関野吉記『社長がブランディングを知れば、会社が変わる! 付加価値の法則』プレジデント社

経営環境が大きく変化している時代において、過去の成功体験を踏襲していることは大変危険だと頭ではわかっていても、自らも変化していくことは、なかなか難しいところがある。特に、成功体験がある人にとっては、なおさらである。

昨日の常識は、今日の非常識であるという。ビジネススクールで教わるような経営理論やフレームワークも同様と言う。成功事例を研究しても、ヒントしかなく、答えは見つからないとも言う。

デジタル書籍でも、大手企業は本業の収益源とする意気込みがないから、売上上位はベンチャー企業が目立つように、会社が小さいことはハンディではない。大手企業は、既存事業が足かせとなっていると言う。

中小企業に必要なのは、自ら新しい価値を生み出すことができる人材である。そのためには、インターネットやコンピュータの知識が必要であり、若い世代の方がアドバンテージがあることとなる。

市場の国際化が進むとともに、効率や能率を上げないと、社員をどれだけ長く働かせても競争に勝てないという現実に、日本の経営者は直面させられることになる。部下に残業させずに結果を出すというマネジメントスキルが、どの中間管理職にも求められるようになった。

自分で動いて情報を取り、仮説を立て、試行錯誤を繰り返して正解を見つけ出すことができる社長であれば、成長するための付加価値は何かを考え、見つけ出し、正しいブランディングによって、永続できる会社をつくることができると言う。

ブランディングには、社内向けの「インナーブランディング」と、生活者や顧客向けの「アウターブランディング」があるが、インナーブランディングを軽視してはならないと言う。ブランドをつくるのは社員であり、どんなに素晴らしい理念を掲げ、企業として自社や商品・サービスのよさをアピールしても、社員に浸透しなければ、本気に売る込もうと思わないからである。

ブランドパーパス(ブランドの目的)を意識し、事業やブランドの存在意義を見つめ直すことにより、顧客から信頼され、差別化ができる。

①社会に提供している価値、②自社の将来性、③大切にしているもの、足りないものについて問いかけをすることにより会社の棚卸しを行って、会社の「未来の組織図」を設計することを著者は勧めている。「未来の組織図」を実現するためには、どんなスキルをもった人材やポジションが必要か、何が足りないものが分析することになる。

永年、中小企業を多数指導し、100年企業を目指してブランディング戦略を支援してきた著者ならではの考え方、やり方をまとめた本であるが、その内容には説得性があり、有益と思われる。ポストコロナは、以前とは変わった社会になるからこそ、新しい付加価値を生み出すことは待ったなしであることがわかった。

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