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【実録:私の倒産物語 ② Xデー『当日』】

2017年12月6日朝、寝ぼけ眼の私は取引先の社長からの電話に起こされた。

「社長、今市場で『今日スーパーやまとが倒産する』という話で持ち切りだよ!本当なの?」

とんでもない!これから年末商戦となり売り上げも利益も増える。
来週以降のチラシも既に印刷済みだ。忘年会や新年会を前に、店を閉める飲食店があるか?

私は、自信を持ってその噂を否定した。


嫌な雰囲気とともに、いつも通り出社した私に店長から電話が入る。

「社長、今朝納品予定の酒が納品されません!問い合わせたらシステムエラーとのことです!」

日本一の酒問屋のシステムがダウンする訳がない。
店長に近くの同じ問屋から仕入れているスーパーを見に行かせると、そちらには山ほど酒が納品されているとの報告…。

おかしい、いつもとは違う…。

他の店長からも電話が入る。
「米屋が売場から商品を引き上げています!やまとが倒産すると言って」

そのほかの店舗からも次々に連絡が入る。
・チラシ商品は納品されたが、定番商品は納品がありません!
・ハムやソーセージ類が入りません!欠品だそうです。
・お菓子が全店舗納品遅延です!

『もうやめてくれ~!!!』血の気が引くとはこういうことだと分かった。

「そうは問屋が卸さない」
ギャグだと思っていた言葉が身に降り掛かった…。

金融機関がいくら支援してくれても、スーパーに商品が入らなければ商売にならない。

その日の売り上げを遅れている電気代社会保険料の支払いに充ててやり繰りしていたが、もうその手は使えない。

黒字化したとはいえ、保証金の追加や支払いサイトの短縮で、真綿で首を絞められていた弊社の自転車操業も限界だった。もちろん納品側のリスクも理解するが、一気にここへきてそんなトリガーを引くのか?


「ここまで突っ張ってきたけど、今度こそお終いかも…」
ぼう然とする私の元に、親子3代の付き合いのある問屋の社長たちが揃ってやってきた。

「小林社長、もうやまとに商品は入らないよ。問屋がそう言って回っている。俺たちもこれまで長い付き合いをさせてもらったけど、田舎のスーパーがやっていける時代じゃない。閉めるなら今だよ。これまでよく頑張ったよ、社長!」

そして「無理をして年末年始の納品をして、お正月明けに倒産したら俺たちも連鎖倒産してしまう」と。

これまで自分だけは大丈夫!いざという時には「神風」が吹く、と勝手に思っていた自分にも、限界が来たようだ。代替わりの厳しい時に、支払いを融通してもらって生き延びた会社である。苦楽を共にした彼らの説得に、肩の力がスーっと抜けるように私は言った。

「皆さんの言うとおりにします。ご迷惑を掛けると思いますがよろしくお願いしますm(_ _)m」


(そこから先はよく覚えていないが)
・全店長を集め、今日の夜8時をもって全店閉店とすること

・明日も出勤して、休みのパートさんやお客さんにきちんと説明すること

・社長はずっとに本部にいるから、業者さんやメディアにそう告げること

・みんなのこれからのことは私が最後まで面倒を見ること

店長たちは既に覚悟を決めて集合した様子で、取り乱したりする者は一人もいなかった。

「105年もお世話になったんだから、最後もしっかり店を閉めよう!こんな社長についてきてくれてありがとう!そしてこんなになっちゃって本当に申し訳ないm(__)m」

その後私は、弁護士の元へ飛び、にわか作りのお知らせ文書を書いてもらった。

それから閉店までの数時間、私は車で沢山の店舗をグルグル回っていた。

もうこの当たり前の光景は二度と見られない。
これから想像もつかない明日に向かって「ゲート」をくぐる。

閉店時間の夜8時、店の看板の灯が落ちる。
終わっちゃった、これからどうなるんだろう…🙏🏻


お世話になった記者から私の携帯に着信があった。

「社長、本当に倒産ですか?本当なら記者を向かわせますが…」

私「本当だよ、君に初めて言う。スクープ取れたね!」

私を訪ねてきたのは若い女性記者だった。
配慮してくれたのかも知れない…。

女性記者が言った。

「私はやまとさんが閉店してしまうことが悔しいです。 これまでお年寄りをはじめ地域のために頑張ってきた会社が潰れてしまうなんて悲しいです」彼女の目から涙がポロポロこぼれていた。 (続く 2/3)


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【私はこんな人間です】


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