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転職と長期的なキャリアを成功させる「足るを知る」アプローチ

誰もが自分のキャリアを成功させたいと思っていることでしょう。私は20年以上も転職の支援に携わっていると、同じ人のキャリア(and/or人生)を20年に渡って見ているケースがいくつもあります。そうすると、当初は同じようなキャリア・ステージだった人が、15年~20年後にはある人は成功していて、ある人はキャリア的にあまり前進していないことが見えてきます。


15年後に成功している人

27歳の時は某大企業の平社員(年収500万円)だった人物を見てみると、15年後に成功している(と外から見える)人を3名挙げると次のような事例があります。年齢は概ね40代前半(42、3歳)です。

・アパレル企業の役員で年収1800万円
・外資IT企業の執行役員で年収4000万円
・投資会社のMD(部長)で年収5000万円+キャリードインタレスト(投資成功時のキャピタルゲインからの配分)

(他のパターンで、起業→IPOやM&AでEXITして資産数十億円という人々もいますが、今回はサラリー・パーソンのキャリア形成について述べます)

本質的には出世とお金だけが成功ではないのですが、資本主義の中での仕事面の成功を分かりやすく示す主な指標ではあるので、あまりに俗っぽいですがこのように表現しておきます。
(尚、私が思う成功とは「収入は不満が無い水準以上で、やりがいを持てる好きな仕事を思う存分できて、生活面を含めて人生全体がバランスが取れて満足度や納得度が高い状態」です) 

15年後も足踏みしている例

一方で、もともとは同じような学歴とキャリアで、同じように上記のようなステージに上がることを目指して頑張っていたのにも関わらず、15年後でも立場や収入があまり変化していない人もいます。

例えば、40代前半で、管理職には就いておらず(あるいは管理職でも赤字から脱却できないスタートアップ等)、収入も少し伸びた程度(500万円→700万円~800万円等)という事例はかなり多いです。勿論これらのキャリアも十分に立派ですので失敗キャリアという訳ではありません。

また、プライベートのことなど生活全体を考慮してこれで手を打っている人もいるので、それらの方々は「足踏み」事例からは除きます。

で、上述したような足踏み事例の人々に共通することが、転職回数が多いことです。また、転職をしなかったけれども、現職で活躍せず出世競争からは遠のいている人もいます。

違いは何か?

もともとは同じようなキャリアの人々が、15年後にここまでの違いが出た理由はなんでしょうか?

良くも悪くも転職するなど挑戦はしたけれども、15年、20年が経過しても足踏みしている人々のケースで共通することは転職が多く、15年位で4,5回転職をしているケースが目立ちます。

より高い収入、より出世できそうな会社、より自分に合う職場環境を求めて、2,3年毎に転職を繰り返すケースです。私は転職を繰り返すことを一方的にダメなことと言いたい訳ではなく、その動機です。

収入アップ、出世の機会(→収入アップになるので同義とも言えますね)、自分に合う環境、、、これらを改善する為(だけ)に、2,3年の早いスパンで現職に見切りをつけて次の会社を探し転職を繰り返す人々の事例をよくお見かけします。この場合、はじめの2-3回位までは収入が多少伸びることがあるものの、よほど希少性ある専門性を持っているか、運が良くないとアラフォーくらいからはキャリアが停滞します。

一方で、15年後に成功している人は、転職をする時に必ずしも現職からの収入アップに拘りません。希望する経験やスキルを得る為には、一時的な収入ダウンも受け入れる姿勢をお持ちです。目的を達成する為には収入や立場(職位など)について、一旦しゃがむ勇気をお持ちです。

転職における「足るを知る」アプローチ

やりたい仕事をやる為なら、収入ダウンを無条件に受け入れよう・・・なんて、お人好しなことを言いたいのではありません(笑)。

収入や職場環境などの条件面は、自分が受け入れることが出来るミニマム水準を上回っていたらヨシとする・・・ということが大切だと言いたいのです。受け入れ可能なミニマム水準とは、例えば「自分の生活(人によっては家族の生活)に必要な金額+余暇に必要な(贅沢でない)金額+能力・スキルアップの為の学習に必要な金額」を欲張らずに合計した金額です。

この水準を上回っていたら、現年収よりも下がっても、あるいは、知り合いの収入よりも低いことや、贅沢が出来ないことがあっても、ひとまずヨシとして、あとは仕事の内容や自己成長の機会などを優先して次の仕事を選択するのが、キャリア形成・選択における足るを知るアプローチです。

この場合、一旦は収入が下がりますが、仕事と会社にコミットして働いておれば、2つの理由から中長期的には収入が大幅に増加します。

1つは、目的であった経験やスキルを得て技能が上がっていることと、それを裏付ける実績も得ていることです。(ただし、2~3年で転職していたら実績までは得られませんが)

もう1つは、仕事内容や自己成長の観点で仕事を選んでいるということは、結果として好きな仕事を選んでいることです。好きな仕事は、嫌いな仕事をやるよりもずっと早く、ずっと大きく成長します。やはり「好きこそものの上手なれ」です。

継続した結果

目先のお金や理想的な職場環境を際限なく求めることを放棄して、「これ以上あればヨシとするか」という足るを知るアプローチで好きな仕事、成長出来る仕事を選択する。そして、それにコミットして成長した自分が仕事で成果を上げて実績を作ることを継続していくと、次のキャリア・ステージに上がるチャンスが巡ってきます。

こうして、次のステージに上がりそこで能力を高めて実績を上げていけば、また次のステージに上がるチャンスが現れます。こうして10年や15年、あるいは20年という一定の中期的な時間を経過すると、本コラムの前半で紹介した成功している人々の事例と、足踏みしている人々の事例のように、挽回できない大きな差になっているのです。

この足るを知るという言葉(老子の言葉だそうです)が何百年も昔から受け継がれているという事実は、そこに真理があるということかも知れませんね。

(2024年4月30日)
山本恵亮
1級キャリアコンサルティング技能士


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