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黒ソイのムニエル 生姜とシェリービネガーのソース

 魚料理は難しいです。何が難しいかというと、季節や天候によって欲しいものがあるかどうかわからないからです。養殖の鯛やカンパチは安定供給されているし、貝類は市場の生け簀の中でストックされているので安心できますが、天然の近海魚はいつもドキドキです。
 当店では、近海の天然物の魚を注文するときは、「おまかせ1箱、◯◯円で。」っていうやり方なので当日まで何が来るかわかりません。
 届いた魚は、三枚におろして、塩とトレハロースをあてて一晩おき、冷凍してストックしておきます。とくにお盆の時期や年末、台風、大雪のシーズンは全く魚が入荷しない場合があるので、飲食店の比較的暇な時期に(魚が安い時期でもある)、ある程度仕入れてストックしておきます。こういうやり方ができるのは、加熱調理を前提としている洋食屋のメリットでもあります。お刺身を前提として、なおかつ季節感を大切にした和食や寿司屋では難しいと思います。

作り方

·シェリービネガーを煮詰め、肉のブイヨンを加え、水溶きコーンスターチで軽く濃度をつける。味の輪郭をつけるようなイメージで塩をする。
·焦がしバター、おろし生姜、少量のシェリービネガーを加えソースとする。
·黒ソイに強力粉をつけ、フライパンで皮目をしっかり焼く。皮9割、身の方1割な感じ。
·小松菜をオリーブオイルでソテーし軽く塩コショウで味をつける。

 酸味の強いソースなので、冬季の提供には向かないと思われる。

追記

 魚は、黒ソイ以外でもメバルやカサゴなどの根魚、タラやアンコウ、オコゼのような底魚でもよいでしょう。鯛や平目のような上品な味の魚より、味のニュアンスが肉っぽい感じの魚の方がこのソースに合うと思います。実際、フュメドポワソンのような魚の出汁ではなく、フォンドボーやグラスドヴォライユのような肉の出汁を使用していますから。

 フランス料理関係者の方はお気づきでしょうが、この料理は東京三田にある名店「コートドール」のオコゼのローストへのオマージュです。



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