンで橇を曳く馬は実写の部分もあるが、途中CG・VFXの部分もあった気がします。また銀行から刀を奪った土方歳三が馬に乗って、(馬が)後ろ足で立ち上がるシーン。このシーンは馬の毛並みが本物っぽく見えましたが、舘ひろしさんが乗馬の得意な方とはいえ、人馬の危険を考えるとどうだろう…。立ち上がっているところはかなり「寄り」の映像で、静止画にパンしてたような気がしないでもない。(土方歳三がカッコ良すぎて時が止まって見えただけかもしれないが)

あとCG・VFX確実なのは、最後アシリパさんの矢で鶴見中尉が乗った馬が射られてしまうシーンですね。

他の映画に登場する昨今の動物のCG・VFXの中でも、本作のものはよくできていると思うのですが、CG等ではまだまだ毛の質感や動きなどが本物そっくり再現できない(もしかしたら短時間のもならできるのかもしれないが)ので、やはり危険なシーン以外は実写の方が個人的にはいいなと思いました。馬の活躍の場にもなるし。

馬選びも原作リスペクト

原作では、馬の登場シーンも非常に凝っているゴールデンカムイ。実写映画でも荷馬車を曳くのに適した体形の馬(在来馬系、ばん馬系など)、当時の軍馬に適した体形の馬(中間種など)といったように、原作同様、馬の使い分けがされていました。

公式パンフレットを読むと、原作を大事に(意訳)といった旨の言葉がたくさん出てくるのですが、馬選びについても原作リスペクトが感じられます。

もしかしたら軍馬の中にはサラブレッドが混じってたかもしれませんが、全体を通した印象として、馬好きが見てもあまり違和感がないような馬キャスティング、馬描写になっていたと思いました。

初期の頃しか見れていないのですが、残念ながらアニメ版では、どの馬も同じような感じで描かれていたこと、そもそも本作は馬がメインの作品ではないので、実写版でもオールサラブレッドという展開もありえると思っていました。すみません(笑)。ですが実際は、馬好きとしても原作信者としても受け入れやすい馬シーンが多かったです。

ちなみに、馬装や橇についてはストーリー展開が早くて(作品としてはすごくいいテンポだったと思う)ちゃんとチェックできませんでした。ただ、原作で大勒銜を使っていたシーンは手綱が1本だったので大勒銜ではなさそう。

馬橇もスピード感がありすぎて、原作で描かれている時代背景を考慮した『札幌型(柴巻馬橇)※』だったかどうかまでは確認できず...。※この時代に札幌と小樽の間を行ったり来たりした馬橇のこと

またクライマックスで鶴見中尉が馬に乗って杉元を乗せた馬橇を追いかけるシーンがあります。原作だと、鶴見中尉の乗る馬は草鞋(わらじ)を履いていましたが、映画では草鞋じゃなかったように記憶しています。

漫画では、鶴見中尉が「馬が必要だ」と、小樽の街で馬を借りて追いかける展開になっていて、つまり軍馬ではない馬なので草鞋を履いてるんですよね。でもこのシーンが映画ではカットされていたため、鶴見中尉の馬は軍の馬の設定になっていて、草鞋ではなく蹄鉄なのかもしれません。

原作て使われていた橇の模型(筆者撮影)

原作からカットされた馬シーン

その他、原作にはあったけれど実写映画にはなかった馬シーンとしては、第七師団に捕まった杉元を馬力を使って白石とアシリパさんが助けようとするシーン。それから、ラストで馬橇を曳いていた馬を殺めて桜鍋にするシーンが挙げられます。桜鍋を食べるシーン自体は登場したのですが、馬橇の馬がこの桜鍋になっていることは劇中では語られませんでした。

最初はPG12(12歳以下には保護者等の助言・指導が必要)の作品ということもあって、あくまでも作中でではありますが、馬を酷使したり、馬が可哀そうなことになるシーンはカットしたのかな?と思ったりもしました。

でもよくよく考えたら、人間の顔の皮がヒグマに引っぺがされるシーンや、鶴見中尉が上官の指を嚙みちぎったりするシーンは普通にありました。馬に関しても、最後に馬橇を追いかけていた鶴見中尉が乗っていた馬がアシリパさんの毒矢にあたって死んでしまうシーンも入っていたので、単純に超大作の漫画を映画の限られた時間に収めるためのカットだったのかもしれません。

馬シーンを支える、縁の下の力持ち

本作品のホースコーディネーターは辻井啓伺さん。最近では『新解釈・三国志』や杉元佐一を演じた山崎賢人さんが主演の『キングダム2』でもホースコーディネートを担当されていた方です。

辻井さんは撮影馬を扱うプロ集団『HORSE TEAM Gocoo』の代表も努めており、またGocooにはスタントマンだけでなく馬たちも所属しています。所属馬たちも映画ゴールデンカムイに出演しているそうです。

その他、エンドロールにはホースコーディネーター補佐、ホーストレーナー、馬橇調教、ホーススタントマン(多数!)…といった多くのプロフェッショナルのお名前が。

馬って、乗れるようにするだけだとしても大変な労力や時間がかかるわけで。映画に出られるようにするなんてどれだけ大変なことだろう。

もちろん馬たちが頑張ってるのが大前提ではあるのですが、こういった皆さんの日々の努力が、日本の映画やドラマの馬シーンを支えているのよね...と思いながらエンディングを見ていました。

馬が登場する映画は世の中にたくさんありますが、『馬が主人公!』くらいの作品でないと、なかなかその技術や撮影方法について紹介される機会がないのがちょっと残念…。もっとスポットライトが当たる機会を作れるといいなと思います。(私も頑張って記事を書かねば…!)

------

▼以前、前述の辻井啓伺さんとホーススタントマン大橋広明さん(本作にも出演)を取材させていただいたときの記事はこちら


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?