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国立科学博物館筑波実験植物園『植物園へようこそ」岩波ライブラリー

植物園へ行ったことはあるのだろうか。動物園に比べると、記憶が定かでない。

植物園の歩き方は、植物の多様性を体感することにあるそうである。キーワードは、「進化」、「環境」、「物語」、「五感」だそうである。

進化を実感できるものに水草がある。さまざまな水草があり、完全に水中に沈んでいるもの、葉が水面に浮かんでいるもの、植物全体が水面に浮かんでいるもの、葉や茎の大部分が水面から出ているものと複雑である。

サボテンは、乾燥地帯の環境に適応するため、球形、柱形など、奇妙な形に変形し、水分のロスを防いでいる。

ショクダイオオコンニャクは、巨大な花を咲かせるサトイモ科の植物であるが、「世界でもっとも醜い花」と言われ、すさまじい腐敗臭を出す。これは腐った肉を食べる甲虫を集めて受粉させるという物語がある。夜行性のシデムシに遠く離れてところで咲く2つの花を結び付けてもらうための命をかけた誘惑である。

植物は、視覚、嗅覚のほか、さわったときの感触(触覚)、食べることができる植物(味覚)、楽器などに使われる植物(音感)があると言う。五感で楽しむことができる。

植物を集めることも植物園の仕事である。絶滅危惧種の場合、種の保存のために寄贈を受けることもあるようだ。ハワイ大学からショウガ科の貴重なコレクションの分譲を受けた。

植物を調べることも重要な仕事である。植物の種によって、花に呼び寄せられる昆虫が異なる。

チャルメルソウや、シコクチャルメルソウはミカシドシギキノコバエだけで、コチャルメルソウはコエダキノコバエの仲間である。ミカドシギキノコバエが花にやってくる種の植物には、花の香りにライラックアルデヒドという成分が含まれていることがわかったそうである。

コチャメルソウなどの花は、この成分が含まれていない。ライラックアルデヒドの有無で送粉者を使い分けて、互いに交配することを防ぐことで、独立に進化した別種となっていることがわかる。

巻末に研究員おすすめの植物園が一覧となって掲載されている。本書を読んで植物園を訪れてみることもよいのではと思った。

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