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自傷


自分を傷つけることを覚えたのは高校生の頃だった。左手の手首を右手で強く握る。爪を立てて。


頭の中にかかった霧のようなものが、すーっと消えていく感覚。そうしている間は、他に何も考えなくていい。


耳を塞ぎ、声にならない声で叫ぶ。枯れるまで。


「邪魔、悲劇のヒロインぶんな」私を嘲る声は何も聞こえない。


私は今、どんな顔をしているのだろう。


醜い。


暗闇の中で、耳を澄ます。引き戸が開くことがないよう、片足を押しつけたまま。


少し冷静を取り戻した私はまた爪を立てる。


誰かに気づいて欲しかった。


「みんな一緒だよ」っていう「みんな」と私は違うんだって、知らしめてやりたかった。


哀れ。


それでも私はヒロインだ。





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