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カモフラージュカレールー

僕は、人からこう思われてるのではないかと考えてしまう癖がある。

「そんなことまで気にしなくていいのに」と言われることは多い。

けれど、勝手に気にかけてしまうのだ。どうしようもない。

夕飯を買いに行くために、スーパーに行った。今晩は何にしようかなと考えながら、最近カレーを食べていないことに気がついた。

今日は久しぶりにカレーにしようと意気込み、スーパーの入り口でにんじんや玉ねぎ、じゃがいもをカゴへと入れる。

家にはカレールーが無いので、バーモンドカレーを選んでカゴに入れた。

しかしここで、僕はカゴの中身を見てそわそわしてしまう。

これでは、レジのおばちゃんに「今晩はカレーにするのですよ」と言っているようなものだ。

なぜ見ず知らずのおばちゃんに、今日僕がカレーを食べるということを知られなきゃいけないのか。

友だちですら「今日の夕飯はカレーにするね」なんて連絡をしないのに、知らないレジのおばちゃんになんてなおさら嫌だ。

これで僕が楽しそう態度を取っていたのなら「今日はカレーだからウキウキしてるのかな」なんて思われてしまう。

冗談じゃない!!僕はそれが許せないのだ。意味もないのに仏頂面でレジへと並ぶ。

せめてカレールーさえ入っていなければ…。
まだ肉じゃがになる可能性もある。別々に材料を使う料理であるという選択肢だってある。

けれどもこのカゴの中身では、完全にカレーを作る人にしか見えない。

「じゃがいもが1点、にんじんが1点、玉ねぎ…」おばちゃんが商品を確認するために品物を連呼する。

そのおかげで向かい側のレジのおばちゃんもそこで会計しているおじちゃんも、みんなが僕の今晩の献立はカレーということを知る。

きっと心の中でみんな揃って笑っているのだろう?いいさ、夕飯の時間になって「やっぱりうちでもカレーにすればよかった」と後悔するくらいカレーの口になればいい。

バレてしまったら仕方がないと、僕は周りの人たちにカレーの念を送り続けたのだ。

僕はこうなることが嫌で、カレーとは関係のない食材を買うときに合わせてカレールーを買うようにしている。

どうだ、これならカレールーを今日使うかどうか分からないだろと自信満々にレジへ並ぶのだ。

カレールーをもったおばちゃんの手がいつもより少し遅く見える。きっと「この食材で…カレー?いやいや、そんなことはないはず…分からない…」となっているのだろう?

僕は満足気な顔をして会計を済ませ、満足気にスーパーを去る。

そんな意味が分からないことをしているからか、家に帰ってカレールーを棚に入れようと思ったら、すでに2箱が置いてあったのだ。

僕の家にはカモフラージュのために買った無駄な箱が、3つ棚に並んでいた。全てバーモンドカレーと書いてあったのだ。

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