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ワンカップ焼酎を片手に通勤列車の中でいつもニコニコしていた弱そうな痩せこけたオジサンの正体!

今回は人は見かけによらないということを、つくづく思い知らされたエピソードを書いてみたいと思います。

だから何?って話になると思うけど、人生観が変わった出来事だったので時間があるようなら、ぜひ最後までお付き合いいただければうれしいです。


私の高校通学は、列車で20分から30分程度の時間をかけて、3駅先の町まで通学していたんですね。

当時の列車は電車じゃなくて、蒸気機関車やディーゼル気動車になっていて、蒸気機関車の運行ダイヤのときは、トンネルが近づくと申し合わせたように、一斉に窓を閉めるのが常識でした。(^_^;)

もちろん煤煙がトンネルに入った途端に窓から流入してくるから、その煤煙防止のために窓を閉めるわけですよ。

今の若い人はご存じないと思うけど、蒸気機関車の奔る姿と言えば、白い煙をもくもく吐き出しながら力強く奔る姿をイメージすると思うけど、蒸気機関車が吐き出す煙は、水蒸気じゃなく石炭を燃やした煤煙なんですよね。

その石炭を燃やして出る煤煙が目に入ると、ゴリゴリしてとても痛いのですね。

それに煤煙の匂いというのが、頭が痛くなるような独特の匂いなんですよ。
だからトンネル前になると一斉に乗客が窓を閉めるんです、乗客が座っていない席の窓も手分けしてササッと占めて回るんですよ。

それでなくても、列車の中は煤煙の匂いが染みついていましたから、列車通学するだけで制服には煤煙の匂いが染み付くんですね。

まぁそんな列車で通学していたわけですが、部活終わりの時間帯に乗って帰るときには、その煤煙の匂いの中に焼酎の匂いまで混ざって鼻をつまみたくなる車内の匂いでした。

仕事帰りのオジサンたちがボックス席の窓際に、スルメやカマボコなんかのつまみを並べて、ワンカップ焼酎片手にオダをあげているわけですよ、赤い顔でご機嫌な様子で・・・。

始発駅からそうやって飲んできたオジサンたちは、途中駅になる私たちが乗り込む駅になると、結構できあがっているわけです。

乗り込んで空席を探すために、ボックス席でオダをあげているオジサンたちを睨み付けながら、通路を行ったり来たりしたあとに適当な場所を見つけてむりやり空席を作ったりして、座り込むわけです。

そんな列車内でいつも顔を合わせる貧相なニコニコオジサンがいたんですが、私ら1年生も上級生が睨み付けながら通過する後から、金魚のフンのようにくっついて、その貧相なオジサンにもガンを飛ばしていたわけですね。

大体の大人たちが高校生の集団が通るときには顔も合わさずに、自分たちの話に夢中なわけなんですが、ニコニコオジサンのボックス席にいる連中は高校生と顔を合わせても、ニコニコしているだけなんですよ。

ある日に、そのニコニコオジサンの同席者が組んでいた足先の靴が、上級生が通るときにぶつかったんですよ。

チッ!

そう舌打ちして立ち止まると、ニコニコオジサングループに向かってアゴを突き出しながら凄んだんですよ、その3年生が。

すると、すかさず「ああぁ~~ごめんごめん!」そう言って足を組んでいたオジサンが片手をあげて謝りました。

ほかのニコニコオジサンたちも、ワンカップ焼酎を片手にしたままでニコニコ顔で軽く頭を下げたんですね、ごめんという態度で・・・。

その相手の下からの態度に増長した上級生は、「うんだらほにゃ%&$#!」と意味不明な罵り声を残して、もうひと睨みしてその場を後にしたんですが、私たち1年生もすぐに後を追いました。

そんな事件?があってから、そのニコニコオジサングループの席を通りがかるときには、例の上級生が因縁を付けるような態度で、ぐっと睨みを利かすのですが、ニコニコオジサンたちは笑っているだけでした。

私たち高校生の中でも、だらしない意気地がない、軟弱な大人たちという評価が下されていたんですよ。

そんなこともあって、男ならやっぱり強くないとダメだし、大人なら尚のこと強くなければいけないと、真剣に思うようになったきっかけでした。


で、1年生の冬休みに、私たちの町にも空手道場が開設されるというチラシが出回って、早速入門一期生を目指して道場開きに出かけたんですよ。

道場開きでは型や組手の模範演武があって、最後が試し割りで杉板やレンガやブロックを手刀や正拳、蹴りで割るというイベントのあとで、希望する者に1日体験入門をさせてくるというプログラムでした。

もう入門する気満々でいた私は、熱心に食い入るようにして演武を見学していたんですが、途中で演武をしている顔ぶれに会ったことがあるような気がしてきたんですよ。

それで、よくよく近眼の目をすぼめて近づいて見ていると、例のニコニコオジサングループのメンバーが混じっているんですよ。

これにはビックリ、仰天でした!

弱そうで痩せこけて見えたニコニコオジサンは、細身ではあるものの背筋の通った姿勢で黒帯らしい力強い演武をしているじゃないですか・・・。(^_^;)

そのあと試し割りの時間になると、見学者側の壁際で見えなかった位置から進み出てきた円満そうな丸顔の師範の姿が・・・おおぉぉ~~!なんということだ、ニコニコオジサングループじゃないですか!

これから試し割りを始めるというアナウンスの時に、その丸顔太めの師範は私をジッと見ていた・・・気がするのよね。(´д`;)

見事な試し割りで、何枚も重ねた分厚い杉板割りや、ブロックやレンガ割りを見せつけてくれた細身のニコニコオジサンは、流石に演武ではニコニコオジサンではなく凜々しかったのですよ。

その時に思ったこと、ひとは見かけによらないなぁ・・・って、あの上級生はボコボコにされずに済んで良かったなぁ・・・ってことでした。(^_^;)

もちろん即日入門です。

ちなみに後日談で聞いた話では、見学者でやって来た私のことを師範や演武したニコニコオジサンたちは、分かっていたそうです。(^_^;)

お灸をすえるつもりもあって、試し割りにも力が入ったって、そう教えてくれました。

入門して自分が黒帯を締める頃になると、通勤列車の車内に隣町の親道場の門下生の顔がチラホラ見分けられるようになりました。

うちの道場は子道場のような位置づけで、親道場の門下生と共同で稽古したり親道場から師範代が来ていたこともあって、交流があったんですよ。

子道場の一期生ということで、ずいぶん可愛がってもらいましたが、入門のきっかけを作ってくれたのもニコニコオジサングループでしたね。

こんなきっかけで空手少年になったわけですが、この時の痛烈な衝撃が忘れられません。

もしかしてあの人も・・・って考え出すと、周りにいる人たちがみんな猫をかぶっているけど、実は猛者じゃないかと、思えてしまうのですよ。

それからはどんな人に対しても、あとで正体が分かったときに、態度を急変させて恥をかくという失態を演じないで済むように、謙虚でいることを心がけるようにしたんですね。

高校生の2年3年になっても、まわり中が強いひとだらけなんだ、そう思い込んで生活していましたから、無用の暴力トラブルにも巻き込まれずに済んだんだと思います。


ってことで、今回は
ワンカップ焼酎を片手に通勤列車の中でいつもニコニコしていた弱そうな痩せこけたオジサンの正体!」にビックリ仰天な話でした。


では!

非常時は  見かけだけでも  のほほんと





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