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映像だからこそ子どもたちの成長を肌で感じる「映像発表会」〜FilmEducation in 飯綱町④

F.ラボアンバサダーの高村ミチカです。小学校教員を11年経験後、現在はフリーランスライター/編集として活動をしています。元教員だからこそ、学校と学校の外側をつなぐ学びの結び目のような存在でありたい。「本物の学び」を引き出すお手伝いをしたい。そんな思いで、F.ラボアンバサダーを務めています。

F.ラボは現在、小中高大や特別支援学級の他、フリースクールや塾など30以上の教育機関と連携して、60以上のワークショップや授業プログラムを実施しています。

今回取り上げるのは、このnoteでも何回か紹介している長野県にあるフリースクールOZ Fieldの実践。OZ Fieldでは年間を通じて映像制作の活動に取り組んでおり、前期・後期の終わりにそれぞれが制作した映像作品を保護者に向けて披露する「映像発表会」が行われます。その様子をレポートしていきます。

映像発表会は、「できた」を実感する機会

「映像発表会」は、2021年の開校当初から継続して取り組んでいる活動です。3年目となる今回の発表会では、自分自身を振り返る「じぶん通知表」や季節の変化を非言語表現で表した「二十四節気七十二候」、旅行の記録「思い出旅行まとめ」など、それぞれが制作した映像を発表しました。

映像発表の様子

カーテンを閉め、窓を段ボールで塞ぎ、電気を消す。真っ暗にすることで、非日常空間を演出できます。さながら上映会のような雰囲気に、保護者の方はもちろん、子どもたちも熱心に鑑賞をしていました。

作品上映後には、保護者の方からフィードバックをもらいます。
「丁寧に作品がつくられていてよかった」
「音楽がユーモラスでいいね」
「いろんな場面が一つの作品にまとまっていたのが感動した」

さらにカントクからもフィードバック。
「インタビュー映像の部分で、内面がよく伝わっていたね」
「自分の思いを伝えるところは、カメラ目線で伝えていていいね」
「最後のテロップ、自分の意志表明になっているね」

ポジティブなフィードバックをたくさんもらって、笑顔の子どもたち。今では堂々と話している子どもたちですが、発表会を始めた3年前は、恥ずかしくて隠れて出てこれなかったり、声が小さかったりとどこか自信なさげな様子でした。しかし、活動を続けていくうちに、段々と「できた」「伝わった」という経験が積み重なり、自信をつけていくことができたのです。そんな子どもたちの姿を見て、ポジティブなフィードバックを他者から受ける機会に価値があると感じました。

OZ Fieldを運営するNPO法人ライフワーク・レインボーの出浦洋子さんは次のようの話をしてくれました。

「これまでの経験から自己肯定感が低くなってしまったお子さんも、認めてもらったり褒めてもらったりした経験の中を通して、段々と気持ちがほぐれ、本来持っている温かい優しい気持ちや余裕が出てきます。そのことがOZ Field全体の活動に良い影響を与えていると感じています。映像の授業がエッセンスとして大きな役割を担ってくれているんです」


生の姿だから声だから伝わることがある。映像の力を感じる2つの作品を紹介

ここで、今回発表された2つの作品を紹介します。2つとも年間PBLとして取り組んでいる「じぶん通知表」の作品。「じぶん通知表」とは、日々の生活の記録を、保護者に活動の様子や成長の姿を伝えるために、子どもたち自ら構成を考え、編集し、映像にまとめたものです。

「じぶん通知表」をつくる時には、

・誰に伝えたいのか
・自分は何を見てほしいのか
・相手にどうなってほしいか

こんなことを考えながら、構成表を作ります。構成表を元にしながら、映像を組み合わせて一つの作品にしていくのです。

構成表:伝えたいことに合わせて並び替えて構成を考える

▼「じぶん通知表」の詳しい取組については、以前にも記事にしているのでこちらも併せてご覧ください

1つ目に紹介するのは、いろはくんの作品。

前半は、料理や工作、サッカーなど普段の楽しく活動している様子が流れます。

友達と笑いあいながら活動を楽しんでいる姿、
真剣に勉強に取り組む姿、
もっとどうやったら工作がうまくいくだろうと試行錯誤している姿……。

映像だからこそ、ちょっとした表情の変化、立ち振る舞い、声のトーンなど非言語表現を通じて、子どもの生の姿が声がダイレクトに伝わってきます。


後半はインタビュー形式で、後期を振り返ります。

「自分は、学校で人に話しかけられないって感じだったんで、友達ができなくなっちゃったんです。でも、そんなときにフリールクールを見つけて、6個くらい見学してOZに辿り着きました。

友だちができて、すごくうれしかったです。友だちと対戦とかほんとは苦手なんですけど、でも友だちとだから楽しくできて。だからOZは楽しいと思って、ここにしました。

とても大切な友だちができました。OZに来なかったらこんなことはできなかったからとてもいい体験だったと思います」

一生懸命紡ぎ出された言葉の中に、大切な友だちへの想いが溢れ出ています。
インタビューの場面の後、友達とのツーショットで作品を締めくくるところにも、こだわりを感じました。


2つ目に紹介する作品は、みずほさんの作品です。
いよいよ4月から高校生になるみずほさんは、OZ Fieldでの3年間を振り返りました。

感覚過敏で細かな手作業が苦手な特性のあるみずほさん。OZの3年間で、はさみや包丁が上手に使えるようになったと自身の成長を振り返ります。また、積み木の積み上げや玉入れ、ビー玉をスプーンですくう作業など、作業学習での頑張りを映像で伝えました。

最後に、これからの高校生活に向けて、
「勉強を頑張ったり、またOZに遊びにきたりして楽しい生活にしたいです」
と語った後に、次のように締めくくりました。


3年間過ごしたOZへの感謝の気持ちがここに表れているのではないでしょうか。

この言葉に至るまで、日々の記録を紡いでいくドキュメンタリー形式で表現しているからこそ、成長を肌で感じることができる。派手な演出でなくても、心動かされる作品になると感じました。

▼3年間映像制作の活動にひたむきに取り組んできたみずほさんの過去の作品はこちらからご覧いただけます

年間で取り組むからこそ見える、子どもたちの成長

カントクは、今回の映像発表会を通じて、子どもたちの表現の幅が広がっていることを実感したと言います。

「どの作品も、いわゆるYouTube作品とは一線を画す表現になっています。テロップや効果音など派手で説明的な演出に囚われず、何が伝えたいのか本当にそれが伝わる内容になっているのかを考える子どもたち。自分の伝えたいことに合わせて、構成を考えて、映像を取捨選択し順序を考えて編集をするそのプロセスが、子どもたちの中に染み付いてきているのです。年間で関わり、映像制作の活動を繰り返しやっているからこその成長なのかもしれません」

今年度の発表もますます楽しみです。


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