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待ちにまった年に一度の田植え体験。

「また今年もやってきた。」

そんな気持ちでいっぱいだった。昨年はじめてやらせていただいた田植え体験。田んぼに入るというのを、私自身想像もしていなかったことだったが、なんとなく「体験として企画したら、面白そうだなぁ。」と思ったのがきっかけだった。

私の「面白そうだなぁ。」という感覚は、自分がというより「誰かが楽しんでくれそうだなぁ。」というものに近いと感じている。何か計算があってというよりは感覚だけしかなくて、やってみて自分が思うような面白くないものであれば、誰も参加なんかしてくれないだろう。そんな内心もあったが、大変喜ばしいことに、昨年参加いただいた方から「ぜひ、今年も参加したい。」というお声でした。

ご無沙汰しております。
インスタグラムにてしいたけ狩り楽しそうだなあ!と拝見しました。
今年も田植え体験は開催なさるのでしょうか?
もしございましたら、申し込み方法など伺えると幸いです。
宜しくお願いいたします。

嬉しいお言葉メール

田植え体験でお世話になっている根本さんのところで、1月に原木しいたけの収穫体験を実施した後にいただいたメール。農業体験を企画しはじめたのは確か2年くらい前で、まだまだ新型コロナウイルスの影響残る中だった。

不定期な企画であり運営するにも不慣れ極まりないので、「本当にお客様は満足していただけているのだろうか。」そんな疑念もありながら開催していた中で、はじめていただいたお客様からのメールに、とても嬉しかったのを覚えている。

このメールから強いチカラをいただいたのは間違いないし、期待してくれているからには応えなくてはいけないと思った。なので、基本雨男だが、わざわざ遠方から楽しみにしていただいてもらっている以上、「天気なんぞを理由に、年一度の企画を潰されるわけにもいかない。」そんな強い思いを持って、日程調整を入念に行った。

昨年は、天気ばかりを気にして平日開催だったが、今年は多くの方に参加していただきたいという思いもあったので、募集前日まで悩みに悩んで5月12日の土曜日に決めた。私の性格は基本、優柔不断。土曜日か日曜日か迷いに迷って、最後は「絶対、開催。」という選択肢で天気の良さそうな土曜日を選択。終わった次の日、もともと曇り予報だったが雨がパラついたので、「あー。ほんとに良かった。」と空を眺めながら、思い耽ていた。

お客様からの期待と、こちらの思い描いたこと、さらには体験を実施させてくれる農家さんと、作り手の思いからお客様の距離を近づけることが、少しずつだけどカタチになっている気がした今回の田植え体験。その模様をお伝えしていくので、よろしければ最後までご一読いただければ幸いです。


市原の巨匠。根本さん。

昨年の5月にはじめて田植え体験を企画し、今年で2年目を迎えています。手探りではじめた農業体験も回数を重ねることに質が上がっている気がします。そんな素人同然の企画を快く受けてくれたのが、市原市でも有名なお米の農家さんの根本泰弘さん。

生産者の根本さん。

根本さんの作るお米は、平成三年度に宮内庁に献上された市原市を代表するどころか、全国でも有数のお米となっています。そして根本さんのお米は「音信米(おとずれまい)」と名付けられ、弊社直営店の房の駅でも販売させてもらっています。

なぜ音信米(おとずれまい)なのかと言いますと、根本さんの手がける田んぼは、市原市にある音信山(おとずれやま)の麓にあります。そしてここの田んぼの特徴でもある稲を育てるお水。このお水が音信山の土の中に含まれる成分と一緒に湧き出てきた「絞り水」となって、山の麓に溜池として存在します。この自然に作られた源泉を使い育てられた、音信山からの水を使い作り上げているお米だから音信米(おとずれまい)なんです。

23年は渇水とのたたかい。

根本さんの作るお米は、音信山からの水の恵があってこそできるお米ですが、音信山からの水は時に根本さんを悩ませます。それは令和元年の台風の時、山からの水路が土砂崩れで堰き止められ、田んぼまで流れてこなくなってしまうこともあったそうです。

その時のことを伺ったことを、下記のnoteにまとめていますので、こちらもご覧ください。▼▼▼▼▼▼

その時は不幸中の幸いで、田んぼの作業が終わった後の土砂崩れだったので、お米の栽培には大きな影響は出なかったそうです。ただ、昨年は違いました。

雨が降らなかったのです。

雨が降らなければ、音信山の麓の溜池には水は溜まりません。そしてお米を育てる水が流れてこないので、稲は枯れてしまいます。話を伺えば6月の10日以降でまとまった雨が降ったのが1日、2日程度で、水を流そうにもチカラも弱く、また根本さんは他の農家さんを優先し、自分の田んぼはギリギリまで水を流さないなど、対応に迫られたりしていたそうです。

幸い稲刈りがはじまりそうな8月の10日ごろ、やっとまとまった雨が降り田んぼに水を行き渡らせることができたそうですが、一部の田んぼでは水が干上がり、稲が枯れてしまう田んぼも見受けられました。お米農家さんにとっては大切な水。その対応に迫られ体調も崩してしまい、稲刈りの時にはもはや満身創痍。

それでも根本さんは、近年の気候変動をここ数年で何度も受けながらも、お米に対する姿勢は変えず、美味しいお米を作るため22町まで広がった田んぼを今も気を抜くことなく、手がけている農家さんなんです。

田植えのはじまり。

開催日は、おかげさまで快晴とまではいかないまでも、天気が晴れて絶好の田植え日和となった。また時より強く吹く風が、まだまだ涼しく感じることができ、気温は25度くらいまで上昇したものの、過ごしやすくカラダを動かしていてもそこまで汗をかくことはなかった。

根本さんもこの日は最初からエンジン全開。昨年でなんとなく流れを感じ取っていただけたのか、スムーズな進行でお客様を促していただいた。苗の準備を早速はじめて、お客様の車で田んぼまで向かう。

私は、この山の麓に広がる田んぼの風景がお気に入りだ。

この日頃の喧騒を忘れさせてくれる田んぼの風景の中、車を走らせること2、3分くらい。田んぼは昨年と同じ場所で、同じように真っ直ぐ植えられるように、根本さんの方で事前準備が施されていた。小さく見える田んぼでも、植えていくとわかるが、ほんとに1mが長く感じる。そして今年は、根本さんの方で気を使っていただいていて、田んぼの中の水を少なくしてくれていた。この気遣いには、頭が下がるばかりだった。

田植えのレクチャー。

苗が配られた後、さっそく根本さんによる田植えのレクチャーが開始された。今回田植えに使用する苗は「コシヒカリ」だった。手で植える際は、2、3本の苗を真っ直ぐに約20cm間隔くらいで植えていく。

この真っ直ぐに植えたり、等間隔で植えていくのが難しいので、せめてと言わんばかりに、田植え体験の際は根本さんが田んぼに真っ直ぐのラインを引いてくれている。

田植えのレクチャー

田んぼの中に、どのくらいの深さでどのように植えて、足跡や窪みがあった場合の対処の仕方など、根本さんはあらゆる場面を想定して説明してくれていた。ただこれが悲しいことに足を取られる田んぼの中で、必死にやっていると忘れてしまうことも事実あって、ただそうやってカラダで感覚として覚えていくことで、段々と上手になっていく気がします。

動画でも撮影していますので、こちらもご覧ください。

稲の苗は意外と丈夫で、ある程度水に使ってしまってもその後伸びてくるまで、しっかりと根を張ってくれるそう。素人感覚だと、「苗は弱く、ちゃんと植えてあげないと育たない。」というようなイメージもあるが、ある程度の植え方ができていれば、しっかりと育ってくれるのです。きっと。

百聞は一見にしかず。

百聞は一見にしかず。という言葉の通り、あーだ。こーだ。聞いていても、実際やってみないとわからないことがある。ということで、早速コシヒカリの苗を配り、田んぼの中に促していった。

はじめての田んぼの感触の人もいれば、「子どもの頃にやった。」という方もいた。経験あるといえど、日頃の生活環境を考えれば、田植え体験の足元の制約は大きすぎるくらい足を取られる。

その中で、「苗をとり」「真っ直ぐに」「等間隔に」という作業に集中力を使っていく。農業の中で手作業でやるものでも、他にないんじゃないかと思えるくらいの農作業だと思う。

親子でチャレンジ!

昨年との違いは、なんといっても苗が「コシヒカリ」だったというところ。ここも根本さんの方で気をつかってくれているんだろうな。という気配りが感じられた。粒すけとコシヒカリでは、根の強さがまったく違う。比べてみるのが一番だが、粒すけの方が根が強く2、3本取ろうとするだけでも意外とチカラがいる。そうなるとどうなるかというと、田植えをやっている最中に握力がなくなってくるのだ。

昨年は慣れない泥の中で足を取られ、加えて粒すけの苗に握力を奪われ、そして人数が少なく見るにみかねた根本さんが途中で参戦してくれて、なんとか終わらすことができた。

今年は、どうなるのか。

経験したことで少し不安も過ったが、やっていくうちにその不安要素は簡単に拭うことができた。それは一度経験していることで、昨年とは違い意外と要領よくコツを掴んでる感じで、サッサッと植えることができていた。

「あれ。なんかスムーズだ。」

そんな感覚を感じながら周りの人に話しかけたり、苗がなくなった人が出ても、田んぼからすぐさま飛び出して走って取りに行ったりと、素足で畦道を歩くことにも違和感なく、多少石ころ踏んづけようが特に気にもならなかった。

現代っ子。そんな言葉で括られてしまいがちな、今のお子さまも経験したいという方は多い。そして積極的な子は、大人からしても逞しさを覚えます。むしろ体だけが重くなった大人たちの方が、バテ気味にもなりやすい。この後先考えず、とにかく目の前のことに没頭しつつ、全力で楽しむ姿には頭が下がるばかりでした。

小さく見える体かもしれませんが、お子さまが楽しんでくれる姿からもらえるパワーというものがあるから不思議です。

初参加でも楽しんでくれました!

そして何より「今年も是非やりたい。」と昨年参加してくれたお子さまが、元気に笑いながら楽しんでくれている声が響けば響くほど、周りに元気を与えてくれて、大変さよりも楽しさが優っていました。

昨年に続き、二度目の体験。

当然のことだが、初参加の方の「楽しい。ハマっちゃいそうだ。」という楽しさの意思表示というのは、開催している方からすれば、「やってよかった。」に繋がる。この声が、動きの軽快さを後押ししてくれる。

黙々と田植えに集中。

田植えというのは泥にまみれるし、素足で田んぼに入るというハードルの高さから、「やってみたら大変だった。」しか残らないのであれば、それは企画する側からすればやっている意味もなくなってしまう。

カラダ疲れるけど、やって楽しかった。

まずは、そう思ってもらえるように。そして「もう一度、来てやってみたい。」という人が一人でも多くいてくれるように。その積み重ねが、農家さんからすれば小さな田んぼかもしれませんが、知り合った人が来てくれるだけで、農家さんが喜んでくれているのを感じる。そう言った場を年に一度でもいいから、継続して作って行きたいなぁ。と改めて感じたのでした。

みんなで黙々と田植えに集中。

農作業というのは不思議なもので、いつの間にか没頭してしまう時間帯がある。もしかしたら、皆さんもそんな時間帯があったかもしれない。その証拠に、きれいにそして早い時間帯で、今回は田植え体験を無事に終えることができました。

記念に最高の笑顔でパシャリ。みなさま、お疲れ様でした。

24田植え体験の参加メンバーです!

最後は皆さんで懇親会。

毎回なにが出てくるか分からないので、あまり公表しておりませんが、なんだかんだで実施しているお客様と農家さんを交えた懇親会。おもてなしは、その時々で考えていたりするので、内容の濃さにはムラがあります。

ここは、ご勘弁ください。

とは言え、できる限りの事をしようと、さらには他では味わえないような体験にしようと、根本さんもとても協力的です。

今回のおしながき

・根本さんの椎茸入りハヤシライス ← お米は根本さんのお米
・手焼きせんべい
・椎茸入り焼きそば
・塩麹漬イノシシ肉の焼肉 ← これが絶品。
・ひじきと筍の煮物

当日のお品書き

当日の様子を今回ご参加いただいたお客さまから写真をご提供いただくことができたので、その時の雰囲気を交えてご紹介いたします。

絶品塩麹漬のイノシシ肉調理中。

今回、田植え体験を開催するにあたり、根本さんに懇願した根本さんお手製の塩麹漬のイノシシ肉。根本さんのところで開催する場合は、必ず出てくる代物です。

塩麹漬イノシシ肉

またいつも料理長を務める草刈房の駅の萱嶋駅長お手製の、根本さんの原木椎茸入りカレー。しかも根本さんのお米にかけて召し上がれ。

料理長お手製の椎茸カレー

こんな感じで、いつも根本さんのところは料理の素材の量が多くてありがたい。そして美味い。中々味わえない農家めしに、みんな舌鼓を打つ。

最初から積極的なご参加、ありがとうございました!

いつもは食べない口にしない食材があっても、環境が変わったりすると美味しく感じることもあり、日頃食が細いというお子さまも、「いっぱい食べてるね。」というお声もチラホラ聞こえるのが、この農業体験の親睦会でもあります。

親子で楽しむ姿に嬉しくなりました!

そうやって、食を楽しむ時間にもなってくれたらいいなぁ。と感じました。まだまだ至らない点があると思いますが、回を重ねるごとに内容が良くなっている気もしてます。

そして今回新たな発見だったのが、手焼きせんべい体験。これは、銚子の福屋さんから仕入れている煎餅生地を使った体験で、「とりあえず焼いて、お客様に食べてもらう?」という感じで持っていったのですが、うちの料理用が「やってみたい人!」と希望者を募ったところ、意外や意外、希望者が多かった事に驚きました。

手焼き煎餅体験にも積極的ご参加、ありがとうございました!

手焼きせんべい体験は、お子さまから大人の方まで楽しんでいただけるという事を知ったので、次回からは積極的に行くことになりました。

ヤケドには気をつけてくださいね。

農業体験だけでなく、日頃体験できない食に関する体験が、「他にないかなぁ」と頭の中にぼんやりと思いながら、今後も農業体験やっていこと思います。

終始元気な姿に癒されました!

またお客様を交えた賑やかな農業体験を企画していこうと思いますので、引き続き、応援のほどよろしくお願いいたします。