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がん様々 0 身体の専門家ががんになったら、こうなった

がん患者による、がん患者のための、
がん治療対策マニュアル


私の職業は、施術家です。
世間のカテゴリーでは「整体師」となるのかもしれませんが、これまで様々な勉強と研究を重ねた末に、私なりの理論と方法を編み出し、独自のメソッドによって、クライエントの皆様の身体を整えるお手伝いをしています。

そんな私が、自分の身体に異変を感じ、乳がんであることがわかったのが2017年2月、46才の時のことでした。
ステージは3a。ステージ1から4までの3なので、決して軽いとは言えません。

2017年3月から治療のフルコースを受け、2018年9月末に分子標的薬ハーセプチン治療(以下、ハーセプチン)を終えてから2022年春までは、ホルモン治療のみで単調な治療生活を過ごしていました。

そしてこの春、3月の定期検査で引っ掛かり追加検査を重ねた結果、右胸骨傍リンパ節転移疑いとなり、確定診断のための生検手術を5月に受けました。肋骨を開いての生検手術です。手術で取ったブツの病理検査の結果、抗がん剤治療が決定、1クール目は6月30日。ステージでいうと、3aから3cへ移行です。

ハーセプチンを含めた治療のフルコースを受けることができるということは、治療方法が複数あるという有難いことであり、逆に、がん細胞が増殖する因子をもっている悪性度が高いということでもあります。                 

ただ、乳がんには、トリプルネガティブといって、三大治療である抗がん剤・手術・放射線以外に確かな効果が証明されている治療方法がないタイプもあり、その場合は、望んでもフルコースを受けることができません。自ら治療を望まない方ならばよいのでしょうが、できる限りの治療を望む人にとって、治療方法の選択肢がないということは、効果のあるなしは別として、不安や恐れを避けられないことでしょう。
治療のフルコースを受けることができるのは、がん患者にとって有難いことでもあるのです。

そんなフルコース治療を、私はとても楽しんできました。
特に、抗がん剤治療は、副作用で起こるあらゆる症状を研究できたため、楽しかったのです。抗がん剤治療と向き合うとき、心には「白衣」と「黒ブチメガネ」をまとっていました。
そんな私の闘病姿を目にする友人知人は、「こんなに楽しそうながん患者を見たことない」「がんになるのが怖くなくなった」とよく口にしていました。

乳がんが判明してから、友人3人ががんで亡くなりました。日本国から天国へとお引っ越ししてしまったのです。30代と40代、50代だった3人は、常に希望を持って前向きに生き、私もその闘病姿から多くのことを学びました。

がんは今、生涯の間で2人に1人患う、と言われている時代です。「明日はわが身」と認識していたほうがよいほど身近な病気であるにもかかわらず、世の中のがん認識は、実際にがんになった自身の感覚とかけ離れていて、違和感がありました。リアルに想像できる情報がないがゆえに、ドラマチックに考える方が多いように感じるのです。

また、生涯の間で2人に1人患う、と言っても、9割が60才以上ということを認識している人は少ないと思います。ということは、それ以下の年齢は全体の1割。ある程度の年齢にいくまで、「明日はわが身」と認識できないのも仕方ないのか…。

「がん=死が近い病気」という感覚で捉えている人もまだ多いと思います。
がん全体で治癒率は6割まで上がってきているようですが、がんの種類やステージを細かく分けると大きな差があり、インターネットの限られた情報だけで判断するのもよくないでしょう。

もう少しロジカルに考えられるように、この記事で、私自身の体験、また乳がんになったことで出会えた方々から得られた様々な情報をお伝えすることで、がんに対する意識改革や治療による副作用に対する対策の一助になればと願っています。

そして、がんに対する想像の幅が広がり、事実を知らないことによって抱える不安や心配が取り除かれたり、少なくとも軽くなったり、がんをより身近な病気として感じていただけるようになれば嬉しいです。

医療従事者が当事者を研究することはあっても、がん患者である当事者が当事者を研究することはあまりないと思います。
私は、がん治療の副作用対策があまりにも発展途上であることに驚き、「目の前に研究材料があるのに、何もしないはもったいない」と、自分自身で人体実験をする感覚で治療を受けてきました。

この記事に書いたことは、すべて私の身に起きている事実です。
皆さんにお伝えするには、私の体験した事実に後から理屈を結びつけなければならないので、既存の理屈通りにやって結果を得るよりも大変ですが、理屈通りの結果よりも新発見が多いから楽しいのです。

治療を進めてゆく中で、がん患者の立場に身を置くとき、医療の研究成果や情報が点と点としてばらばらであることを感じていました。しかし、自分自身が当事者として当事者を研究することで得られた結果がヒントとなり、それらの点と点を結びつけることができたのではないかと思います。

科学的根拠をすぐには提示できなくても、からだの専門家である当事者が、その身をもって点と点をつなげられることがあったと思うのです。
不調をあまり感じたことのない健康な人の場合、データで判断することが多く、情報と実態を結びつけにくいように感じるときがあります。
病気の方には怒られるかもしれませんが、昔から、「施術の仕事は病んだ者勝ち」と思ってきました。情報やデータに経験値が反映されるからです。
申し訳ないことに、自身の施術技術の不足や精神面の未熟さで、ご迷惑をおかけした施術経験も反映されています。お客様の身体との対話から多くを学ばせていただいてきました。
そうして得られたことが今、乳がんのみならず、がんを患う方々からのご相談に役立っています。

今、改めて「何のために乳がんになったのか、わかっていますか!?」と、神様や御先祖様に問われているように感じます。
生かされているからこそ、使命を与えられているように感じています。
あまりにも多くのことを教えていただいたので、「もし乳がんを経験していなかったら…」と想像すると身震いするくらいです。

経験は宝――。見た目は違えど、人間は、先天性のものがなければ皮を剝げば皆、肉体環境の基本はほぼ同じです。
私の当事者研究の成果が、「がん患者による、がん患者のための、がん治療対策マニュアル」として、1人でも多くの方のお役に立つことを願っています。

この記事にも登場していただいた、主治医のA先生、化学療法(抗がん剤)の担当医であったB先生、友人のCさん、日本の栄養学を代表するD先生には、大変お世話になりました。
また、私の闘病に関わってくださった多くの皆さんのご協力にも心から感謝します。施術のお客様にも、検査や通院、体調優先によるキャンセルのお願いなど、多大なご協力を頂いています。

私の乳がんの闘病は、友人知人と共にあります。よりよい闘病生活は、人のつながりと共にあると思っています。
私は、今まで人に「頼る」ことがどのようなことなのかイマイチわかっていなかったのですが、闘病する中で、「頼る」ことの本当の意味を知りました。
これは私にとって、とても感動的な、喜びにあふれた学びでした。

また、知識と技術のある医師と心と心でつながることができれば、たとえ治らなくても、「ベストを尽くした」と納得して諦めがつくと私は思っています。

私には、まだ命があります。未来を見ることもできます。
そのような状況が与えられていることに深く感謝しています。
それでは、私の闘病と研究について、くわしくお話ししてゆきたいと思います。


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