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おもてなし感じる接客と「納豆とんかつ定食」【とんかつ一幸 @春日部(埼玉県春日部市)】

春日部にやって来た。季節はまだ梅雨真っ只中ということで、空には分厚い雲がかかっており地面は所々濡れている。僕が春日部の土を最後に踏んだのはちょうど1年前ごろだったと思うが、その時も似たような天気だった。春日部はずっと曇っている場所なのだろうか。

この日僕が春日部にやって来たのは、特に目的があるわけではなかった。ただなんとなく、春日部駅で降りて飲食店を開拓したい、という気持ちが起こっただけだ。だから特にこのお店に行くために、という明確な目的があって春日部に来たわけではない。

しかし先ほど述べたとおり、強いて言うなら飲食店を開拓したい、というやんわりとした目的があった。少し時は遡るが僕は電車に乗っている途中、スマホで春日部駅周辺の飲食店を調べていた。ちなみに一年前に春日部に来た時は「ソットテット」というお店で美味しいパスタをいただいた。こちらのお店もオススメである。

スマホでお店を調べる中で、一番最初に目に付いたのは駅近のフレンチレストランだった。ただこの日は休日。どうせ予約でいっぱいだろう。そう考えてフレンチの線はなしにした。その次に目が付いたお店が「とんかつ 一幸」というとんかつ屋さんだった。

僕はnoteで何度か書いたことがあるような気もするのだが、僕にとってとんかつは三本の指に入るほど好きな料理である。Googleマップを見る限り駅から少し離れてはいるようだが、歩けない距離ではない。そのお店を見つけた瞬間、今日はとんかつを食べに行こうと決めた。


11時20分頃春日部駅に着き、スッキリしない天気の中歩みを進める。最近ずっと暑い日が続いていたので今日は幾分か涼しいような気がする。駅からお店までは歩いて17分ぐらいかかったが、汗はあまりかかなかった。

お店がある通りは車の往来はやや多めだが一軒家が多く、飲食店が立ち並んでいるような感じの通りではない。そんな通りに一軒だけとんかつ屋さんが建っていた。看板には「一幸」と書かれている。昔からこの場所にあるような、年季を感じさせる見た目に感じた。建物の脇にある駐車場は4台ぐらいの車が停まっており、11時半の開店からまだ間もないというのにそこそこのお客さんが入っているようだった。予約でいっぱいでお断りでもされたらどうしよう、とか考えながらお店の引き戸を開けた。

お店の外観。気取らない昔ながらの佇まいが素敵だ。

扉を開けるなり、

「いらっしゃいませー!」

と元気の良い声が5方向ぐらいから聞こえた。僕がお店に入った瞬間、店員さんが全員で挨拶をしてくる。これって意外と当たり前のようで当たり前でないように感じた。ほかにお店に入った時ももちろん「いらっしゃいませ」と挨拶はされる場合が多いのだが、このお店のように店員さんが全員で挨拶するお店には久々に出会ったような気がする。

その後僕は一人客ということで空いていたカウンター席に案内された。お店に用意されている席はカウンター席が6〜7席と小上がりの座敷が3卓ほど。店内もまた、昔ながらの気取らない和食屋さん、といった落ち着いた雰囲気だった。


店員さんからお茶とおしぼりをいただき、メニューを開いた。
1ページ目にはとんかつ定食、ヒレカツ定食といったオーソドックスな定食メニューが書かれている。そしてその中にはヒレカツ定食が人気ナンバーワンメニューということも書かれていた。はじめて来たお店なので人気ナンバーワンを注文しておけば間違いないだろう。ヒレカツ定食の存在を頭の片隅に入れつつ、ページをめくった。

2ページ目にはこのお店独自の少し独特な定食メニューが書かれていた。具体的には肉ににんにくをはさんで揚げた「にんにくとんかつ定食」や、さっぱりとした味が特徴だという「梅しそとんかつ定食」など。そしてそのページには、「納豆とんかつ定食」というメニューも書かれていた。文字通りとんかつのお肉に納豆をはさんで揚げた一品らしいのだが、とにかく僕はそのメニュー名に衝撃を感じた。納豆ととんかつが合わさったら一体どんな味がするのだろう、そんな好奇心が僕の思考を埋め尽くし、ヒレカツ定食のことは忘れてついに「納豆とんかつ定食」を注文してしまった。


僕が「納豆とんかつ定食」を注文すると、注文を受けてくれた店員さんが厨房に向かってそこそこ大きな声で

「納豆とんかつ定食入りました〜」

と言った。厨房の店員さんたちはその声を聞くと

「納豆とんかつ、ありがとうございます〜」

とみな一斉に声を出した。

またほかのお客さんのもとに料理が運ばれた際には、

「お待たせいたしました〜」
「ごゆっくりどうぞ〜」

といった声が厨房からたくさん聞こえてくる。このように1人の店員さんが何か声を出すと、それに呼応してほかの店員さんもそこそこの声量で声を出す、というのがこのお店のルールのようだ。こうやって文章で書くと、まるで家系ラーメンのお店のように感じるかもしれないが、決してそんなことはない。家系ラーメンのお店ほど、店員さんの声にやかましさがないのだ。僕はチェーン系の家系ラーメンのお店に行くといつも、店員さんたちの声がやかましくて落ち着いて食べれないなぁと思ってしまうが、このお店に関してはそのやかましさを不思議と感じない。声のボリュームも頻度も、やかましくない程度に抑えられているのだ。店員さんたちの声は、とんかつを待つ僕にとっては良いBGMだった。


とんかつは結構じっくり揚げているようで、僕の所に料理が運ばれて来たのは注文から15分後ぐらいのことだった。おぼんの上ではやはりメインのとんかつが一番強いオーラを放っている。まるでアピールしてくるかのようにこちらを向いたとんかつの断面には、溢れんばかりの納豆が詰められていた。人生ではじめて見るとんかつの姿だった。

「納豆とんかつ定食」。納豆がこんなに詰められているなんて。

まずはお味噌汁を一口いただく。大根がたくさん入った優しいお味噌汁だ。定食のスタートは汁物からというのが僕のルールである。

味噌汁に入った大根ってめっちゃ美味しいよね。

味噌汁で胃を温めたあとに、メインの納豆とんかつをいただいてみる。断面の納豆をなるべくこぼさないように箸で持ち、一切れの半分を口に入れた。歯で噛んだ瞬間まず感じたのはサクっとした軽快な食感。衣がきめ細やかで、職人さんが繊細な技術で揚げているのがよく分かる。そしてその後やって来るのが豚肉の旨みだ。肉はおそらくロース肉だと思うが重た過ぎない脂とやわらかい食感が印象的で、さらに今回の主役である納豆が肉の旨みをうまい具合に包み込んでいる。納豆と豚肉なのでもう少し味がケンカするのかなと思っていたが、口の中でそれはそれは素晴らしいハーモニーを奏でていた。とても美味しい。

ちなみにとんかつには納豆だけでなくシソもはさんである。僕は実はシソが苦手なのだが、肉の旨味と納豆の味とよく調和しておりこのシソは美味しくいただけた。

納豆ととんかつって合うの?と思うかもしれないがとても美味しい。

定食のご飯はお茶碗サイズと丼サイズが選べるということで、僕はお茶碗サイズを選択したのだがそれでもお茶碗に盛り盛りのご飯が盛られている。女性の方はあらかじめご飯少なめと言っておいた方が良いだろうなと思った。事実、僕の隣に座っていたご夫婦は奥様が食べきれなかったご飯を旦那様が代わりに食べていた。

「お茶碗一杯」の量はお店それぞれ。ここは割と多めだ。

あとはキャベツの盛りも結構良い。ポテトサラダも付いてくるので野菜だけでもそれなりにボリュームがある。隣の奥様はポテトサラダも旦那様に食べてもらっていた。

ポテトサラダも良い味出してます。

定食にはデザートのメロンも付いてくる。このメロンがまたとっても美味しかった。良いメロンをいただいたのだろう。

水々しくてとっても美味しいメロンだった。もっと食べたい。

食後にはほうじ茶が付いてくるサービスもあり、この辺りからも店員さんのおもてなし心を感じた。ほうじ茶には店員さん達の思いが詰まっていたのか、びっくりするほど熱かった。店員さんたちの思いを一心で受け止める覚悟を持って、熱さに耐えながら飲み干した。


食べ終わる頃にはだいぶお腹いっぱい。とんかつは5切れしか乗っていなかったがご飯も多かったしそこそこボリューミーな定食に感じた。レジでお会計を終えると、これまた店員さんが一斉に

「ありがとうございました〜」

と言ってこちらを見送ってくれた。


お店を出るとさっきまで空を覆っていた雲が減り、少し晴れ間が出始めている。僕はお腹だけでなく胸もいっぱいになっていた。


今回行ったお店

とんかつ 一幸
●住所:埼玉県春日部市中央5-8-24
●アクセス:春日部駅から徒歩17分
●営業時間:
11:30 - 14:00 L.O. 13:40
17:30 - 21:00 L.O. 20:40
●定休日:水曜・木曜
●支払い方法:現金のみ
●駐車場:あり


頼んだメニュー

納豆とんかつ定食 ¥2110

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