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【講座でのご質問にお答えしました】心理学入門講座「感情に気づいて癒す」

2024年8月18日(日)に開催しました心理学入門講座「感情に気づいて癒す」を受講いただいた方から、いくつかご質問をいただきました(講座内、チャット欄で質問を承りました)。

ご質問には似たような傾向がありましたが、これが中心的なものかなと思えたものに、お答えをしますね。

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父親に怒鳴られて育ち、さんざん辛い思いをしているのに、娘に同じことを繰り返してしまいます。怒りのスイッチが入ると、噴火して堪えることが出来なくなります。こういう時、どうやって乗り越えることが出来ますか?

また、パートナーと衝突が絶えず、何度も仲直りしては、別れる!と言われたり、暴言や、大切にされていないと感じることも沢山あったのに、自分から別れることが出来ませんでした。
1人ぼっちの孤独な闇に戻ってしまうのが怖かったからだろうと思います。

お互いが幸せになれるパートナーシップを自分の意思で選んでいけるように
どうしたらなっていけますか?
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別の方から

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(加害/被害の二項対立を手放して選ぶ)「無害者」がわからない。
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というご質問もあり、併せ技の回答になっているかなと思います。

【やなぎあこの回答】

まずは、ご質問をいただいている内容は、テクニック(例えば「6秒間」のアンガーマネジメントなど)では、根本が変わらず、現実も変わりにくいため、継続的に心を成長させることで問題を終わらせて行く必要があることだと思っていただいた方がいいでしょう。

その上で、こんな話をしてみたいと思います。

お父さんが本当に怖くて、怒鳴られる叩かれるは日常茶飯事。
もちろんお父さんにずっと怒っているし、お父さんへの罪悪感を投影してしまう会社の上司とはいつもうまくいかないために評価が低い。いつまで経っても認めてはもらえないから昇進もしない。対人関係もうまくいかない。

お父さんは優しかったけど、私が小学校に上がった頃から、夜、布団の中で私のお尻を触るようになった。とてもびっくりして怖かったし、守ってくれるはずのお父さんにいじめられているように感じてすごく怖くなった。高校生くらいからなぜか、意味不明なくらいモテるようになったけど、いつも肉体関係を求められて関係が終わってしまう。男性と少し仲良くなると、なぜかこの人とセックスとしないといけないと思うようになった。

お父さんは、お母さんととても早いうちに離婚してしまい、ほとんど会うことはなかったけど、お母さんから散々お父さんの悪口を聞いて大きくなった。彼氏ができてもあまりうまくいかず、ずっと不機嫌さを撒き散らしているか、感情をぶつけて喧嘩になってしまうことが多い。一度結婚したけど、元夫のDVが原因ですぐに離婚をした。何人かと付き合ったけどやはり別れてしまうし、お母さんも離婚しているから、私も結婚に向かないのかなと思う。

カウンセリングで伺うお話や私の経験もひっくるめて、多くの人に共通するお話を作ってみました(したがってこれらは特定のどなたかのお話ではありません)。

ひとつ目とふたつ目は「お父さんと子ども」の関係が書かれています。お父さんが弱い立場の人(この場合は自分の子ども)を、ネガティブな感情や、性的欲求のはけ口にしています。

加害者と被害者の位置どりがよくわかりますよね。

みっつ目は「お父さんとお母さん」の関係です。お母さんはお父さんとの間で被害者だったとは思いますが、おそらくお父さんにはかなり辛辣な態度だったり、冷たかったり、感情をぶつけたり、あるいは不機嫌さを撒き散らしていると思われる側面があり、加害者的でもあります。

講座では「加害者と被害者は、永久機関で終わらない」というお話をしましたね。

加害者は、元被害者であることが多い。
辛く当たられてきたから、自分はそういうことをしないと決めていたのに、自分より弱い立場の人(多くの場合子ども)や動物をいじめて、いわゆるストレスやネガティブな感情のはけ口にしていることってありますよね。

被害者は、割と簡単に加害者に転じるのです。

被害者から転じた加害者は、別の被害者を生み、さらにその被害者も加害者に転じてさらに別の被害者を生み…と、加害/被害の二項対立は永久機関で終わりません。だからこそ、シビアな心理的な罠だ、ともお伝えしました。

親にひどいことをされてきたのに、自分も同じことをしているというお悩みは、めちゃくちゃ多いです(だから悩んでいるのはご自分だけではないと思って欲しいのですが)。私自身も、30代の頃、仕事の現場に入ってきたアルバイトの男子大学生に、なぜかひどく厳しく感情的になってしまう経験をしました。私は母がとても感情的な人でしたので、母と同じことを若い子にしているじゃないか…と自己嫌悪に陥ったことも覚えています。

講座でお話した30歳ごろの「鹿児島エピソード」の少し後だったと記憶していますが、カウンセリングを受けるまで5年ほどかかっていて、同じようなことを何度も繰り返していた、とお伝えしました。つまり「寂しさ」を自覚できないまま、「代償行動」による「自己治療」を繰り返していたわけです。

大学生アルバイトにきつく当たっていたのは、私が気づいていない寂しさが痛すぎて、いちばん中毒性の高い「怒り(=攻撃性)」を使って心を麻痺させていたのでしょう。

今考えても、当時の彼に何か問題があるわけでも、やらかしがあるわけでもないのです。なのに、彼にひどく当たってしまうのです。本当に不思議でなりませんでした。でも、ひとつ思うところはあるのです。おそらく彼は。

とても優しい子

だったはずなのです。

苦しんでいる人の、隠している苦しい感情を無意識に引き受け、自分も一緒に痛みを感じる。辛くて悲しくて痛いけど、グッと堪えて我慢をしている。私は選択を間違えていたにも関わらず、ひとりぼっちではなかったはずなんですよ。犠牲という形ではありますが、彼は無意識のうちに、当時の私の心の痛みに感情的に寄り添っていてくれたわけですから。

もし彼に会うことができたら、あの時は申し訳ありませんでしたと、心から謝罪をしたいと感じます。
許してもらえるかは分かりませんが、誠心誠意謝ろうと思います。

さてここまでのお話を、加害者と被害者どちらのポジションで読まれたでしょうか。きっと、どちらをも行ったり来たりしながら、読まれていますよね。だとしたら、気づかれたかも知れません。加害者にも被害者にも、似たような苦しみがあることに。

娘さんに当たってしまうときに感じておられる気持ちは、昔、お父さんがご質問者さんに当たっているときに感じていた気持ちと同じです。

きっとお父さんは「自分って最低だな」と思っていたことでしょう。

加害者のポジションにいるときは、自分の行い(相手から見るとひどいことをしていること)は認めにくいですし、指摘されると開き直ることも多いでしょう。しかしどんなに言っていることが正しくても、どこかに「自分って最低だな」という感覚があります。当然、自分のことは嫌いですし誰かに愛されるとは思えません。

どういう理由が隠れているのかは分かりませんが、お父さんは、うまく娘を愛せないことがとても苦しかったのでしょうね。今のご質問者さんのお気持ちと同じです。当時のお父さんのお気持ちを、身をもって追体験されておられます。相手をうまく愛せないって、本当に苦しいことを理解しておられると思います。

心を癒すための「投影」は覚えておいででしょうか。
自分では感じられない罪悪感を切り離し外の世界に貼り付けて、自分の代わりに貼り付けた人を攻撃していることでしたね。

記憶の中のお父さんを責めるとき、お父さんに対しては罪悪感を感じておられます。一般的に言えば「お父さんを救えなかった私は本当に悪い娘だ」という誤解です。感じるのが苦しいので、普段は罪悪感を切り離してお父さんに貼り付けて責めているわけですね。

本当はお父さんの娘に生まれてきただけで、お父さんは救われていますし、小さなご質問者さんを抱っこしたときに、お父さんは「自分の命より大切なものがあるよろこび」という感覚を感じておられたはずです。

その時点で十分親孝行はしているので、悪い娘というのは誤解ですが、その後のお父さんの人生によっては、子どもがひどく罪悪感を刺激されることもあります。だからこそ、お父さんを愛することをやめてしまい、つながりが切れた状態なのでしょう。

しかし、今のご質問者さんなら「あの頃のお父さんの苦しみ」を、身をもって理解することができるはずです。お父さん、辛かっただろうなと共感できたら、心がつながり始めます。講座後半でお伝えしていた、つながりに気づく、つながりを作るの部分ですね。

つながりが切れたところに、もう一度つながりを作れたことによって心が癒えはじめ、ひどかったお父さんを許してゆけますし、同時に、あの頃のお父さんと同じようにひどいことをしてしまっている自分をも、許すことが出来るのです。

加害者を許すことは、自分の心の中にある加害者の部分を許すことです。当然、自分自身も救われるのです。

自分の加害性に直面するのは勇気が要りますが、ほんの少しでいいので切り離した自分の罪悪感に直面しましょうというお話と同じです。愛の層に入るには、罪悪感に触れる必要がありましたよね。

自分が加害者であることを自覚できている場合は、自分から謝る(つながる)ことが大切です。
被害者のポジションにいる場合は、まずは怒りを手放すことが必要です。勇気はいりますが、ずっと怒り続けているなら、怒りの中毒になっているかも知れない、中毒によって心は麻痺しているかも知れない、課題に直面できなくて現実は何も変わらない、と思われるといいでしょうね。

その上で、ちょっとこういうことをイメージしてください。

娘さんに当たっているときって、娘さんが許してくれるとは思いにくいと思うんです。小さいときに、ママ、いいよと許してくれても、大きくなったらずっと恨まれそうだ、なんて感じるかも知れません(自分がしてきたことが映し出されているのですが)。同じように、お父さんも、ご質問者さんから許してもらえるとは思いにくいのです(ご存命であろうとなかろうと)。

しかし、ご自身で問うてみて欲しいんです。

被害者は簡単に加害者に転じるのでしたよね。
お父さんを憎み、恨み続けることで、私はまた加害者に転じようとしているのではないだろうか、と。誰かを傷つけないと復讐できないと思ってはいないか、その生き方で、幸せは持続可能だろうか、と。

加害/被害の二項対立という永久機関から脱しようと、決められるといいですよね。

挑戦には、心理的な成長を伴います。いわゆるノウハウの類ではどうすることもできません。身を削りながら変わってゆく必要がある。だからこそ、ご自身が芯から変わっていこうとする勇気と、チャレンジ精神と、時間が必要です。
一人で頑張ろうとすると苦しすぎたり、時間がかかりすぎて、課題からステップアウトしたくなるので、カウンセラーを頼ることをお勧めします。

被害者のポジションから、加害者を許すことができたとき、うまく愛せなくて苦しんだ人と心がつながって、よろこびが溢れてきます。うまく愛せなかった人を、愛せるよろこびを感じます。双方にあった罪悪感が浄化され、愛が入ってきて世界が変わります。講座では、いちばん最後の「お姉さんと私」のエピソードで理解していただけると思います。

※『傷つくならばそれは「愛」ではない:24日目』を当てはめたエピソードトークでは、私があえて謝罪することで、お姉さんが私を許し、同時にお姉さん自身が許されている形になっています。

加害/被害の二項対立を手放し、攻撃性を選ばず、あくまでもつながりを選ぶことにこだわる「無害者」に成長することは、加害/被害の意識レベルから、さらに高いレベルに心が成熟することになります。愛の層に心を置き続けられるようにベストを尽くすという感じでしょうか。

心が成長することによって、いつの間にか、これまで怒ってしまっていた娘さんに対しても、気にならないことが増えたり、あるいは、不思議なことに、娘さんが落ち着いて、変化してくる可能性もあります。

親の孤独に反応し、罰せられることで親の心とつながろうとしたり、親を感情的にひとりぼっちにさせないという手段は、子どもは本当に無意識によく使うので、ご質問者さんが切り離してしまっているお父さんへの罪悪感を浄化することができたら(=お父さんを許すことで切れたつながりをもう一度つなげることができたら)、孤独が消えるために、共鳴している娘さんの反応が落ち着く、という「仕組み」です。

また、パートナーシップには、親との間で乗り越えられていない問題が現れます。

パートナーは自分の無意識と言われるくらいなので、加害的なパートナーは、自分の隠れた加害性を表していると捉えてみるとよいです。何か地雷を踏んでいたり、気が付かないうちに辛辣になりすぎているために、パートナーが加害的になっていることがよくあります。

自分では自覚できない切り離している罪悪感が、パートナーを通じて現れているのですが、ここは成熟さを持って「自分も相手を攻撃している」と気づき受け入れる勇気が必要です。「お姉さんと私」のエピソードトークで、お姉さんからすると、悪気はなくても私はお姉さんの世界を踏みにじっていたことと同じですね。

「自分も相手を攻撃している」と、切り離した罪悪感を取り戻せると、パートナーが自分に向けてくれていた愛の眼差しに気づけるようになるはずです。謝罪をしてみると、悪気なくであれ、私はお姉さんの世界を踏みじっていたにも関わらず、お姉さんは限界ギリギリまで私と仲良くしようとしてくれたことに気づきました。同じように、自分の態度を振り返って謝罪する勇気と成熟さを持つと、パートナーにも変化が出るでしょうね。お姉さんが変化したように。

切り離して投影した罪悪感を取り戻せると、双方ともに愛の層に入れます。

同時に、これまでのパートナーシップでは、ご質問者さんが、娘さんと同じように、あるいは昔の私が当たったアルバイトの彼のように、相手の孤独に反応して、自分が罰せられることで、相手をひとりぼっちにさせないというケアの仕方をされてきたのではないでしょうか。お父さんとの関係がそのまま、パートナーシップに現れているわけですから、やはりお父さんとの関係を洗い直し、親を許す成熟さを身につけて成長されることが、課題になってくるでしょうね。

長々と書きましたが、参考になりましたら幸いです。

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近日中にまた講座を担当させた頂くことになりましたので、次回もどうぞお楽しみに。

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「もっとラブラブに」『恋と仕事の心理学』担当執筆
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