はたらく人と猫の暮らし―バレエダンサー・飯島望未とツキ&ヨルの場合―
日常に癒しと豊かさを与えてくれる猫との生活。老若男女問わず、さまざまな分野で活躍する猫好き仕事人の方々に、猫と過ごすことで得られるひらめきや創作の源を聞いていく連載。
第2回目は、国際的なバレエダンサーとして活躍する飯島望未さんにオファー。現在はK-BALLET TOKYOに所属し、忙しい毎日を送る彼女にとって、圧倒的な癒しの存在となっている黒猫のツキ&ヨルの2匹について、仕事や日々の生活の話を含めてお伺いしました。
姿勢を矯正するために始めたバレエで、世界へと羽ばたく。
――まずは改めてご職業についてお伺いしていきたいのですが、飯島さんが現在どのようなことをされているか教えていただけますでしょうか?
職業はバレエダンサーです。今はK-BALLET TOKYOというバレエ団に所属していて、1~2ヶ月に1回のペースで公演を行なっています。平日は一番近い公演のリハーサルをしていて、朝10時30分〜18時くらいまでレッスンをしていますね。
――すごい長さですね! 飯島さんがもともとバレエを始めたきっかけについても、お伺いできますか?
始めたのは6歳の時です。子供の頃、姿勢が悪くて首がすごく前に出ていて猫背だったんですよ。親がこれはいかん!って言って、家から近いバレエ教室に、ただ姿勢を直すためだけに通わせたんですね。そしたら私のほうがハマってしまって、今に至るという感じです。親は軽い気持ちで始めさせたのに、こんなはずじゃなかったって言っていて。だから一度、「バレエやめてくれへん?」って言われたことがあるんです。
――そんなことが……! それはおいくつの時ですか?
小学校高学年くらいの時に言われて、「いややー、やる! 絶対にプロになるから!」と言って続けたんです。私は4人兄弟で下の子もいたので、プロになれる保証もないのにお金がかかるバレエは続けられないっていう話だったので。
――それで本当にプロになったのは、すごいです。いくつで海外に渡られたんですか?
小さい時は負けず嫌いだったんですよ。それで、15歳の時に単身アメリカに渡りました。その時も国際コンクールで奨学金をいただけて、学費免除で行くことができたので。その翌年に、プロの契約をいただけました。
兄弟黒猫2匹との出会い。
――きちんと有言実行で夢を叶えているのが、素敵すぎます。日本へ本格的に帰られてきたのは、何年前になりますか?
戻ってきたのは2021年で、3年前です。アメリカから帰ってきて、東京に引っ越してきたら絶対に猫を飼おうって決めていたので、初めからペット可の物件を探して住んでいました。当時から保護猫を飼いたいと思っていたので、それもご縁やから、繋がれば飼おうと思っていたんです。そしたら、知り合いのスタイリストさんのご紹介で、黒猫ちゃんたちの里親を探していますっていうのを聞いて、2匹の猫ちゃんを見に行ったんです。
―ーそれは日本に帰ってきた年ですか?
2021年に戻ってきて、その年の10月頃ですね。猫たちは当時まだ3ヶ月くらいで、千葉のどこかの駐車場で保護された子たちでした。元々は1匹しか飼う予定がなかったのですが、オスの兄弟で、めっちゃ仲が良くてずっとくっついていたので、これは2匹じゃないと可哀想やなって思って迎え入れました。
――初めからペット可物件を選ばれていて、正解でしたね!
最初は1Kの家に住んでいたのですが、猫が大きくなるにつれてだんだん猫の家に私が住んでいるみたいになって(笑)。2匹もいるから、これは引っ越さなあかんなって思って、翌年にはもう少し広い家に引っ越しをしました。
――猫ちゃんたちの名前の由来についてもお伺いできますか?
ツキとヨルという名前なのですが、もともと実家で初めて飼った猫の名前が「星」と書いてセイという子だったんです。星やから、黒猫やし、月と夜で繋がるかなって思ってつけたというか、友人がつけてくれた名前なんです。私がつけようと思っていた候補は、メバルとカサゴだったんですけど(笑)。可愛い名前やし、ツキとヨルを採用しました。
――猫のことは昔からお好きだったんですか?
初めて猫を飼い始めたのは22歳ぐらいの時だったのですが、幼い頃から猫好きでしたね。犬よりも猫ばっかり。だから、野良猫を見つけたらずっと観察していて、猫飼いたいな〜と思って過ごしていました。
せっかくなら保護猫や保護犬に贈り物を。
――セイちゃんはどんな猫だったんですか?
セイはロシアンブルーでした。その当時は保護猫の知識もなく、ただただペットショップで可愛いと思って飼い始めました。そのあと、猫を飼っている人と知り合うことが増えていく中で、保護猫やシェルターで暮らす猫の存在を知るようになり、次に飼う時にはそういう子にしようと決めていたんです。
――Instagramなどにも「贈り物をくださるなら、保護猫や保護犬に〜」というようなことを書かれていますが、飯島さん自身も保護活動などはされているのでしょうか?
たまに知り合いの方と一緒に保護活動をしている団体さんや個人の方のところに行って、ボランティアをしたりシェルターのお掃除や餌やりをしたり、ということはしています。あとは寄付をしたり、団体へご飯を送ったりとか、本当に微々たることを続けていますね。まだ自分では大きな行動はできないのですが、できることをやっていきたいと思っています。
――その一環として、SNSでの発信があったのでしょうか?
東京に帰ってきてから、公演があるたびにファンの方々がプレゼントを持ってきてくださるようになりました。とてもありがたいんですけど、お金を払って見に来てもらっているのに、プレゼントまでいただくのは……という思いがあり。そのお金と時間を同じように使うのであれば、困っている人や子どもたち、そしてワンちゃんやネコちゃんたちに使ってあげてほしいと思ったんです。
――飯島さんのその発言をきっかけに、興味を持ってくださった方もいると思います。
そう言ってくださる方もいたり、中には“この商品を飼ったら保護団体に寄付されます”みたいなアイテムをくださる方もいたりして、そういうのもすごく嬉しいです。皆さんがすごく考えてくださるのは、本当にありがたいですね。
猫たちに会えない期間は寂しくて仕方ない。
――お仕事で家を空けることもあると思うのですが、普段はどのようにしているのですか?
地方へ行く時には、マネージャーさんに預けているんです。マネージャーさんも2匹飼っていて慣れているのですが、初めて預けた時からうちの子たちは我が家かっていうくらいくつろいでいて(笑)。私としては安心なのですが、向こうの猫ちゃんたちには申し訳ないです。図々しすぎる!
――地方へ行った時に会いたくなったりはしないですか?
地方公演で1週間ほど預ける時は、マネージャーさんがテレビ電話をしてくれるんです。そうすると、もう会いたすぎて私は泣いちゃって……。公演が終わって迎えに行って、家に帰ったらいるというのも幸せで、それでまた泣いちゃって(笑)。向こうは知らんぷりなんですけど、私は姿が見られただけで泣けちゃいます。あとは、マネージャーさんとは一緒に寝ないらしいのですが、私のベッドでは一緒に寝てくれたりすると、「お母ちゃんを求めてたんやな」って思って嬉しくなりますね。
公式LINEの「にゃ」に癒されています。
――最後に普段猫ちゃんたちの餌や猫砂などはどこで買われていますか?
オンラインで買っていますね。だから、ヤマト運輸のLINEはもちろん登録しています! ちなみに語尾に「にゃん」や「にゃ」、「にゃー」などをつけると、返信でも「にゃ」と言ってくれるの知っていますか? 私も人から聞いたんですけど、それがめっちゃ可愛んですよ〜。その機能を知ってから使っているのですが、皆さんもぜひ使ってみてほしいです!
飯島望未(いいじま・のぞみ)
バレエダンサー。大阪府生まれ。6歳からバレエを始める。2007年ヒューストン・バレエの研修生、08年当時最年少16歳でアーティストとして入団。19年3月プリンシパルに昇格。19年7月熊川哲也総合監修 Bunkamura 30周年記念「オーチャードバレエガラ〜JAPANESE DANCERS〜」に出演。21年5月熊川版『ドン・キホーテ』にゲストとして主演。同年8月Kバレエ カンパニーにプリンシパル・ソリストとして入団。22年3月プリンシパルに昇格。
スタッフクレジット:
photo:Shun Okamoto hair&meke-up:Fumihiro Kawahara
edit&text:Makoto Tozuka
Produced by MCS(Magazine House Creative Studio)