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「青い鳥」

 いつもと同じ1日の始まりでした。掃除、洗濯、買い物を済ませる。土曜日だから、息子が散歩に出ていくのを見送る。それからしばらくは、私1人の時間です。

 今日はいつもと少し違う土曜日でした。大学院の友人たちとzoomで会う約束があるのです。人と話すことも、マスクをしない素顔の人と話すことも久しぶりです。

 友人たちの元気そうな姿を見て、声を聞くと卒業してからの隔たりを感じることはありませんでした。。友人の前で、私はいつもの100倍ぐらい毒を吐いていました。無職の引きこもりの私ですが、毒は蓄積されているようです。モニターを通して、同じ時間を過ごす人の存在が、私の心を軽くしてくれました。

 ときどき自分が、SF映画の登場人物のように思うことがあります。新型コロナウィルスの登場で、私たちの生活は一変しました。旅に出ることもなくなり、店は閉じ、歩く人はいなくなりました。防災放送が毎日定期的に流れてきます。息子が帰宅するまで、私はこの部屋で独りで過ごしているのです。

 映画だったら、とっくに「the end」を迎えているはずが、来る日来る日も同じような1日を過ごしているだけなのです。ラストまでの時間は未定だし、こんな映画は駄作もいいところです。

 世界を救うヒーロー・ヒロインも現れないし、天才的な博士が劇的な効果のワクチンを完成することもありません。その他大勢の私たちの生きている世界は、単純で地味で、劇的な展開はありません。映画にもならない、いつもの日常なのです。

 そんな土曜日、パソコンのモニターを通して、友だちと、お互いの近況を話しながら、笑ったり思いを共感しました。「幸せ」はこのように小さくて何気ないことで、よくよく周りを見たらそこら中に、たくさんあるようです。友だちと話をしているうちに、私は自分が「青い鳥」に囲まれて生きていることを思い知りました。

 映画の結末は、ゆっくりと待つことにしましょう。


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