本とテーマソング 一箱古本市に添えて 前編
読書好きの方であれば、音楽を聴いた時に「あれ? この曲、あの物語と合いそうだな」と思ったことがあると思う。少なくとも私にはそう言う経験があって、あの解像度がジワっと広がったような感覚が気持ちよかったりする。
今回の一箱古本市は、あのジワっとした感覚をほんの少しでもお裾分けできたら、というコンセプトで出店させて頂いている。
ボクたちはみんな大人になれなかった 燃え殻
テーマソングは あの頃/さよならポニーテール
https://www.nicovideo.jp/watch/sm31652955
あの頃見ていた輝きは、きっと今も変わらずにそこにあるのだと信じたい、そんな切実さ。
いたいのいたいの、とんでゆけ 三秋縋
テーマソングは サーカスナイト/七尾旅人
地獄のような場所でもサーカスを演じるように彼らは踊っていて、それが楽しそうでどうにもままならない気持ちにさせる。
さよなら妖精 米澤穂信
テーマソングは 心に穴が空いた/ヨルシカ
自分自身の未熟さ、愚かさはいくら呪っても足りることはないなあと。
終点のあの子 柚木麻子
テーマソングは Friend Ship/星野源
どれだけ傷つけあっても、一度は心を通わせあった人が今日もどこかで生きている。そう思うだけで心休まる時ってあるよね。
もし僕らのことばがウイスキーであったなら 村上春樹
テーマソングは Whyskey/Maroon5
9月の終わりくらい、夏の暑さがほんの少し和らいでくるとウイスキーが飲みたくなる。飲み方はストレートからのトゥワイスアップで。
国境の南、太陽の西 村上春樹
テーマソングは 僕はここにいる/山崎まさよし
星の数ほど女はいるけど、君じゃないとダメだという青臭さ。僕を知ってほしい、見てほしいという切実さ。
小説 言の葉の庭 新海誠
テーマソングは Rainy Girl/HoneyComeBear
雨の匂いで思い出す風景がある。雨の匂いで思い出す人がいる。匂いの記憶は五感のどれよりも遥かに強烈に残る。
メイプル戦記 川原泉
テーマソングは Strawberry Milk Ships/さとうもか
高校野球にしろプロ野球にしてもそこにはドラマがつきもの。でも今はそんなことを忘れて純粋に野球観戦を楽しみたいんだ。
君の話 三秋縋
テーマソングは もうじき夏が終わるから/n-buna
夏が来ると思い出す人がいる。夏の始まりに出会い、夏の終わりにいなくなってしまったあの人のこと。
世界は救えないけど豚の角煮は作れる にゃんたこ
テーマソングは いなくていいひと/たま
心がやられて本が読めなくなった時に唯一読めた本。同じように、音楽の全てを白々しく感じてしまった時に、この曲の「リュックサックの中身はお茶碗とお箸一組、これさえあれば食べていけるんだ」というフレーズを聴いて救われた気がした。
マイブロークンマリコ 平庫ワカ
テーマソングは 思い出がカナしくなる前に/さよならポニーテール
最近祖父が亡くなり、大往生というのもあり落ち着いて見送れたのだが、納骨の日にその遺骨を持ち上げた時に、その八十数年分の重みを感じ急に寂しさが襲ってきた、ということがあった。シイナの感じたマリコの重みはどれほどのものだったのだろうと考えている。
しあわせになりたい 売野機子
テーマソングは 2121/People in the Box
音楽好きの端くれである私が一番悲しく思うのは、自分が死んだ後に生まれた音楽を聴けないということ。技術が進化した100年後の音楽はきっとAIが作っていて、進化しない人類はそれを聴いて今と同じように涙を流す、多分。
櫻の園 吉田秋生
テーマソングは ハル/Mr. Children
ある知り合いが浮かない表情をして「私、来年になったら今の彼氏と結婚するんだ」と言ってきた。私は「そうですか、おめでとうございます」としか言えなかった。あの表情の意味について数日間考えに考えた結果「マリッジブルー」という言葉で納得した。
そんなことを思い出していた。結婚する人が100人いれば100通りの悩みがあるわけで、それを「マリッジブルー」の一言で括るのは横暴だよなと今にして思う。
じごくゆきっ 桜庭一樹
テーマソングは 幸男/橋本絵莉子&波多野裕文
昔、付き合った人がいた。あまりに幼かった私は、今にして思うとその人に対して不誠実なことばかりしていたように思う。
趣味や恋愛や友情、そういった人生における大事な物事の区別がついていない中でいろんな無茶をしながら幸せに生きていたように思う。
今はどうだろう。少しは成長していると思いたい。
阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし 阿佐ヶ谷姉妹
テーマソングは ごはんができたよ/矢野顕子
どんなに楽しくても、どんなに辛くても、どんなことがあっても明日が来る。そんな当たり前がこのエッセイには詰まっている。でも、こんなレビューも大袈裟に聞こえてしまうほど、のほほんとしている。
以上、前編は終わりです。続きは後編で。
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