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音楽、どこで聴く? ~私の作品紹介(小説)

 私は音楽好きですが作曲は出来ません。その代わり、私が書く小説にはよく音楽が登場します。
 そこで今回は、“どんな音楽がどこで流れているか”の観点で拙作をご紹介します。まだまだライブに気軽に参加出来ない時期ですし、拙作内に出てきた音楽と場所について振り返りつつ、実在する音楽を聴ける場所へ想いを馳せてみましょう。
 あなたが一番行ってみたい/演奏してみたい場所はどこですか?


●讃美歌を礼拝堂で

「アオイのすべて 〜第四十一代司教に係る司教記録本」

【作品ジャンル】異世界ファンタジー、ヒューマンドラマ、ドキュメンタリー/長編

【あらすじ】
 瞳に浮かぶ紋によって、階級が決まるクアドラートの街。新聞記者のエミリアは、司教への五日間の密着取材をする中でクアドラートの隠された歴史を紐解いていく。

【音楽について】
 物語の舞台・クアドラートの街は五つの地区に分かれていて、その真ん中に位置する零地区は、クアドラートの住民にとって精神的・政治的……様々な面で支柱となる地区です。そんな場所にある教会の礼拝堂で聴く讃美歌。さぞや美しい音色でしょう。
 ここにあるのは、街で一番いい音が鳴るパイプオルガン。司教の説法がある日は、説法とパイプオルガンの音色や讃美歌を求め、どの地区からも住民がやってきます。
 余談ですが、私は観光客として海外の教会に行くのが好きです。個人的には神様は居ても居なくてもいい派ですが、教会の中でパイプオルガンが演奏されていたり、誰かが歌っていたりするのを聴く時だけは、「こりゃあ音楽の神様、居てもおかしくないな!」って気持ちになるんですよね。不思議。

【掲載場所】カクヨム


●エレクトロニカを体育館とクラブで

「ティーンズ・イン・ザ・ボックス」

【作品ジャンル】恋愛、SF、学園/中編

【あらすじ】
 パーティで出会った、内気な少女と顔のない少年。たった一度の偶然で、16歳のささやかな青春は動き出す──。苦しい過去と穏やかな今を繋ぐ、びっくり箱のような日々を生きる、若者たちの物語。

【音楽について】
 学園祭ホームカミング最終日の夜、体育館をクラブに見立ててDJが回しています。ですが、学校かつ生徒相手なので、あまり通好みな音楽は流せません。ここでのDJの役回りは、ヒットチャート常連曲で盛り上げること。DJも大変だし、音楽好きな生徒は物足りなさを感じそうです。(そうした不満がある人は、後述の“クラブ・ジャック”へ向かいます。)
 ホログラムやミラーボールで見た目は装飾されていますが、結局は体育館。音は良くないでしょうね……。低音を強くしすぎると窓がビリビリ言いそうです。

 一方、街の中にある“クラブ・ジャック”は、若手DJたちが出演している会場。正式名称は“クラブ ジャック・イン・ザ・ボックス”といいます。
 出演者・客層が若者のため、悪童たちの遊び場といった雰囲気。学園祭とは違い、DJたちはオリジナル曲を演奏したり、仲間の曲を流して揶揄からかい合ったりと自由奔放です。まさに、ジャック・イン・ザ・ボックス(びっくり箱)の名の通り、何が出て来るかわからない、インディーズの中心地。もしかしたら、大手レーベルのスカウトマンなんかも来ているかもしれません。
 ステージ裏には、こっそりステージやフロアを眺められる関係者席がありますが、スピーカーと同じ方向を向いているので、フロアで聴くよりやや音質は下がります。高級なVIP席と言うより、友達を呼んで盛り上がる場所に近いです。

 本作制作の際には、Daft Punkのライブ映像や音楽をたくさん摂取していました。その過程については、カクヨムのエッセイ『Daft Punkと拙作「ティーンズ・イン・ザ・ボックス」』にて記載しています。

【掲載場所】カクヨム


●ポップスをライブハウスで

「ディスプレイ越しに魔法をかけて」

【あらすじ】
 宮北真衣香、高校1年生。最近の悩みは、席替えで隣になった、クラス1苦手な高瀬弘宜のこと。親友おすすめのバーチャルアイドル・オズワルドに励まされて努力しても、2人の会話はぎこちない。ちょうど同じ頃、アルバイト先の書店で、真衣香は重大な役目を任されて……。

【音楽について】
 作中のバーチャルアイドルの歴史に残る規模のライブと言うことで、新木場スタジオコーストやZeppなんば前後の収容人数を想定しました。もしかしたら、今回出てくる会場の中で一番多くの人に馴染みがある規模感かもしれません。
 作中では、会場前でライブ記念の企画を色々やっています。バーチャルアイドルと話せるブースや、特番を配信をしているレポーターの姿もあり、とても賑やかです。
 今思えば、大阪城ホールや武道館レベルの会場にすればよかった気がしますが。多分、作品を考えていた当時のバーチャルアイドル/バーチャルライバーの状況的に、一番リアリティのある規模感を選んだのでしょう。

【掲載場所】現在非公開


●何かの歌を屋根裏部屋で

「寂しさしのぎの退屈に」
【ジャンル】SF、ファンタジー、大人のための童話/短編
【あらすじ】
 これでもう、退屈はしないはず。だけど──
 夜の裏路地で、機械の頭を拾った“私”。それを持ち帰った“私”は、やがて気付いてしまう。

【音楽について】
 最後は、表紙のないこちらのお話を。私はなぜか、「屋根裏部屋」で「音楽を聴きながら」暮らす「修理工」が「顔のないものに出逢う」というモチーフが好きなようです。このお話もその一つ。
 音楽ホールの屋根裏に暮らす主人公は、いつも足の裏で音楽を聴きながら生活しています。もちろん、ここは屋根裏なので客席のように良い音質で音楽が聴けるわけではありません。だけど、主人公の生活は音楽とともに始まり音楽とともに終わる(つまり夜型の生活)……。
 今思えば、映画『シェイプ・オブ・ウォーター』の主人公は映画館の上にあるアパートで生活していましたね。拙作の場合は屋根裏なので、もっと屋根は低くて使い古された印象です。
 そんな主人公が、拙作で出逢う「顔のないもの」と音楽がどう関係するのかは、読んでからのお楽しみ。2ページの短編ですので、お気軽に屋根裏を覗いてみてください。

 また、本作の音楽についてはカクヨムのエッセイ『Editorsと拙作「寂しさしのぎの退屈に」』にて記載しています。

【掲載場所】現在非公開


 あなたにとって、どこが一番行ってみたい/演奏してみたい場所に近かったでしょうか?
 こうしてみると、結構色んな場所が拙作に登場しているなぁと思うと同時に、「早く色んな場所で音楽を聴きたいな」としみじみ思いました。
 以前のように気軽に会場へ足を運べない・海外からアーティストが来日出来ない……なんて色々不便なことが多い状態は続きますが、物語の世界くらいは、好きな場所で好きな音楽を楽しみたいものですね。


※表紙画像は、外部サイトよりお借りした画像を利用規約の範囲内で加工したものです。

※本エッセイは、カクヨムで公開中の以下を加筆修正したものです。


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© 2022 Aki Yamukai



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