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カフェで隣の女子のマッチングアプリ体験談を盗み聞きした話

去年の秋ごろ、PRの案件でカフェに行った。

僕はnoteとは別にInstagramでグルメを紹介するアカウントを運用しており、ありがたいことに2000人以上のフォロワーからフォローされている。最近noteを始めたり、資格の試験を受けたりなどで忙しかったため更新がストップした期間があるが、アカウントをリスタートさせたのはつい最近の出来事である。

去年の今頃は、かなり積極的にインスタで活動をしていた。投稿やストーリーは毎日欠かさず行っていたし、他のインスタグラマーの投稿にも毎日いいねやコメントを送り、時にはオフ会に参加したりもしていた。去年はまさにインスタが自分の行動の中心近くにあったような気がする。

フォロワー2000人を超え、それだけ積極的に活動していると、ありがたいことにお店からPRの依頼が来ることもあった。具体的には、お店は無料で料理を提供する代わりに、インスタでお店を紹介するという案件である。インスタを始める前までは、そんな世界があるだなんて知る由もなかったが、実際にインスタを始めて案件の依頼が来ると自分が何者かになれたような気がして気持ちが高揚した。

冒頭で「カフェに行った」と書いたが、それは先ほど書いたPRが目的である。伺ったお店は日比谷公園の中にあった「日比焼き芋」さんだ。こちらは厳選した焼き芋を使ったオシャレスイーツがウリのカフェである。現在は日比谷から東中野に移転しているらしい。お店のHPを載せておく。


お店に伺ったのは土曜日の14時ごろ。休日のこの時間ということでお店は繁盛していた。というか繁盛どころかお店の前には長蛇の行列ができている。お店を見ただけで凄まじい人気店だということが窺えた。このお店は自分のPRなんて本当に必要としているのだろうかと疑うほどだった。

去年日比谷公園にあった「日比焼き芋」

PRとはいえ、先に並んでいる人を追い抜かして入店することは許されないだろうと思い、僕は列の最後尾に並んだ。ザッと見ただけでも軽く30人くらいは並んでいる。この行列に並んでいるだけで事前に決めた集合時間をあっという間に過ぎてしまいそうだ。15分ほど並び続け、僕はさすがにお店の人に一声かけないとバックれインスタグラマー扱いされてしまうかもしれないと思い、この日一緒に連れて来た相方を列に置いて僕は単身でお店の中へ入った。お店の中はお客さんでいっぱいで大変賑やかである。大量のお客さんを捌くために懸命に働いている店員さん達の姿が印象的だった。僕は誰が責任者か分からなかったので、とりあえず一番最初に目が合った女性の店員さんに話しかけた。

「すみません。14時からPRの件で来させていただきました」

店員さんは責任者ではなかったようで、すぐに責任者の方を呼んでくれたが、その責任者の方もお客さんの相手をするので手一杯のようで、

「すみません!少々お待ちください!」

と言われてそのまま入り口近くで待つことになった。店員さんはみんな元気が良く、これだけ忙しく働いていながらもハキハキとした接客でお客さんに焼き芋を提供していた。僕は心が小さいのでこんなに忙しかったらあんなにハキハキとお客さんに応対できないような気がした。

5分ほど待っていたら、責任者の方がやって来て

「お待たせしてすみませんでした。あちらのお席お使いください」

と、外に並んでいるお客さんが山ほどいるにもかかわらず僕を案内してくれた。本当に案内されて良いのかと少し戸惑ったが、僕は外で待つ相方を呼びに行き、2人で窓側の席に座った。こんなに混んでいるのに一番良い席に案内されてしまった気がする。ただインスタをやっているだけなのに周りのお客さんに若干申し訳なかった。

今回はPRでの来店なので提供されるメニューが決まっている。2人で訪問したので「芋んぶらん」と「焼き芋クリームブリュレ」をお願いした。責任者さんはお客さんに応対する時と変わらぬ笑顔で応対してくれた。料理は10分後くらいに提供された。たぶん他のお客さんよりも優先して作ってくれたのであろう。ただ飯食ってインスタに載せているだけのヤツにそこまでしてくれなくてもいいのに。

これがお店の看板商品、「芋んぶらん」である。見た目も名前もオシャレだ。見た目はモンブランだが食べてみると栗ではなくしっかり芋の味がする。焼き芋をそのままモンブラン風にしたような食べ物だ。栗のモンブランより甘さが控えめで大人な味わいに感じた。周りに散りばめられたさつまいもチップの食感も良いアクセントだった。

こちらはもう一つの看板商品、「焼き芋クリームブリュレ」である。文字通り焼き芋の先端がブリュレになっている。先端はカリカリでトロットロだ。こちらは甘みが強い。ブリュレ部分以外の焼き芋部分もホクホクで美味しかった。スイーツとしては割とボリュームがあるように感じたのでお腹に余裕がある時に食べたいと思った。

PRなのでいつもよりも少し多めに写真を撮り、なんなら動画も撮影した。周りのお客さんが談笑で時間を使う中、僕たちのテーブルだけは撮影に多くの時間を使っていた。どうすればインスタ映えするのかを考えながら写真を撮るのはなかなか難しい。

そんな調子で写真撮影しながら料理を楽しんでいた僕たちの隣のテーブルに、若い女の子2人組が腰掛けた。20代半ばといったぐらいだろうか。僕と年齢はそこまで変わらない気がする。2人とも丸の内とかで売ってそうなオシャレで高そうなワンピースを着ていた。偏見だが完全に都会に染まった女子の服装に見えた。

小さなお店だったのでテーブル同士の間隔はそこまで広くなく、かつ彼女たちもそこそこの声量でしゃべるもんだから、2人の会話はかなり鮮明に耳に届いて来た。彼女たちの会話のテーマは「マッチングアプリで出会った男の話」だった。まず一方の女の子(以下A子さんと呼ぶ)はマッチングアプリで2歳年上の男性と出会ったらしい。初デートは代官山のカフェに連れられたそうだ。A子さんはお店で2100円のメニューを注文し、男性とたわいもない会話をした。その後会計の時、A子さんは自分が食べた分の2100円を出そうとした。すると男性から

「2000円でいいよ」

と言われたようだ。この時A子さんは2100円と2000円の差額であるたった100円奢っただけなのに奢った顔している男性の面構えが気に食わなかったらしい。A子さんは相手の女の子に「マジありえなくな〜い?」などと言いながら芋んぶらんを口にしていた。たしかに、100円だけ奢るという行為は赤の他人から見てもなかなか中途半端な行為であるように聞こえる。僕が女性だったら「マジありえなくな〜い」と言っていたかどうかは定かではないが、それだけだったらきっかり割り勘にしてくれてもいいのに、と思うかもしれない。とにかくその男性の対応は中途半端であった。彼は全額奢るかもしくはきっかり割り勘にしておけば、日比谷のカフェで会話の肴にされることはなかったかもしれない。

A子さんの話は続く。その男性と代官山のカフェを出た後、A子さんは次に渋谷で予定があったようなのでその事を男性に伝えると、なぜか

「そうなんだ、じゃあ渋谷まで一緒に行こうよ」

と提案してきたらしい。完全に解散になりそうな流れだったが結局2人は代官山から渋谷まで一緒に歩いたようだ。代官山から渋谷まで一緒に歩けるのであればそこそこ会話が盛り上がっている証拠のような気がするが、A子さん曰くその散歩中に男性が提案してきたことにガッカリしたようだった。男性は歩きながら「しりとりして、負けた方が自販機でジュースを奢る」という謎のゲームを提案してきたようだ。赤の他人の僕が聞いても何の面白味も感じない内容である。自販機のジュースは大体最低でも100円以上はする。もし仮にこれでA子さんが負けた場合、先ほどカフェで奢った100円はチャラになるということだ。この時特にジュースが飲みたいわけでもなかったA子さんにとって、このゲームはリスクしかない。加えて、大人になって「しりとりで負ける」というシチュエーションが思い浮かばない。A子さんはその男性とはその場限りの付き合いだったようで、二度と会うことはなかったらしい。

そんなA子さんの話を笑いながら聞いている相手の女の子(以下B子さんと呼ぶ)も、マッチングアプリの経験者のようだった。B子さんがマッチングアプリをやっていた時、ある男性とマッチングし2人で居酒屋デートに行ったらしい。居酒屋に入り、B子さんが男性に何か頼みたいものはあるかと尋ねると、

「何頼んでもいいよ」

と男性が返答。この返答を聞いたB子さんはメニューの中から適当に野菜や串物などをチョイスして店員さんに注文した。そして料理が提供された時、男性の口から発されたのはこんな言葉であった。

「ごめん、俺サラダ食えないんだよね」

赤の他人の僕が聞いても耳を疑う言葉である。話を聞いていたA子さんも「マジか!」と爆笑していた。B子さんは「だったら注文する前に言えよ!」と焼き芋を食べながら憤慨している様子だった。

B子さんは話を続ける。さらにB子さんが驚いたのは会計の時、男性から1円単位での割り勘を提案されたことだった。さっきのサラダの話に続いてこの割り勘話を聞いた僕は、山中慎介の左ストレートを2回連続で食らったかようなインパクトを感じた。1円単位って本当に1円きっかりってことなのだろうか。3253円の会計だったら1人1626円払うってことなのか?そもそも3253って2で割り切れなくないか?端数分はどっちが出すんだ?など、脳内で色んなことを考えてしまった。僕がその店のレジの店員だったら思わずツッコんでしまいそうである。テーブル会計だったらどうしようもないけど。


もはや隣にいる僕たちにとって彼女たちの会話は店内で流れる愉快なラジオだった。彼女たちは自分たちの会話が横にいるインスタグラマーに盗み聞きされていることなどまったく気づいておらず、互いが互いに「私の話を聞いてくれ」状態だ。

彼女たちはまだまだ会話に花を咲かせてくれそうだったが、写真も撮り終わったし料理も食べ終わった。外ではまだまだ並んでいる人たちがいたので早々に席を空けてあげた方が良さそうだ。僕は責任者さんの元へ行き、お礼を伝えて店を後にした。

なんにせよ、女性とご飯に行く時は自分が主導権を握って、中途半端な行いを避けることが重要なんだなと学んだ。今後マッチングアプリを利用する男性の参考になっていたら嬉しい。逆に言うとこの女性ナシだな、と思ったら自分が中途半端な行いをすれば向こうから離れてくれる、ということも言えるだろう。まあナシの相手に対してそんな遠回しなことをするかと言われれば微妙な気もするが。


最後に宣伝ですが、僕は年間300回以上(実は400回以上かも)外食をしており、Instagramでグルメと共に当時のエピソードを発信しています。普段から外食が好きな方、インスタでも文章を読んでみたい方はフォローして応援していただけると大変嬉しく思います。今回紹介したお店は先述したとおり今は東中野にあります。美味しいです。行ってみてくださいな。

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