上越市で少しマニアックめなスポットをめぐる旅【信越北陸一人旅⑰】
登山でたっぷりと汗をかいた僕は、上越妙高駅近くのスーパー銭湯で少し休憩。
サウナも入れたしだいぶスッキリした気分だ。
元々計画していた旅程では鮫ヶ尾城を出たあとは北上してそのまま上越市の方へ向かう予定だった。だが上越市に行ってから何をしよう、というのは明確には決めておらず、上越市は海と接してるから海でも眺めよう、くらいにしか考えていなかった。
とりあえず上越市へ向かって車を走らせる僕だったが、たしか途中でコンビニに寄ったタイミングでだろうか、僕は上越市に「大月の棚田」という棚田があることを知った。この時まだ9月なので、まだ稲刈りはされていないはず。僕はその棚田がちょっと気になったので見に行ってみることにした。
大月の棚田は住所としては上越市にあたるが、その場所は上越市の中心街からはかなり離れており、Googleマップで見ると上越市東側の山道にポツンとあるような棚田だ。棚田までの道のりは予想通り坂が多く、棚田ではないにしろ田んぼもたくさん見かけた。スーパー銭湯から大月の棚田までの道中は特段それぐらいしか書くことが思いつかない。とりあえずそんな田舎道を40分ぐらい車で走っていたら大月の棚田に到着した。
棚田といえば、ゴールデンウィークに三重県熊野市の「丸山千枚田」に行ったことを思い出す。高台から見下ろしたときのあの何段も田んぼが続いている光景は圧巻だったし、遠くには山々が見えるのも素敵だった。日本最大規模の棚田という割には観光客が少なく、すごく静かだったことも覚えている。
そして新潟で訪れた大月の棚田はどうだったかというと、丸山千枚田に比べるとややコンパクトな棚田だった。部分的に棚田になってはいるが丸山千枚田のように辺り一面が棚田、というわけではなかった。もちろんこれはこれで一つの風景であり、僕にとっては十分楽しめるものである。だが惜しかったの思ったのは、空に若干雲が多かったのと、すでに17時近くだったこともあり棚田が太陽に照らされていなかったということだ。9月なので稲穂はもうほぼ育ちきっており、ここに陽の光が当たればかなり綺麗な景色が見られたんだろうな、と思った。
また、一番手前の田んぼには田んぼアートのようなものが作られているようだったが、何が描かれているのかはよく分からなかった。たぶん何かしらの文字なのだと思うが、結局解読できなかった。
そんな感じで、旅のメインのスポットってよりかは時間があった時に寄るようなプチスポットだな、なんて印象を受けた僕はたぶん棚田を5分ぐらい眺めたら満足してしまった。Googleで大月の棚田の写真を調べると、田んぼの水面が朝日に照らされたカッコいい写真や、棚田に雲海が広がる神秘的な写真も見かけたので、時期を狙って行けばかなり良いスポットなのかもしれない。
大月の棚田を後にした僕は、上越市の市街地の方に車を走らせた。棚田から市街地に行くのにも40分ぐらいかかった気がする。17時近くだったし道もそれなりに混んでいた。
上越の市街地に着いたのは17時過ぎ。観光施設はだいたい閉まってるし夕ご飯を食べるにはちょっと早い、そんな微妙な時間帯に僕がどこへ立ち寄ったかというと、「五智公園」という公園だ。上越市街地の少し西側にある公園で、この辺りの公園の中ではたぶん一番規模の大きい公園である。
五智公園の駐車場に車を停め、とりあえず歩き始める。どうやらこの公園には展望台があるらしく、そこから日本海を眺めることができるという情報をネットで見かけた。そのため僕はその展望台を目指して歩くことにした。
公園は思っていた以上に広く、5分も歩けば展望台に着くだろうなんて考えていた僕の読みは甘かった。10分歩いてもその展望台には辿り着かなかった。歩いてる途中、たまに遊具がある広場や芝生が広がるスペースがあったりして、地元の子どもたちが元気に遊んでいる光景が見られた。あとはランニングコースを走ってる人も何人か見かけた。
展望台に向かって歩いている時に一番印象に残っているのは、ズバリ虫の存在。9月とはいえまだまだ陽気は夏なので公園では当然のように虫がそこら中にいる。中でも一番印象に残っているのが、粉の一粒のように小さい虫だ。普段よく自転車に乗っているとときどきシャツに付いたりしているあの名前も分からない小さい虫のことだ。伝わるだろうか。とにかくアイツが公園にめちゃくちゃいたのだ。歩いてる時にアイツが顔にまとわりついたり、耳元で羽音を聞かせてくるのがとにかく不愉快だった。歩いてる時はずっとアイツらの妨害に遭っていたため、あまり景色を楽しむ余裕もない状態で展望台に向かって歩いていた。ついさっきまで僕は山城を散策していたわけだが、戦国時代の武士は山城暮らしが苦痛ではなかったのだろうか、なんて考えたりもした。現代と違って虫除けスプレーも蚊取り線香もないので、山の中で生活するのはストレス半端ないんじゃないか、とか思いながら足を速めた。
展望台までは結局20分近く歩いた気がする。展望台は木に囲まれた中のちょっとしたスペースにぽつんと立っており、モダンさもありつつもレトロさもあるようななんとも言語化しづらい見た目の建物だった。
階段があるので、登って2階へ上がってみる。そこから見えたのは上越市の街並みと日本海、そして遠くにそびえる山々。ここまでやって来て、ついに日本海までやって来たぞ、という実感が生まれた。
だがその景色も長くは見ていられなかった。あの小さい虫たちが、まだまだ顔にまとわり付いてくるからだ。景色が見たくて展望台までわざわざやって来たのに、展望台に着いて1分後にはもう車に帰りたい、と思ってしまっていた。僕はやや駆け足で展望台の階段を下り、来た道を逃げるように引き返した。車に乗り込んだ時には結構な汗をかいてしまっていた。さっき風呂に入ったばかりなのに。少し悔しい。
そんな虫に悩まされた五智公園を出た後は、市街地の北東側にある「船見公園」という公園に向かった。Googleマップ上で船見公園は日本海に接した場所にあり、僕は船見公園に行けば日本海越しに夕陽が見られるのではないか、という考えがあったからだ。
しかし僕のその願いは叶わなかった。五智公園から船見公園までは距離としてはそんなに遠くないのだが、とにかく道が混んでいた。10分弱ぐらいで移動できるかな、と思っていた勘が見事にはずれ、結局船見公園までは20分ぐらいかかってしまった。船見公園に着く頃にはすでに時刻は18時頃になっており、夕陽はもうすでに水平線の下に沈んだ後だった。かろうじて水平線の下から漏れ出た光で部分的に空が赤く染まっていたが、この日は雲も多かったし期待していた夕陽は見られなかった。船見公園で他に特筆することといえば、地図で見たとおり日本海の目の前の公園であったことと、少しやんちゃそうな地元の若者を多く見かけたことくらいだ。
今回上越市で巡ったスポットでは観光客っぽい人はまったく見かけなかった。この日たまたま上越市に観光客が少なかったのか、それとも単純に観光客があまり行かないスポットを巡ったのかは分からない。今回巡った場所がマニアックだったのだろうか、とか言ったら上越市の人に怒られるかもしれない。でもベッタベタの観光地を巡らない旅も僕は好きだ。
船見公園で微妙な夕陽を眺めたのは18時過ぎのこと。今日はよく運動もしたのでさすがに腹が減って来た。そろそろ夕飯を食べに行こう。上越でしか食べられないグルメを求めて、車はまた走り出すのだった。
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