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FilmEducation in 飯綱町②〜日々の生活の記録をもとに子どもがつくる「じぶん通知表」〜

F.ラボアンバサダーの高村ミチカです。小学校教員を11年経験後、現在はフリーランスライター/編集として活動をしています。元教員だからこそ、学校と学校の外側をつなぐ学びの結び目のような存在でありたい。「本物の学び」を引き出すお手伝いをしたい。そんな思いで、F.ラボアンバサダーを務めています。

F.ラボは現在、小中高大や特別支援学級の他、フリースクールや塾など20以上の教育機関と連携して、40以上のワークショップや授業プログラムを実施しています。

今回のシリーズでは、その中でも、長野県にあるフリースクールOZ Fieldさんでの実践をご紹介。1回目は、短期PBLとして取り組んだ「地域の魅力が伝わるCMを作ろうプロジェクト」を取り上げました。

シリーズ2回目の本記事では、年間PBLとして取り組んでいる、日々の生活の記録をもとに子どもたちがつくる「じぶん通知表」についてお話していきます。


映像を活用して通知表をつくる!?「じぶん通知表」

「じぶん通知表」とは、OZ Fieldでの日々の生活の記録を、保護者に活動の様子や成長の姿を伝えるために、子どもたち自ら編集し映像にまとめたものです。2021年の開校当初から継続して行っている活動です。

前期・後期それぞれの終わりに、保護者を招いた「映像発表会」を行い、それぞれが制作した映像を披露します。

子どもたちの成長を映像を通じて伝える「映像発表会」

一般的な通知表では、言葉だけで子どもたちの姿を伝えますが、言語表現だとどうしても限界があります。「子どもの生の姿を見せることができる」のが、映像表現の大きな強みです。

普段どんな活動をしているのだろう、友達とは仲良くやっているのかな、楽しくやっているかな……といった保護者の方の知りたいことを、映像を使うことで、その子の表情や振る舞いなど非言語表現を通して伝えることができるのです。

一方で、映像作品は作り手の意図によって制作されたものであることだということを、子どもたちにも保護者の方にも、しっかりと伝えるようにしています。「じぶん通知表」の場合、子どもたちが保護者に「伝えたいこと」に合わせて、撮影をし素材を選び編集をしています。そこに、作り手の「意図」が生まれているのです。

年間を通して映像制作の活動に取り組むことで、情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、作り手の意図が介在していることを体感することができる。この経験は、デジタル技術の利用を通じて社会に積極的に関与し参加することを目指す「デジタルシティズンシップ教育」にもつながると考えています。


素材集め、構成表づくり、編集……
「じぶん通知表」ができるまで

子どもたちは、「じぶん通知表」の制作のため日々の活動の度に映像を撮影しています。日常的に、映像制作のための素材集めを行っているのです。撮った映像は「みてね」という写真・動画を共有できるアプリで管理。みんなで活用できるようにしています。

撮影期間も含めると全部で半年ほど。発表会が近くなったら、1ヶ月ほどかけて映像制作を行います。

まずは構成表づくりから。

<構成表をつくるステップ>
①誰に見せるか
②その人は何を見たがっているのか
③自分は何を見せたいか
④映像を選ぶ
⑤順番を考える

構成表の段階で、一度カントクからフィードバックをもらいます。
ここで大切なのは、自分が伝えたいことに合わせて、映像を選んだり順番を考えたりすること。①〜③の質問に立ち返りながら、自分がどんな映像を作りたいのかを具体的にイメージしていくのです。

編集する前に、構成を考える

台本が完成したら、次は編集。InShotやCapCutなどのアプリを使用し、構成表にしたがって、映像を並べたりテロップやBGMを入れたりします。これまで短期PBLで学んできたことを生かして、インタビュー映像やナレーションを活用したりする子どもも。

ある程度映像がまとまったら、さらにカントクからのフィードバックをもらいます。

「映像の順番を入れ替えてみると、より伝わりやすくなりそう」
「こういう表現もあるんじゃないかな」

カントクが正解を持っているわけではありません。それぞれの子どもたちが伝えたいことが、より伝わるようにするにはどうしたらいいか、より良い表現にするためのアドバイスを行います。

どうやったら「伝わる」かを追究
試行錯誤の過程にこそ学びがある

フィードバックをもらい映像を改善をする子どもたち。一回で直して終わり、ではなく何度も繰り返し改善をしていきます。大体5回ほどの修正を通して、ようやく完成。

どうやったら、伝えたいことが「伝わる」だろうか。
初めてみるお家の方にも分かる映像になっているだろうか。

明確な意図をもって、素材を選んで、つないだり入れかえたりする。テロップやBGMをつけて編集をする。それを繰り返し行っていくことで、どんどん完成度が高まっていきます。これこそが、まさにクリエイティブな学びの機会なのです。

次回は、FilmEducation in 飯綱町シリーズ、いよいよ最終回。Film Educationを通した子どもたちの成長についてまとめていきます。



「じぶん通知表」作品紹介

前半は普段の活動の様子をまとめ、後半はインタビュー形式で来年度に向けての意気込みを語る構成に。


映像を通して半年間のOZでの頑張りを表現。最後には後期に向けたコメントも。


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