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波打ち際にできた1350年の歴史のある温泉【GW近畿一人旅⑫】

こちらの続き。

ゴールデンウィークに近畿地方を一人旅したこの記録も。12話目にしてようやく3日目だ。このシリーズだけで12話も書けているだけでも誰かに褒めてもらいたいと思う今日この頃。

さあ、3日目のはじまりはじまり。


起きたのは6時半ごろ。昨日までの雨や曇り空とは打って変わって、起きた時点で超晴天。起床してすぐに青空を見られることがこんなに幸せなことなのかととても実感させられた朝だった。


準備をしてまず最初に向かったのは「三段壁」

紀州を代表する景勝地だ。
駐車場に犬のフンが放置されていたこと以外はとても良い景色が見られた。

ここは特に営業時間などはないため、早朝から絶景を楽しむことができる。

続いて向かった「千畳敷」も同様だ。

千畳敷に着いたのは朝の7時半ごろだったがすでにそこそこの観光客が景色を楽しんでいた。駐車場にはキャンピングカーも停まっており、今思えばここで車中泊をすることもできたかもしれない。

千畳敷もパノラマビューがとても素敵な場所であり、和歌山を車で観光するなら是非訪れてほしい場所だ。

朝からパノラマビューを堪能しパノラママンになった私はその勢いで南紀白浜の市街地にやって来た。まずここの名物といえば白良浜(しららはま)。名前の通り、砂浜がとても白くて良い。

アンミカ氏は自身の白のレパートリーの中にこの砂浜の色は入っているのだろうか。



浜がこれだけ綺麗ならば、海の方はどうだろうか。
当然のように海の水も綺麗だ。
東京の海ではまったく見ることのできない透明度。もはやこの海水がマックフィズとして提供されても疑わずに飲んでしまいそうだ。

そして南紀白浜に来たらここも絶対に寄っておきたい。それが「崎の湯」だ。

南紀白浜は温泉地でもあり、それ故公共浴場がいくつか存在する。そんな中でもここの「崎の湯」は観光客に生まれたかのような観光客向けの公共浴場である。

なぜこの公共浴場が観光客から人気なのか。「崎の湯」とググれば2秒で分かりそうなものだが、一応言っておくとここの浴場、海の目の前の絶景露天風呂である。

南紀白浜観光協会ホームページより引用
https://www.nankishirahama.jp/spot/546/

海の目の前の露天風呂と聞いて、海沿いの街のホテルじゃよく見かけるよねと思った方も多いかもしれない。しかし崎の湯は違う。それは浴槽がある場所がすごいってこと。この浴場は、入浴する浴槽が海に隣接している。というか海の上に温泉があるというような出立ちだ。


観光客に人気の温泉だということで混んでいるだろうと予想した私は、開店時間の10分前である7時50分に到着。温泉が開くまで駐車場で待ってやろうと思っていた魂胆だが、駐車場にたどり着くと意外にもすでに車が何台か停まっており、誘導のおじさんもがっつりスタンバイしていた。


車から降り、受付の人に話を聞くとどうやらもうすでに入浴しているお客さんもいるらしい。Googleでは8時オープンと書かれていたが、少し早めに行っても入れるようだ。


そうと分かればいざ入浴。受付で会計を済まし、タオルを持って浴場へと繰り出した。


暖簾をくぐるとまずは脱衣所。脱衣所のロッカーは簡易的で、鍵はついていない。貴重品ロッカーもないので不安な人は貴重品は車に置いていくのが無難かと。あとここ、スマホや携帯の持ち込みが禁止であり、洗い場もないため持っていくのはタオル一枚でいいだろう。車のカギさえ盗まれなければなんとかなる。


脱いだ服をロッカーにぶち込み、いざ風呂へ。
まず目に映ったのは目の前に広がる海。
温泉が少し低い場所にある分、目線の先には温泉よりも海が広がっている。
温泉は本当に海岸の岩場を利用して作ったかのような見た目だ。
海がこれほどまで近くにある温泉なんてなかなかないだろう。
前日の朝には海の洞窟風呂にも入ったが、海の近さでいえばこちらの方が近い。
天気も良いしこのまま海に飛び込んでしまいそうだった。


先述したようにこの浴場には洗い場がないので、置いてある桶を使ってかけ湯をする。

おお、結構熱い。

心の準備を整え、いざ入浴。かけ湯で感じたとおり割と熱い。元々のお湯の熱さもそうだが、強い日差しも相まってお湯が熱く感じられるような気がした。肩まで浸かり、5秒ほどやせ我慢。よし熱さに慣れた。慣れたぞ。硫黄の香りが強めで気持ちの良いお湯だ。そしてやはり温泉からの海の眺めも素晴らしい。座って視界が低くなる分、より海が近くに感じられた。


周りを見渡すと、温泉にはすでに2、3人の男性が海を見ながら温泉に浸かっていた。彼らは海を見ながら各々何を考えていているのだろう。朝だからかサークルの可愛い女の子の話をするうるさい大学生みたいなのもおらず、聞こえるのは波の音だけだ。

本当、最高の朝風呂である。


しばらく温泉でのんびりしていると、だんだんと入浴客が増えてきて、温泉からオーシャンビューを眺める視界にはびちょびちょのおじさんも増えてきた。

温泉の温度が少し熱めなのでそこまで長湯はせず、10分ほどで退場。身体を拭く時も海を見ながらがっつり拭いてやった。身体を拭いた時、すでに私の身体がスベスベになっていることにも気づき、温泉の効能の恩恵を受けたと知った私はとても幸せな気持ちになった。


服を着て浴場から出ると、駐車場の車の台数は先ほどよりも増えていた。
やはり朝から観光客に人気というのはたしからしい。私の車の隣では、運転に慣れていなさそうなおばちゃんが車を入れるのに少し手こずっていた。駐車場はそこまで広くないため、早く出てあげた方が他の車も多少はスムーズに駐車ができるようになるかもしれない。

そう思って車に乗り込もうとしたその時、


「お兄ちゃん、東京から来たの?」


駐車場の誘導のおじさんの声だった。右手に持った赤い棒を見てすぐに分かった。なんで東京から来たとバレたのか、それは車のナンバーだ。他に停まっていた車は「大阪」や「和歌山」など、ほとんどが関西のナンバーであるのに対し、東京のナンバーの車は私の車だけだった。そのため、物珍しさからおじさんが話しかけてきたのだろう。こういう地元の方からの声かけは観光客からしたら大歓迎である。


「はい、東京から来ました!」


贅沢な朝風呂を終えた後で気分の良い私の返事は少し大きかった気がする。
おじさんは続けて、


「一人旅かい?」


と聞いてきたので、二つ返事で「はい」と言った。
おじさんは「いいね」と言った後、ここの温泉の歴史について少し話してくれた。

ここ、南紀白浜温泉はその昔、ある皇族によってたまたま発見された温泉だそうで、当時の天皇もここのお湯を気に入り、よく行幸されたらしい。おじさんの話す様子からして、なぜか私はおじさんに気に入られたようだ。天皇がここのお湯を気に入ったのと同様に。それをなんとなく察した私はこんなことも聞いてみた。


「他の公共浴場は、観光客は今入れないのですか?」


南紀白浜にはこの「崎の湯」以外にも多数の公共浴場が存在するのだが、私が南紀白浜に訪れたときは「崎の湯」以外の公共浴場はすべて、利用が地元民だけに限定されていた

その理由としては新型コロナウイルスの感染対策らしい。

それにより公共浴場のGoogleの口コミには「入ろうと思ったら入れなかった」「未だに観光客は入らせてもらえないのか」といった、多数の観光客の憤怒の★1口コミが殺到している世紀末状態になっていた。


その状態を知ってから、私は「観光客は入れないというのは本当なのか」というのと「なぜ今も地元民限定にしているのか」は地元の方に聞いてみたいと思っていたのだ。

私の質問に対し、おじさんの返事はこうだった。


「この辺の人はね、みんな自分の家の風呂には入らないの。みんな公共浴場で風呂を澄ましてるわけ。だから観光客の人がいっぱい来ちゃうと地元の人が使えなくなっちゃうからしばらく地元の人だけっつーことにしてるの。」


なるほど。理由はたしかに納得できる。今回のゴールデンウィークのような期間は特に、観光客が殺到し地元の人が追いやられてしまう可能性もある。
でもその理屈でいくと、コロナ期間は観光客の数も減るだろうからむしろ開けといてもいいのでは?とは思ったが言わずにおいた。ひょっとしたら、マナーの悪い観光客が多くて地元民がうんざりした結果とられた施策なのかもしれないし。



おじさんの話では、この規制はゴールデンウィーク明けにはなくなりそうとのことだ。今では観光客も入れる状態になり、口コミもマシになっているのだろうか。


その後は、おじさんが昔横須賀の方に仕事に行っていた話などを聞いていた。
詳細は覚えていないが、若き時代はとても楽しかったらしい。私もおじさんになったら若者に自身の昔話をするような男になるのだろうか。おじさんの話を聞いているうち、強い日差しでだんだんと汗をかいてきた。


時間が経つにつれて、やって来る観光客の数も増えてきたことでおじさんは普通に誘導の仕事をせっせとやらなければいけなくなり、

「この後も楽しんでって!」と爽やかな笑顔を見せておじさんは仕事に戻って行った。

こうやっておじさんに話しかけられたりするのも、一人旅の醍醐味である。


この時点で朝の8時20分ごろ。南紀白浜には果たしてどんな朝ごはんが食べられるのか。白く輝く白良浜を横目に、南紀白浜の町を車で駆けた。


続く

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