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本についてつらつらと 古本市に添えて①


○機龍警察シリーズ 月村了衛


 世の男の子の大半が大好きであろうロボットアニメ。小さな頃の私はそういったロボットアニメが嫌いだった。
 とにかくひねくれていて一回転して前を向いているようなガキだった私は、父の本棚にあった浅田次郎を読み、ディープパープルを聴いて過ごしていた。そんな私は子どもが見るようなロボットアニメを馬鹿にしていた。
 そんな孤高な子どもでもやはり寂しさは感じるもので、小中学生の頃は友達の話すガンダムの話題について行けずにどこか孤独感を感じながら過ごしたものだった。
 そんな私がロボットアニメの面白さに初めて気づいたのが、高校生の頃にバイト先の先輩に勧められた「天元突破グレンラガン」を見た時だ。その先輩曰く「グレンラガンはロボットアニメじゃない、心の繋がりだ」。
 今、この「機龍警察 自爆条項」を開くとその言葉が思い出される。龍機兵を通してライザと緑の心が繋がっている。ロボットを通じて私はあのバ先の先輩の声を、言葉を思い出す。

 テーマソングは 銃口/君島大空 で


○メイプル戦記 川原泉

 十年ほどぶりに実家に戻ってきた。夜になると父がナイターを見て地元球団を応援している。勝てば機嫌が良くなるし負ければ不機嫌になる。どうして不機嫌になってまで野球なんて観ているんだろう。こんな父を子どもの頃から見ているせいでスポーツ嫌いになった気さえしてくる。
 十年も経つと自分が実家でどのように過ごしていたかも忘れている。自分の家という気が全くしないし、空気が合わずに喘息まで起こす。就職する目処も立たず何もする気が起きず怠惰に過ごしている。あぁ……私はいい歳して何をやっているんだろう……
 夜中、喘息で息苦しくて目を覚ます。明日病院に行こうなんて考えながら街を散歩する。公園がある、広場がある。小さい頃の私はここでどんな風にして遊んでいたっけ。
 そうしていると、ふっと思い出したことがあって家の物置を探る。出てきたのはグローブとバット。そうだ、あの広場で野球やって遊んでたんだ。
 いろんなことを忘れてもきっかけさえあればまた思い出せる。ならそれでいいんじゃないかな。どうだろう。
 私は今ナイターを観ている。地元のチームは応援しない。ここは帰ってくる場所であって、いつまでもいる場所ではないと思うから。
 
 テーマソングは Strawberry Milk Ships/さとうもか で


○マイブロークンマリコ 平庫ワカ

 最近、祖父が亡くなった。その半年後に、後を追うように祖母が亡くなった。悲しくもあるし寂しくもあるが、二人とも大往生だったのでとても穏やかな気持ちで見送ることができた。
 納骨の日、祖父の遺骨の重みにその八十数年分の重みを感じた。人間は本当に生きて死ぬだけなんだ。普段、自分は死なないと思って生きているけどやっぱり死ぬんだと改めて考えさせられた。その時に初めて悲しみが湧いてきた。
 シイナの抱えるマリコの重みはどれ程のものだったんだろう。その二十数年分の重みを思いながら読み返している。

 テーマソングは 思い出がカナしくなる前に/さよならポニーテール で




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