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紀伊は木の伊の国にして狗奴国

やまとみずほの国に生まれて  第四話

吉備氏と言えば吉備氏の乱だ。第三話の「桃太郎は木眉津彦か和歌岳彦か」にて、吉備氏の里は和歌山だと書いた。このときは第21代雄略天皇の御世で中央政権が進んだと評価される。夢枕を利用して豊受大神宮を伊勢神宮の外宮へ遷座させている。第一話「国生みは壮大な王権拡大プロジェクト」に書いた宗像三女神と同手法で、羽衣伝説の残る丹波勢力の力を削いだのだ。言葉悪くなるが「お前らの神様は俺たちの神様に下ったから従え」である。

能力が同じだからと稲荷神(宇迦之御魂神)と同一神視するが、神仏習合と同じ罠に陥ってはいけない。出自が違うとたいてい異神である。吉備氏の乱も有力な地方豪族の力を削いだ、いや取り潰した。吉備津彦が岡山を制圧して分家したが、当時は末子相続が基本なので和歌山本家は若武彦が継いだ。その本家を取り潰して名前を消したのが真相だろう。松平が徳川になったみたいならいいが、一番かわいそうなのは元々岡山を治めていた氏族である。

吉備津彦は岡山で鬼退治したのは温羅とされているが本名かどうかわかったものじゃない。何より温羅が統治したのは吉備という名前ではない。地名が奪われているのだ。古事記は勝者の記録だから歴史学者が参考にならないという意見はごもっともだが、隠された秘事を掘り起こすのも醍醐味である。もう難読地名にも慣れたが、慣れたきっかけが吉備だったか。どうしてこれをキビと読むのかと無茶苦茶腹立ったのだが、その理由はこのことだった?

吉備に出会ったのは中学の歴史だったと思うが、徳島と和歌山が鏡のように同じ地名なのは小学5年生か6年生の頃に気づいていた。小学校の副読本だから詳細ではない地図だが、順番に地名を出題して地図帳の何ページのどこにあるかを探す遊びが流行って地図とよくにらめっこしていたからである。傑作だったのは栃木県にあると言われてもどのページかわからない問題だ。関東の地図ページに記載されていないのに、東北に載っている落ちである。

などと懐かしく思い出に耽っていたら天啓が閃いた。紀伊とは紀の伊の国。元々は木の国で和歌山吉備本家の後に紀氏が入ってから紀の国になったが、木の国の中に伊の国を誰かが造ったのだ。それは妄想ではなく魏志倭人伝後漢書東夷列伝に書かれている。狗奴国の位置が前者が女王国の南に有りだったが、後者は東に海を千余里渡った所へ移動した不思議を解決している。

三国志の陳寿も後漢書の范曄も正しく書いた。もうQ.E.D.証明終了?

#週刊少年マガジン原作大賞

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