症例紹介①耳鳴り・めまい
当院で施術を行った症例の原因やアプローチ法などをご紹介します。
症状:耳の中に水が溜まったような感じ
耳の中に水が詰まっていてボヤーとした症状。痛みが強くあるわけではないがずっと違和感がある。加えて急な動作(前屈姿勢から身体を起こすなど)をするとクラっとする。顔にも違和感があるとのこと。
主訴はいわゆる「耳鳴り」の症状の一部です。人によっては全く聴こえなくなったりすることで「突発性難聴」と診断されることがあります。
ゴールデンウィークの最中ということもあり、耳鼻科がお休みなのでご連絡いただき来院されました。
耳の構造
耳の構造から考えます。
耳は外耳・中耳・内耳に分類されます。よくある「外耳炎・中耳炎」はその部位に傷がつき、炎症が起きて痛みを発する症状です。耳かきのしすぎでよく発生します。
今回の場合、耳かきを強く行ったことも、痛みもないので炎症によるものではないと考えました。
症状的にも「水」という単語が出てくるので問題は内耳にあると定めました。
内耳の構造
今回の症状では主に音に関わる蝸牛が強く関連します。加えてすぐ近くに半規管もあるので音の症状とめまいなどバランスに関連する症状は併発することが多いですね。メニエール病とか。
施術方法①トリガーポイント療法
原因は後で述べます。耳鼻科ではないので耳の中を観察することはできません。(機材も無いので)
耳の症状で施術する場合、真っ先にアプローチするのはイラストの「胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)」です。
イラストはトリガーポイント療法の関連痛です。(×印を押圧すると紫の部分に痛みや違和感、響く感じが出ること)
右のイラストのように耳の穴のあたりにも関連痛が出ますし、顔全体にも関わります。施術としてはとにかくこの筋肉をほぐします。
解剖生理学
この胸鎖乳突筋は側頭骨にくっ付きます。
この側頭骨は耳の穴も含めた頭蓋骨の一部です。
今回の症状だけはなく、身体の考え方・捉え方として筋肉(骨格筋)は骨についているのでそこを軸にして伸び縮みをします。本来は骨が固定されているので筋肉は十分に伸縮できますが過剰に硬くなると数mm〜数cm単位ではありますが骨の位置がずれます。
その結果その中の構造物、今回ならば蝸牛に圧迫やリンパ液の流れが悪くなるなど負担がかかります。そして、ある一定の負荷が持続的にかかった結果、症状が発生します。
メニエール病もよく原因不明と言われていますが、ほぼ100%の確率でこの胸鎖乳突筋の過剰な緊張があります。その緊張の原因は後ほど書きます。
施術方法②経穴アプローチ
筋肉を緩めることが西洋医学的アプローチとすると東洋医学的アプローチは「経穴(ツボ)」への施術になります。
鍼灸の資格はないので鍼を刺したりはできませんが、圧をかける・刺激するということは指でもできるので問題ありません。鍼でも指でも重要なのは道具ではなくまず基本的な技術知識です。
詳細は割愛しますが東洋医学的にはめまいは「肝虚」「脾虚」がベースにあることが多いです。ざっくりいうと臓が虚することで虚熱が生まれてそれが経絡に波及→波及した経絡の筋肉が硬くなる、代謝が悪くなるなど問題が起こると考えてください。
上イラストにもありますが胸鎖乳突筋上にもバッチリ経穴があります。
何なら経穴とトリガーポイントの位置は一致しています。
経穴のアプローチとしては胸鎖乳突筋上は押圧したり、オイルで伸ばす(筋膜リリース)をするのと関連する手足のツボを押しました。
今回のクライアントの場合、三焦経に問題が起きていたようなので「外関」を押圧。軽い力でも響く感じがあるので「あー、虚熱があるなー」と感じました。
他にも足首とか色々押しました。全身の調整をするには経絡アプローチのが効果的ですね。
原因と考え方
とても重要なのがなぜ起きたのかという「原因」を正しく理解すること。
先にも少し書きましたが筋肉が過剰に慢性的に硬くなるとその付着部の骨を動かしてしまうのでその骨の中にある臓器などに負担がかかる、局所的に代謝が落ちるなどが起こります。(内科疾患のある方はだいたい運動器(筋肉の硬さなど)の問題もある)
とは言っても一人でに筋肉がギュッと硬くなることはありません。硬くなるには様々な理由があります。
慢性的な運動不足やカラダの動かし方が下手などでの局所負担によるものが一般的です。ランナーひざなどスポーツにおける慢性的な怪我や痛みの原因は大概がカラダの動かし方が下手なんですよね。下手なので局所負担が溜まってキャパオーバー→痛み、という流れです。何も難しくはないですね。
今回の症状でのポイントは「脳神経」です。
キーマッスルである胸鎖乳突筋は体表で触れることができるメジャーな筋肉ですが、実は脳神経の影響があります。第11脳神経である「副神経」
姿勢不良で前屈みになると筋肉の硬さ→神経刺激、という流れで脳神経を刺激します。そして脳神経が過剰に刺激されるとさらに筋肉が硬くなるという悪循環に陥ります。
脳神経というくらいなので12対ある中には自律神経繊維を含むものもあります。(メジャーなのは第10脳神経の迷走神経)
そのため、他の脳神経への影響も考えられますね。だってすぐ隣にあるんだもの。
内臓も筋肉も神経も隣接している構造はお互いに影響を及ぼすことが大いにあります。あまり解剖生理学の本には書いていませんが。
そして、姿勢不良だけでなく精神的ストレスも大きく関連します。
今回のクラインアントの場合、元々デスクワーカーであることとゴールデンウィークでご家族がずっといる(お出かけも時期的に難しい)のでそれがストレスになっていたと考えられます。これはしっかりとお話を聞かないと見逃しちゃうポイントです。
身体を解剖生理学的に照らし合わせて診るのは当然でその周りの環境(生活環境、仕事、人間関係などなど全て)や既往歴など時系列で物事を鑑別することが重要です。
ちなみに顔面部の違和感はこれも脳神経の一つ「三叉神経」による影響が考えられました。耳に近いですからね。
結果
結果は施術直後はやや残存していたものの翌日LINEで治った、との連絡がありました。筋肉が緩めばそこから血液含め代謝がよくなるんで正しく内耳の機能が戻ってくるんですね。
こんな感じで耳鼻科領域や消化器疾患なども筋肉の硬さをなくすことで改善することもできるので整体を選択肢の一つとして考えてもらえると嬉しいです。
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