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「発達性トラウマ障がい」はDMS-5に掲載されるのを見送られた名称とのこと

この本もっと早くに出会いたかった。

発達障害とトラウマ

”虐待やネグレクトの被害により「発達期」にトラウマを負ってしまった子どもたちの支援は特別な難しさがあります。このような子どもたちが抱えてしまう問題のことを「発達性トラウマ障がい」と呼ぶことがあります”

『発達障害とトラウマ』より

「発達性トラウマ障がい」はDMS-5に掲載されるのを見送られた名称とのこと。

あなたみたいに上手く子育てができない

以前あるお母さんから「あなたみたいに上手く子育てができない」「どうしたらそんなふうに楽しく育児ができるの?」と言われたことがあります。そのお家ではお子さんが小さい頃からパパとママが大きな声でよくケンカしていました。わたしがときどきお邪魔するほんの短い時間でも、ケンカがはじまることがありました。わたしはそんなとき。ケンカするご夫婦は止められないけど、その場に子どもを居させたくないなと思い、ケンカがはじまるとよく子どもを庭に連れてボール遊びしたり、近くまで買い物に行くのだけど付いてきてくれる?と誘って散歩に出かけたりしていました。

「赤ちゃんでもパパとママの声は聞こえているし、言葉がまだ話せない子どもでも会話の内容はよくわかっているのよ」と伝えても、そのご夫婦のケンカが収まることはありませんでした。

ここでいうケンカとは、殴り合いではなく、口喧嘩で意見の食い違いや自分の思うように相手が「Yes」を言わなかったときに、相手の文句を言ったり、過去の嫌なだった経験をもう一度引っ張り出してきて、あーだ、こーだ、言ったり、「だからあなたはダメだ」とか人格否定がはじまったり、しまいには泣き出したり。

これを子どもの前でするというのは、いわゆる「虐待」にあたります。虐待が心配だなと思った方は、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」へ電話を。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dial_189.html

厚生労働省

こんな両親の姿を小さな頃から日常的にみていた子どもにとって、そこ(両親がいる家)は「安心できる場所」ではなく、いつはじまるかわからないケンカにビクビクと怯えながら過ごす危険な場所だったのではないかと思います。

剣山のような針千本でザクッと刺されたように痛くなる

その子は、4、5歳の頃にはよく癇癪を起こして、声を荒げたり、泣き喚いたり、周りの大人を叩いたりしていました。あるときお母さんが「うちの子最近『お腹が痛い』ということがある」「今度病院で診てもらおうと思ってる」というので、「病院で診てもらって原因がわかるといいね」と伝えました。それを聞いていた子どもが、病院に行く前に、わたしにお腹を見てもらいたいと言うので、別室に移動してお腹を見せてもらいました。

どの辺が痛いのか、どんなふうに痛くなることがあるのか尋ねると、「剣山のような針千本でザクッと刺されたように痛くなる」とのことでした。この言葉を聞いたとき、とてもショックでした。まだ4、5歳の子が、こんな痛みを感じているなんてと。

どんなときに痛くなるの?と聞くと「習い事で先生に怒られたとき」「ぼくはその習い事に行きたくないけどママが行きなさいっていうとき」と言うので、そのお腹が痛くなった時はどうしてるの?と聞くと「そのときは痛いのをじっとガマンしている」と言うのです。

「痛い時は『痛い』って言っていいんだよ」というと、「痛いって言うと余計に怒られるから言えない」と言っていました。「今度ね病院の先生に診てもらうそうだから、その病院の先生に、いま言ったみたいに、どんなときにどんなふうに痛くなるのか言える?」と聞いて「言ってみる」とのことでその日は終わりました。

わたしの子育てがうまくいかないのは子どもに発達障がいがあるせいだ

その後、病院でどんな様子だったのかわからないままでしたが、6歳のころ会ったときもいつものかんしゃくがはじまりました。お母さんは子どものそれを見たくなくて、なにも言わずプイッと別室へ行ってしまいました。そのころお母さんにはうつ症状がでていて通院もしているようでした。お母さんは子どもに発達障がいがあり、そのせいで自分がうつになったのだと思っていたようです。「わたしの子育てがうまくいかないのは子どもに発達障がいがあるせいだ」と思いたかったんでしょうね。でも、子どもの検査結果は「発達障がい」の疑いはないとされていたようで、どうにもならない育児につかれはてている様子でした。

子どもが小学校に入るようになっても、1年生の半分は学校に行けなかったそうです。2年生で転校しましたが、初日から行きしぶりをみせて、GWが明けるころにはもう学校には完全に行けなくなってしまったそうです。

もう少し早く「「発達性トラウマ障がい」のことを知っていたら

その子やお母さんがいまどのように過ごしているかわかりません。もう少し早く「発達性トラウマ障がい」のことを知っていたら、お母さんにもう少し違う伝えかたで、伝えることができたかもしれないなぁと思うのです。

過去に戻ることはできませんが、これからもし、あれ?と思うことがあったら、「発達障がい」というラベルを貼るのが目的ではなく、どんなことで困っているかに焦点を当て、その困りごとをなんとかするために、どんなことができるだろうかをいっしょに考え、そのために必要なら診断を受けてみたり、対処法の知識を得てみたりしていきたいと思いました。

ライター|山咲サクラ
女性のための相談員|産業カウンセラー|キャリアコンサルタント
会社員を寿退社後、出産・子育てを経てパートにて女性センターで働きはじめる。転居後パート・派遣社員を経てフルタイムにてNPOの伴走支援をする公益法人で働く。やりがいはあるが残業に追われた毎日を一新しテレワークにて女性起業家支援を企画・運営。子どもの巣立ちを機に現職にて再スタート。[Twitter] @ymsksakura

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