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がん様々 3 心身ともに筋力勝負

がん患者による、がん患者のための、
がん治療対策マニュアル



1章 私も がんと知り合いになりました

6  私のがん―佐渡島に発生

ここで、私の乳がんについて説明いたします。

身体を日本地図にたとえると、北海道が頭、本州が体幹(内臓が入っているところ)で、右胸は佐渡島みたいなものです。シコリさん(がん細胞)は佐渡島に滞在していて、かつ、シコリさん部隊の拠点は1つではなく(胸の中の転移)、関所の役割である港(腋窩リンパ節) にも足を進めていた状態でした。リンパ転移です。

しかし、本州に渡る船はまだ、他の地に辿り着き拠点を構えてはいませんでした。唯一これだけは無いよう懇願していた、遠隔転移はしていなかったということです。

他の地への道を断つこと、シコリさん部隊の数を減らし小規模にすること、スパイのように全身にまわっているであろうがん細胞の息の根を止めることを目標に、抗がん剤治療が行われました。

事件は離島で起きていますので、まずはその部隊が本州へ渡ってこないようにするのですね。遠隔転移はありませんが、胸の中でリンパへの転移があり、胸から出よう出ようとしているところをおさえるため、そしてスパイの息の根を止めるため、抗がん剤治療を先にした後に、手術という流れです。

リンパを歩むがん細胞も、自然治癒力で戦意を失ってもらい、ポカポカ陽気のような穏やかな気持ちで歩んでいってくれたらいいな、なんて呑気な想像をしていました。

がんが小さくなれば手術による部分切除が望めたので、手術前までの私は、それを目標にしていました。
治療にあたり、安心材料として、内臓がすこぶる健康なことがありました。平均値よりも良く、特に超音波検査では、心臓は褒められました。

内臓を患ったら、たとえがんでなくても日々不調を感じやすいですからね。その点の心配はないので、本当に有難い限りです。

7  治療は筋力勝負

国がんで働く友人が治療をするにあたりまず教えてくれたのが、「治療は筋力勝負!」ということでした。

実際、治療中に筋肉がどれだけ大切であったことか、今では筋肉を大切なモノの大きな1つと認識しています。筋肉があると治療の大きな助けになるのです。仕事で養った筋肉を落とさないよう心がけるようになりました。

乳がん患者を対象とした幾つかの研究では、抗がん剤治療中の軽い運動は、副作用を軽減しQOL(生活の質)を高めるという結果も出ているようです。

筋力アドバイスの意味を、改めて友人に尋ねてみました。
「がんは診断されてから治療、経過観察と、長い闘いになるということです。これは、精神的にも肉体的にも、タフな闘いになるので、やっぱりその人の体力、気力を含めて、『筋力』(精神的肉体的)が重要だと思います」

そうですね。私は、内臓はいたって健康です。心臓も平均値より強く、肉体ベースは強いほうでしょう。精神的にもタフなのだと思います。だから、経験したことのないことについては、事実の中でベストを考え、悪い妄想に至らないのかもしれません。

両親がこの肉体を授けてくれ、このような精神に育ててくれたお蔭様で、私は乳がん治療や副作用研究を楽しむことができています。
この恩は、自分の得た体験や事実を広く世に共有するということでお返ししたいと思っています。

筋力対策は、治療中の激しい運動はお勧めいたしません。ウォーキングやサイクリングなどの軽めのものが最適です。自転車に乗れる方は、抗がん剤副作用により起きる浮腫対策にもなるのでお勧めです。

ただ、長時間はやめたほうが良いでしょう。適度、が重要です。私が現在の抗がん剤治療の中で取り入れている量は、20分ほどウォーキングをし、帰りはレンタル電動アシスト付きシェアバイクで10分ほどかけて帰るくらい。電動アシストを有効活用し、負荷無しのフルパワーで楽チン運転は効果大。

副作用で末梢神経障害が起きる可能性のある抗がん剤治療を受ける場合は、ウォーキングはしすぎると負荷になることもあるので、気を付けどころです。
私は現在、その抗がん剤投与中なので、電動アシスト付き自転車か室内バイクの購入を検討中。

また、筋力は落とさないことを意識するだけでなく、ストレッチも必須です。先ほども述べました末梢神経障害の予防策として重要になります。
対処法だけでなく、予防策を取り入れることで、副作用の二次的や三次的な症状が慢性化せず、一次的現象でとどめられることにもつながるのです。

いずれにしても、行い方により効果が変わりますので、ストレッチの仕方や脚の使い方など、大切なポイントを後々にまとめてお伝えできたらと思っています。

8  治療本番を迎える前に

リンパ節転移後、新たなクールの治療を受けている今の気持ちは、治療に「慣れたな」、の一言です。治療に対して特別な感覚や感情はなく、生活のなかの大切なルーティンのひとつとして、心身共に共存しています。

これからお伝えする当事者研究と、その成果を、これまでは限られた方にお伝えするだけでした。
今回の新たな治療で、フルフルに経験できる機会が有難く、私にとってはチャンス、当事者研究の成果を確認できるからです。以前よりも、客観的に捉えられている感覚があります。
そして、私の体験や研究が、より多くの皆様に活用して頂けたら、こんなに嬉しいことはありません。

治療の選択は人それぞれ。私のように、誰もが受けられる標準治療を選択する方は多いと思いますが、最初は治療に意気込んでいても、途中でやめる方もいらっしゃいます。最初から、最低限の治療でがんばる方もいらっしゃいます。

治療は本人の選択が大切。白黒ハッキリできないことが多いと思いますが、その時々の選択に納得していれば、それが良いでしょう。ひとつ一つの選択の先に、将来の人生を想像する希望が隠れているかもしれません。

選択をした後に、疑問や心境の変化が起きたならば、その時に見つめ直し、改めて納得できる選択をすればよい、と思っています。
ただ、状態・状況によって、望む治療を受けられないことも起きてくるかもしれません。それも、ご自身の持つタイミングやご縁と捉えれば、問題ありません。

自分に起こる現実が、感覚とすっと結びつかないこともあり、悩むこともあると思います。それでも、自分がとるべき解決策は、案外シンプルな所にあると、私は感じています。

それでは、5年前の治療現場へ話を移していきましょう。


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