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小心者です、はじめまして!

皆さま、はじめまして!
コメディエンヌのヤノミです。身体の80%はビールで出来ています。
友人からは「ヤノミちゃんって、夜呑むからヤノミなの?」と言われますが、名前はカタカナです。

おんせん県の出身、英語と大分弁と広島弁も少し話せます。
好きなことばは「Take your time(ゆっくりでいいよ)」。あなたのペースでいいよ、あわてないでね。そう言われるとほっとします。特に海外では。
元来のろまなものでして...。

世界のさまざまな国でコメディを上演してきた私が、2020年6月から12月にマネトラガールというサイトでコラムを連載させていただきました。
その記事に加筆などをしつつ、noteに転載させていただきます。

・舞台芸術の魅力や楽しみ方
・世界の舞台芸術
・子どもやファミリーのための舞台芸術
・ろう者のための舞台芸術

など、私が実際に出会ってきた舞台芸術(シアター)の魅力や作品、アーティスト、カンパニーなどについてご紹介できればと思います。

昨年から海外ツアーが不可能になり、まだ先の見えない日々ですが、このコラムで旅気分を味わっていただけたら幸いです。

コメディエンヌですが、小心者です

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                                                                                            (©️Louis Longpré)

さて、初回なので自己紹介と、コメディエンヌとして活動を始めた頃をメインにお話していきます。

私は小心ズ(しょうしんず)というユニットで、長年にわたり世界中でコメディを上演しております。演劇の世界に生きておりますが、女優などと大それたことは言わず、コメディエンヌと自称しております。

そして、そう!お察しの通り、小心者です

舞台の本番前は舞台袖で具合が悪くなり、「やっぱり今日はやめておいた方がいいんじゃ...。」「今からでも逃げだすべきなんじゃ...。」と、顔面蒼白で思うのです。(あ、白塗りメイクの場合もあるので、文字通り顔は真っ白ですね。)

ただ、ひとたび舞台に立つと驚くほど平気で、生き生きと大きな態度で振舞うので、私が小心者だということをあまり人は信じてくれません

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                    (中央がヤノミ ©️Cindy Lopez)

小心者=感受性ゆたかな人たちのこと

私は、小心者って実は世の中にたくさんいるのだと思っています。小心者だけに、ビクビクと隠れて暮らしているのです。だって、小心者は大勢の前で「私、小心者なんですううううう!」とアピールしたりはしないものですよね、小心者ですから。

・シャイ
・臆病
・時に心配性
・ちょっとばかり悲観的
・怖がり
・他人のことを気にしすぎる
・小さなことにドキドキする
・余計なことを果てしなく考えてしまう

小心者、それは感受性ゆたかな人たちのことではないかと、私は思うのです。

「とるに足らない些細な事に心を震わせる、愛すべき人たち」

そんな人たちが、この世界をほんの少し、こっそりと愉快に幸せにするのではないかと思っているわけです。そして、ささやかな事のなかにこそ、この世界の美しさが隠れているのではないかな、と。

笑いとビールを愛するわたくしヤノミが、世界中を旅してコメディを上演しながら体験し感じてきたことを、これからのんびりとお伝えしていきたいと思います。

劇場を飛び出してスタートした「コメディエンヌの道」

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         (右がヤノミ。初期の小心ズは顔の白いメイドふたり)

私が小心ズを始めたのは2005年のことでした。同じく小心者の相方と女2人のユニットとしてスタートしました。

東京で劇団に所属していたころ、劇場に足を運んでくださるお客様はいつも同じ顔触れだなぁと思っていたのです。

人のあふれる東京であっても、人生で一度も劇場で演劇を観たことがないという人たちがたくさんいるのだということを知ったのもこの時期です。

日本人にとって「演劇」というのは今なお遠い存在であり、ハードルが高いと思っている人も多い。

「よし、それなら劇場を飛び出してまだ見ぬお客様にこちらから会いに行こう!」
「舞台セットも照明もいらない、身ひとつでできる演劇を創ろう!」
「大所帯の劇団ではなく、小回りのきく2人でどこにでも行こう!」

演劇をもっと身近なものとして楽しんでほしい。

そんな思いで劇場を飛び出したのです。小心者のくせに思いついたとなるとこれがまた極端なことをやりがちなのです。

20代というのは無鉄砲なものですね。

……いや、今もじゅうぶん無鉄砲であります。

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                             (©️仁礼博)

そんなこんなで私たちは下北沢の駅前で路上パフォーマンスをやったり、イギリス人オーナーが経営するバーで上演したり、ライブハウスでロックバンドの間に挟まってコメディをやったりしはじめたのです。

最近でこそ、いろいろな場所やスタイルで上演される演劇が増えてきましたが、当時はそんなところで演劇をやっていた人たちはとても少なかったと思います。

「投げ銭」というものを初めていただいたのもこの頃です。

劇場では観客はあらかじめチケットを購入して観劇します。でも、路上パフォーマンスは基本的に通りすがりの人たちが相手です。

観終わって面白かったと感じたら、それぞれの判断でそれぞれの好きな額をパフォーマーに渡す。それが「投げ銭」です。

主にお金が一般的ですが、

・高校生の集団から飲みかけのジュース
・ホームレスのおじさんから、高級なチョコレート
・手作りのプレゼント
・手紙

などなど、お金ではない様々なものを投げ銭代わりにくださるお客様もたくさんいました!

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(ヤノミa.ka. ケセランパサラン シンシナティ・フリンジバーにて ©Jeff Burkle)

また、バーやライブハウスで上演すると「あんたたち、面白かったよ!」とお客様がビールをごちそうしてくれることもよくあります

イギリス人オーナーのバーには外国のお客様がたくさんいて、みんなワイワイと好き勝手に楽しんでいましたが、私はそこで「面白いショーをやるとビールをおごってもらえる!」ということを知り、とても感動したのを覚えています。

もちろん、チケットをあらかじめ購入していただくショーもあれば、終演後に主催者からギャラをいただく場合もあります。

もし毎回ギャラがビールだけだったらもちろん生きていけませんが、その無形の価値交換(パフォーマンスへの称賛としてのビール)が、私はなんだかとても好きなのです。

もちろんキャッシュも好きですが。

キャッシュ歓迎。ビールも歓迎。

オーナーが「イラシャマセー」以外、日本語をまったくしゃべらない人であったことや、お客様の半分が外国人だったこともあり、小心ズの演目ははじめからセリフを使わない無言劇となりました。

その代わりに身体表現や音楽や歌や効果音、仕掛けのある小道具や、ユニークな衣装やメイクを駆使したコメディとなり、それが結果的に「世界中で上演できるコメディ」となっていったのです。

たとえばこんな感じ!

(YouTubeがまだ世の中に知られていなかった2007年、YouTube主催のキャンペーンイベントに出演した際の動画)
そして、そんな小心ズが海外に飛び出すことになったのですが、ボリュームが出そうなので、今回はこの辺で。

では、続きはまた!

Stay safe, be happy.

ヤノミ

あなたのサポートにより、ヤノミがビールを飲むことができます。そのビールはエネルギーとなり、新たなコメディを生んでいきます。乾杯!