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2022年上半期映画ベスト10

 過去2年間の映画公開延期に次ぐ延期……の時期を乗り越え、ようやく劇場に日常的な活気が戻ってきたなあと思った2022年。上半期に観た映画の中から、ベストを10作品選びました。
 以下、鑑賞時期順です。


アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド

 博物館で楔形文字の研究をしている独身女性・アルマが、自分の理想通りの男性(の見た目をした)アンドロイド・トムを恋人にする話。
 と言うととても陳腐に聞えるけれど、そんなことはない。特に、アルマのトムに対する認識が興味深く、彼女の真面目さ・賢さ、そして過去の傷が故の葛藤が切ない。
 ちょっと冴えない元カレの上位互換みたいなトムの姿には、演者の力量はもちろん、キャスティングの腕前を感じた。


フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊

 最初の情報量の多さに圧倒されたけれど、「雑誌の最終号(編集長追悼号)を映画にした」っていう映画の構図を理解したら問題なし。お洒落な色味、左右対称の構図、ちょっとシュールな笑いどころ、実力派ぞろいの演者たちが紡ぐ短編集。単なるお洒落映画とは一線を画した、飽きの来ない108分だった。
 一瞬しか顔が映らない役でレックス・ロウザーが出てきたのには驚いた。


スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム

 スパイダーマンシリーズ、過去作含めての集大成と言っても過言ではないのでは。歴代スパイダーマンたちが出来なかったこと、未練を抱えていたことまでも、MCUスパイディは見事に浄化する……。胸が高鳴る展開だらけ。今後も楽しみ。


ロミオとジュリエット

 ナショナルシアターならではの、コロナ禍の劇場で撮影された『ロミオとジュリエット』。舞台裏の景色まで活用しつつ、今となっては誰もがオチまで知っている『ロミオとジュリエット』を新鮮な作品として見せてくれた。
 「そこが舞台である」ということを常に意識しての鑑賞になるので、彼らの人生は何遍も繰り返される「物語」であり、「何度演じられても必ず死ぬという運命の中でしか生きられない存在」だというのを、メタ的な視点で見ているような不思議な気持ちになった。


林檎とポラロイド

 彼は本当に記憶を失くしていたのか? 観る人によって解釈が異なりそうな、静かな良い映画。
 「人が突然記憶を失う現象が頻発している」そして「治療法はないが社会復帰プログラムはある」というSF的な設定だけど、詳細を押し込まずさらりと流し、要らぬノイズを省いて物語をきちんと見せてくれたのが心地よい。主人公についても、語らず想像させる部分が多いのに不明点が邪魔にならなくてとても好き。


インフル病みのペトロフ家

 「……っていう夢を見たのさ!」な映画。インフルエンザの熱に浮かされた主人公が、ふらっふらで過ごす数日間(多分)。ロシア版『脳内ニューヨーク』または『エターナル・サンシャイン』なカオスぶり。カオスに見えてちゃんと筋は通ってそう。
 ドストエフスキーの小説で感じる、「ロシアの人の人生、クソデカ感情がすごいな」っていう雰囲気を映画で感じられて興味深かった。そしてエンディングで流れたロシア語のラップ、格好良かった。


ファンタスティック・ビーストとランブルドアの秘密

 物語の中心にちゃんと魔法動物が居て、それが鍵になってるのが『ファンタスティック・ビースト』らしさって感じがして好き。前作は少し暗かったのと、ハリーポッター知識がないと難しいところもあったので。
 配役の変更で話題になったグリンデルバルドも、マッツ・ミケルセンが好演していた。「カリスマ性を語る説得力」という点ではジョニー・デップの方に軍配が上がるかもしれないけど(本作の内容的に、きっとジョニー・デップありきだったんだろうなと思う)、全体的に「魅力的だけど底知れぬヤバい悪役」という点で、素晴らしいマッツ・グリンデルバルドだった。


ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス

 本作については、こちらの記事でズタボロになりながら感想文を書いているので割愛。割愛しないとキリがない……!


息子の面影

 好きか嫌いかで言うと確実に好きではないんだけれど、この映画を無視して2022年上半期は語れないと思った。
 これが現代の出来事なの……? と疑いたくなる事実が多いけれど、監督曰くメキシコで実際に起きていることらしい。苦しい、辛い。闇に見た息子の面影が、どんな形をしているか……。
 観た後かなり気持ちが落ち込むので、この映画を観た後は友達と甘いものでも食べて欲しい。


PLAN75

 本作も、「好悪と言うよりこれを無視して2022年上半期は語れない」映画のひとつ。高齢者映画大好きな私の心をズタボロにした本作の感想は、以下の記事にて。


 今年も良い映画がたくさんで楽しいです。下半期も、早く観たいな! と公開を待ちわびている作品が色々あるので、元気に観賞していこうと思います。



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© 2022 Aki Yamukai

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