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一度だけ即興作曲と即興演奏に成功

モンマルトルの一見さん」に異国情緒豊かな「飛んでイスタンブール」について書いた。しかし最もエキゾチックなのは久保田早紀の「異邦人」だ。すっかり忘れていたがサブタイトルには-シルクロードのテーマ-とある。詩も曲も素晴らしく編曲まで完璧に決まっているJ-POPの最高傑作だと今聴いても思う。てっきりNHK特集のシルクロードに便乗したのかと記憶していたら、「異邦人」の方が一年早くこちらの方が火付け役だ。

大ヒットは一大ブームになり、当時すでにヒットを連発していたユーミンが「生涯に一曲だけいい曲を書けるのね」とコメントしていたのが心に残る。さらに昭和の名曲は一朝一夕に出来たわけではなく、中東の風景が鮮やかに浮かぶ詩は、最初は通学中の電車から見た景色を歌ったというエピソードを最近知って驚いた。歌は世につれ世は歌につれというが、大ブームを作った神曲にもCMに採用された好運はあるし舞台裏にも紆余曲折がある。

その当時大学一年生で大学寮に入っていた。進駐軍が使い残したオンボロで夏休みには近所の子供が肝試しをするのが語り草になっていた。各戸個別に建っており部屋の造りも個性豊かだ。抽選で一番広い部屋が当たったので、当然のごとく集合部屋になった。テレビで音楽番組をみんなで見ていたら、五木ひろしが即興で初めて見た歌詞に曲を乗せて歌っているのを「凄い」と言うので、「大したことない」と言ったら「実際にやってみろ」と言う。

口は禍の元である。「詩がないだろう」で逃げれると切り返したら、なぜか理系のくせに詩を書き溜めている奴がいて直ぐに提示してきた。何の根拠もなく口走ったわけではなく、フォークギターの弾き語りはよくしていたし、適当に作曲するならわけないと思ってはいた。しかし実際にやらされるのは完全に予想外だ。まあ出来なくても恥でも何でもないとギターを奏でると、途中詰まることなく、最後のフレーズなど我ながら酔いしれる出来だった。

曲作りを真剣にしたことはないし、即興演奏なんてとても無理な腕前なので本人自身が結果にはビックリである。「前から詩を見てたんじゃないの」と疑われる始末で、「もう一度」のリクエストにはさすがに同じメロディーになるはずもなく「無理」と断った。実際出来は良かったようで作詞した彼の「詞ができたら持ってくる」の提案を面倒なので断ったのだが、大後悔だ。今も詩が有れば作曲する自信はあるし、ひょっとして人生変わったかも?

#創作大賞2022

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