ヘブンズドアー!「デッドゾーンはあなたとともに」
デッドゾーンが終わるとき。
いちばん欲しかったものを授かる。
恐れを分かち合うと。
助けようとする他の誰かの間にできる。
信頼関係、心のつながり、絆。
愛。
ここから先にはもう進めないと。
袋小路を感じていると。
誰かに出会う。
試練をともに歩んでくれる人。
難所は、ひとりでは越えられない。
だから出会うのだ。
これまで全くできなかったことや。
してこなかったことが、功を奏するが。
ひとりでできることは全て手を打ったはず。
もう、自分の中に答えはない。
だから。
ともに歩んでくれる人に。
耳を傾けられるか。
行き詰まってどうにもならない気持ちを。
心を開いて見せられるかが。
大きく変容していく鍵だ。
最近、行動記録をつけている。
無印で買ってきた3月始まりの大判手帳。
人に言われて始めたものだ。
正直にいうと、ちょっと怒られた。
そのやり方だったら、うまくいかないでしょう、と。
色々と、サポートをしてもらって。
新しく取り入れた行動がいくつかある。
どれもが。
これまでやってこなかったこと、もしくは。
何度か挑戦したけどできずに諦めたことだった。
できるなんて思ってもみなかったけど。
できた。
私が頑張ったからだけじゃない。
むしろ自力でできることはたかが知れてる。
ともに歩んでくれた人がいたから。
ともに祈ったから。
ひと月ほどで、暮らしが劇的に変わった。
あまりにも濃厚な変化で、本当に驚いている。
こんなことって、あるんだな、と。
特に、ここ2週間。
行動記録を振り返ってみると、嵐の日々。
これまではしなかった挑戦で溢れている。
カウンセリングでは、隠れた感情の読み解きを得意としている。
心の表舞台と同時に、舞台裏を同時進行で見ている感じだ。
岸辺露伴の物語を見るたび。
私だよなと思う。
露伴先生が使っているスタンド、ヘブンズドアーも。
自分の仕事とあまり差がなく思う。
人には見せない部分に触れさせてもらう仕事だからこそ。
ときに、ああこんなに苦労されてきたか、と思うことがある。
尊い。
同時に。
舞台裏が自分の行動に、よく現れる。
イタコ系というかなんというか。
そういう性分なのだ。
専門的には「グループマインド」を見ているなんて言うけど。
嵐のような日々はきっと。
ご縁をいただく方の中にも、あったに違いない。
でも嵐は。
大きく変容していることの証拠だ。
捨て鉢になるとかやけくそになるとか。
あるいは何かから逃れようとしてとか。
人は、行き詰まると。
自己破壊行動に出ることがある。
飲み込んでいる恐れを。
誰にも打ち明けることができずに。
丸ごと、身を滅ぼそうとしてしまう。
講演でもよくお話しているけど。
昔、線路に降りたことがあった。
生きることに絶望して。
闇から抜け出せると思えなくて。
光はちっとも見えなくて。
元夫の暴力から逃げて。
払いきれなくなるほど膨らんだ借金を。
自己破産で清算して。
心を病んで働けなかったから。
生活保護を受けて暮らしてた。
なかなか恥ずかしい過去である。
でも。
勇気を持ってくれる人がいるかもしれないから。
書く。
保護費内で住める、古くて暗いアパートで。
ある日突然思った。
世界には。
幸せになれる人と。
どう足掻いても幸せにはなれない人の2種類いて。
私は後者だったかと。
誰の人生にも。
必ず未来は開けていると思っていたけど。
そうじゃなかった。
私の人生はここまでなんだな、と。
窓から見える小さな空が。
抜けるように青かったとき思った。
なんだ絶望って。
青空の色をしていたのか。
具体的な出来事や理由は覚えてない。
袋小路だけを感じていた。
何かがプツン、と切れたのだろう。
やる気が、全く湧かない。
生きる気持ちに、全くならない。
燃え尽き。
諦め。
もう答えがない。
希望もない。
心理学的には、デッドゾーンという。
本当は、大きく変容する直前。
同時に強い変化への恐れを感じている。
直接的にも、比喩的にも。
一度、死ぬような感覚がある。
生まれ直すから。
だけど、人は恐れを否認する。
先送り、引き伸ばしの逃避行動にも出る。
まあいっか、と思って数年、なんてケースもざら。
どんどん破綻していくにも関わらず。
恐れは、うまく行かない現実として現れる。
しかしデッドゾーンでは。
ひとりでどうにかしようともがき続けても。
苦しいばかり。
援助がどんなに気に食わないものであっても。
自分以外の誰かにしか答えがない。
助けを求める他に、道はないのだ。
心を開いて恐れを差し出すと。
信頼関係、心のつながり、絆が授かる。
この先も生きていけるように。
でも。
現実が苦しくて。
将来への不安と恐れに満ちていて。
もう耐えられないと思うと。
助けを求める代わりに。
自己破壊行動をとることがある。
それだけが。
残された道だと、誤解するからだ。
間違った選択。
自己破壊行動そのものが。
自分の考えだから、答えじゃない。
他人は、苦しみを理解したいと思う。
死なないで欲しい、生きて欲しいと思う。
人は、愛したい生き物だから。
デッドゾーンでは。
答えは、他人の中にしかない。
私は完全に、選択を間違えた。
死ぬより他に、苦しみから逃れる道はないんだなと。
誤解したからだ。
極楽浄土に行けるとは思わなかった。
ものすごく大それたことをしでかすようだった。
でも。
今以上にはならない人生が続くなんて。
耐えられない。
終わらせる。
人生を、自分で。
諦めに似た感情だけど。
慟哭している。
揺れててぐちゃぐちゃで。
あの気持ちの名前を、私は知らない。
一睡も出来ず駅に向かうとき。
気持ちが溢れてきた。
悔しい。
本当に驚いた。
当時は全く気づかなかった。
まだ生きたいと思っていたなんて。
でももう遅い。
ここまでなんだ。
意を決して。
泣きながら線路に降り。
電車は200m手前で止まった。
本当は助けを求めないといけなかった。
あのアパートで。
もうだめなんだ。
死ぬしかないと思うんだと。
打ち明けないといけなかった。
弱さを。
絶望を、一緒に持ってくれる人に。
私のエゴは。
間違った道を囁いた。
誰も私の話なんて聞きたいと思わないよ。
親に言ってもきっとまた怒られるだけ。
友達や知り合いだって。
重い話は勘弁と思うはず。
嫌われてしまう。
エゴはどんどん私を愛から遠ざけて。
死に魅力を感じさせた。
だけど想像してみて欲しい。
もう死ぬしかないと思っている人が目の前にいたら。
誰であれ。
生きて欲しいと思うはず。
力になりたい。
助けたいと。
誰だって思う。
人は、愛したい生き物だから。
あのときは間違えた。
だけど。
間違わなければわからなかった気がする。
線路から引っ張り上げられて助けられたとき。
死なせてももらえないのかと思った。
生きるチャンスをもらったのに。
なんて傲慢なんだと今では思う。
長い長い時間をかけて。
学び直した。
人が成長していく過程で。
進学試験があるのと同じように。
心の成長過程にも、試験がある。
学ばないといけないことを全て学び。
さてそろそろ上の学校に進むから頑張ってと。
試験がある。
試練という名の。
難しいものであればあるほど。
その人にとっては上級試験だ。
あのとき。
盛大に試験に落ちた。
恐れを刺激する引っ掛け問題の罠に。
まんまと陥った。
だけどあの間違いと救いがなければ。
学べなかったと思う。
そもそも私は。
どんくさいのだ。
落第と学び直しはありがたかった。
ずっと先に、再試験があっただなんて。
思いもしなかったけど。
20年ほどときが経ち。
2年前病床で。
手を伸ばせばすぐ隣に。
死神がいたとリアルに感じた。
全身麻痺だから手は伸ばせない。
死神だっていなかったんだと思う。
エゴが囁いたんだろう。
死んでしまったほうが、楽だよと。
意識が朦朧としていた時期に。
戦火にけぶる焼け落ちた城を見たのも。
きっとエゴの仕業だ。
あのアパートにいた頃。
私を助けたい人なんかいないと。
固く思っていた。
信仰心が篤かった。
死神への。
ヘブンズドアー!
「デッドゾーンはあなたとともに」。
でもあれやっぱり。
邪教ですよ。
目の前の人はみんな。
助けたいと思ってる。
生きて欲しいと思ってる。
つらい治療やリハビリは。
させる側が楽だなんてあり得ない。
悩む医師やナース、リハビリスタッフ。
たくさん見た。
ひとりで闘病しているわけじゃない。
もう一度生きようとする人を。
そばで見ている人だから。
大変な様子を見ているから。
思ってくれてる。
つらくないわけないよね、と。
死んでしまいたいという気持ちを。
一緒に持ってくれてる。
できることは他にないから。
その上で。
願ってくれてる。
生きて欲しいと。
苦しいのは自分だけと思い込んで。
辛いと言ったら迷惑をかける気がして。
恐怖を飲み込んで。
抱え切れなくなっていた。
だけど。
もうどうしようもなくて。
堪え切れなくて。
答えも希望も見えなくて。
いちばん恐れていることを。
打ち明けた。
絶望を、一緒に持ってくれる人に。
眠ってしまったらもう二度と。
目を開けられない気がすると。
当直していた担当医の前で。
夜中に泣いた。
私が死なない医学的な理由を。
一生懸命説明してくれる。
言葉にされなくても伝わってくる気持ち。
生きて欲しい。
やなぎさんは僕らの治療を受け入れて。
ついてきてくれているでしょう?
だから一緒に頑張ろう。
朝焼けが。
これまで見たことないほど美しかった。
青空は。
絶望の色なんかじゃない。
闇夜が明けた後に見る、幸福だ。
偶然が重なって。
今は主治医になってくれてる。
去年夏からふたつきに一度。
あのとき絶望を一緒に持ってくれた先生の。
外来に通う。
頑張りを肯定してもらう。
励ましてもらう。
無茶をするとたしなめられる。
診察室で、よく笑う。
事務員さんがいつもにこにこしながら見てる。
穏やかで温かな信頼。
嵐の2週間は。
ともに歩いてくれた人も。
嵐だったに違いない。
大変だろうなと思っていたし。
できることはあまりないんだけど。
でも。
力になろうと決めていた。
私を助けてくれた人だから。
今の私にできることを。
全てやろうと思った。
体はまだまだ動かないから。
時間がかかる。
さっとできないけど。
よぼよぼしてるけど。
ひとつひとつを丁寧に。
真心を込めて。
誠実に。
ともに歩くしできない。
だけど。
つながりがあれば。
光が差してくる。
ともに歩いてくれた人だから。
ともに歩くと決めた。
自分だって大変なのに。
私のために考えてくれたことからは。
私の回復のプロセスを。
ともに歩こうとしてくれてることがわかる。
だから。
今の自分にできることを。
全部やった。
これまでしてこなかったこと。
やってみて諦めたこと。
全部やった。
だってお互い言ったもの。
ひとりになんかさせない。
デッドゾーンが終わるとき。
いちばん欲しかったものを授かる。
恐れを分かち合うと。
助けようとする誰かとの間にできるのは。
信頼関係、心のつながり、絆。
愛。
愛の名の下になされることは全て。
人を満たす。
あなたも。
同時に私も。
2週間で回復のスピードがガラッと変わった。
あまりにも濃厚な変化で、本当に驚いている。
こんなことって、あるんだね。
ああ。
愛だったから、起きたんだね。
奇跡が。
デッドゾーンはあなたともに。
天国の門をあなたとともに。
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