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脱皮の苦しみ、かも。:2021年をふりかえりつつ。

2020年、新型コロナウィルス禍に悩まされ、今年はどうなるかと思っていましたが、やはりこれに振り回された一年ではありました。すごく充実していました。一方で、時間に追われて、なかなか書けなかったのは、すごく口惜しいことでもありました。あと、健康維持に向き合わなければならない事態にも直面した一年でした。

 1. 講義のこと。

まずは、本職のことから。学びのありようについては、先日も書いたので、シェアしときます。

メイン科目のオンデマンド化。しんどかった。

2021年度、私のメイン科目である企業行動論と企業発展論は、オンデマンド開講になりました。すべての回について動画を拵えました。

図1 企業行動論の進め方

企業行動論に関しては、図1のような感じで。企業行動論に関しては、さすがに個別リプライはできませんでしたが、Stand.fmで音声リプライ配信は何とかできました。後期の企業発展論に関しても、基本的には同じ感じでしたが、Stand.fmでの音声配信までは手が回りませんでした。

企業行動論は、自分のなかで講義の枠組がある程度まで固まっていることもあって、何とかやりきれた(前期はやはりエネルギーがまだあるw)のですが、企業発展論は2020年度に大きく内容変更したこともあって、修正しつつの動画制作でした。

正直なところ、動画を通じて学ぶというのがどれくらい(学ぼうとする人にとって)効果的なのかはわかりません。何なら、人によって違うんやろなくらいに思ってます。文字ベース(教科書、講義noteなど)のほうがいいという人もいるでしょうし、映像ベースのほうがいいという人、音声ベースのほうがいいという人、それぞれであるような気がしてます。そして、ライブのほうがいい人、コンテンツのほうがいい人、それぞれいると思います。

なので、個人的には「学ぶ人が、自分で組み合わせて学べる」ようにするのが、ひとまず良いかなと思っています。本来、大学って、自分でどんどん学んでいくべき場です。講義はその入り口であると同時に、自ら学んでわからないことなどを質問したりする場というのが、個人的な考え方です。講義素材は、そのためのものであって、単に知識を得るだけじゃなくて、本来はそこからそれぞれが学びを深めていってもらいたいと思ってます。

おそらく、2021年度は対面がベースになるでしょう。そうなってくると、すれば、オンラインでの学びを経験した学生さんたちからの、対面授業に対する眼はシビアになるのではないかとも推測しています。つまり、オンラインでできるのに、わざわざ対面でやることの意義が問われるわけです。なので、2021年度はせっかく拵えたオンデマンド講義素材を活用しながら、対面の時間は対面でしかできないことをやりたいと思っています。

デザイン×経営系の科目たち。

ビジネス実践Bは数年たってきて、サービスデザインのプロセスを一とおりやってみる授業として、とりあえず何とか成り立ちつつある感じ。ただ、そろそろ企業さんからお題をもらってやってみたい気もしてます。

特殊講義K(デザイン経営の基礎)は、時間割の関係で人数が少なかったので、最近のワークはそれなりにていねいにできてるかも。ただ、この科目はもう少し時間をかけて練りたい。どちらかというと、将来的には教科書を準備する感じで。今、そんな時間ないけど(笑)

そして、2022年度からは新しい授業、教養特殊講義Cが始まります。全学開講対象科目(ただし、どの学部がこの科目を開講科目に含めるかは、学部の判断のようです)で、経営学部を含めて5つくらいの学部の1年生以上が対象。理工学部の冨田義弘先生とご一緒させていただき、近畿大学が開発している「バイオコークスを活かした新しい生活世界を構想する」というテーマで開講します。ベースはもちろんサービスデザイン。ビジネスモデルというか、「その提案によって、どんな価値の循環が生まれるのか」までを考えて提案してもらおうと思ってます。

もう少し、負荷を少なめにやりたい。笑

昨年今年といっぱいいっぱいだったので、来年度はもうちょっと負荷を少なめにやっていきたいです(笑)変わり目というのは、だいたい大変なんですが、まぁこの2年それなりには頑張ったと思うので、来年あたりからもう少しなめらかにやっていければなぁと願ってます。

2. ゼミのこと。

5年目の価値創造デザインプロジェクト。13th。

ゼミに関しては、先日、合同ゼミがあったこともあって、だいたい書き尽くしました(笑)

毎年よくやってくれてると思うのですが、今年はかなり「カタチに」してくれてるように感じています。もちろん、それを学問的に捉え返すという点では、まだまだ足りない、もとい、なおさらに期待するところ大なのですが、それでもよくがんばってくれてるな、と。

ほんとに、4回生になってもPJ続けてもらいたいとも思ってます。あと、自分たちがやってることをもっと発信していってほしいな、と強く思ってます。特に就活とかで。それだけのことはやってるので。

それにしても、ほんとにいつもプロジェクト先のみなさまにはお世話になっています。あらためて御礼申し上げます。ありがとうございます。どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。

いいスタートを切れてる感じ。14th。

2021年10月に選考させてもらって、メンバーが決まった14th。さっそくビジコン(課題解決型近大ビジコン)でゼミ活動を開始しました。5つのお題に、それぞれ1チームずつ参加してるのですが、けっこう自分たちでリサーチしに行ったり、Miro使って議論進めたりと、動いてくれてます。

年が明けたら、ビジコンの本大会。そのあと、サービスデザインの学びも並行してやっていく予定。この勢いを、うまくプロジェクトにつなげていきたいと思ってます。

卒論。毎年たいへんではある(笑)12th。

ひとまず、期限内には全員ちゃんと提出できました。それと、今年は全員「通し稽古」をできました(笑)

ただ、これはメンバーのせいというわけではない気もするのですが、目次構成という点で、かなりまずい状況のメンバーもいました。卒論って、作品なので、それがどういう構成になっているのかというのは、ものすごく大事です。ここのところを伝えきれてなかったのかなっていう反省はあります。オンラインで伝えてはいたはずなんですが(笑)

4回生は、ほぼすべての回をオンラインでやりました。報告という点だけでいえば、場所の制約もない(通信の制約はある)し、報告の入れ替えの際の時間の無駄もないので、便利ではあります。それに、今年は東京でインターンに行ってるメンバーもいるので、そういう点でも効果はありました。

その東京にいるメンバー、吉村佳樹のnote。いいnoteなんで読んでやってください。


その一方で、やっぱりオンラインでは伝わりきらんところもあって、そこはなかなか難しいなとも感じさせられました。

それにしても、12thはいまだに一度も合宿に行けていません。何とか卒業までに一度くらいは行きたいなって、祈るような気持ちで願ってます。

3. 研究&思索のこと。

今年は、いろいろインプットの機会や思索の機会が数多くありました。ただ、論文や報告というかたちになったのは、それほど多くなくて、ここは大きな反省点です。

公にできたこと。やりかけてること。

今年は、共著の本1冊(第10章を担当)と学会の審査ありプロシーディング1本、その学会報告にとどまりました。

こちらの本では、第10章「サービスデザインの組織導入」を執筆させてもらいました。翻訳がないので参照文献に入れてませんが、私が大学院時代以来ずっとお世話になっているブライヒャーの統合的マネジメント構想をかなり援用しました。正直、ここまでしっくりはまるとは思ってませんでした。これを書かせてもらったおかげで、ようやくサービスデザイン / デザイン経営について、ちゃんと書いていけるかなという思いが、ちょっと生まれてきました。

もう一つ公にできたのは日本マーケティング学会での報告と、そのための審査つきプロシーディングでした。

タイトルは「価値循環思考とサービスドミナント・ロジック:エコシステム志向的な価値創造をめぐる概念整理のために」。

ニックリッシュ由来の価値循環思考と、サービスドミナント・ロジックは相性がいいという直感は、かなり前からあったのですが、それをちゃんと論文にはしてきていませんでした。ようやく、それを活字化できました。プロシーディングなので、論文とはいえませんが、ひとまずまとまったかたちで公にできたのはよかったです。

あと、学会ではないですが、Xデザインフォーラムでも報告させてもらいました。

「デザイン文化と自由:機能性、審美性、倫理性」というタイトル。後述するデザイン文化の会というクローズドなオンライン勉強会から生まれたものです。ここで話させてもらったことは、そろそろ活字にする予定です。すでにnoteにはまとめてます。


もう一つ、本来であればそろそろ脱稿しないといけないんですが、まだできてない論文(ある学会の叢書の分担執筆)があります。これは、もともとの専門であるドイツ語圏の経営学史にかかわるもの。文字数制限があるのと、通史的な把握とともにそこから何を見いだすのかという原論的課題があって、なかなかしんどいです(笑)けれども、今までちゃんとこういう仕事をしてなかったので、これはちゃんとクリアしとかないといけません。年跨ぎの仕事になってしまいましたが、松の内くらいまでには仕上がるようにがんばります。

思索の場。

今年も、昨年に引き続き、安西洋之さんたちと、「文化の読書会」「デザイン文化の会」という2つのオンライン読書会を続けています。

文化の読書会では、こないだまでフェルナン・ブローデルの『物質文明・経済・資本主義』の第1巻(2分冊)を読んでいました。これを読み続けたことは、すごく重要でした。

そして、もう一つのデザイン文化の会。こちらは、マンズィーニのあと、クリッペンドルフの『意味論的転回』を読み続けています。

月1よりも若干頻度が多い感じなので、まあまあ大変ではあります(笑)けれども、ここでの議論も楽しいし、何より自分の思索が拡がっていくのが嬉しい。2つとも、2022年も引き続き楽しみながらやっていきたいと思います。

そして、もう一つ。Xデザイン学校大阪分校パーソナルコース。こちらも月1でのオンライン開催。これについても、すでにnoteに書いてますので、よろしければ。

ここも、ほんとに学びの多い場です。日曜日の午後、半日丸々オンラインでやってるんですが、先生方の講義(どちらかというと、報告に近い)もメンバーのみなさんの報告も、どれも充溢していて、時間があっという間。私の場合は、実践的なテーマではないだけに、そこで何を報告するのかを考えるところから思索が始まってます。報告するときも、けっこうドキドキしてるんですが、みなさんからいろんなコメントを頂戴できて、すごく勉強になっています。

2022年度も開講されるのであれば、続けて受講したいなあって思ってます。

そして、サービスデザインネットワーク日本支部(SDNJ)のワーキングループ「サービスデザインシステムの描き方」。12月にはこんなイベントもありました。

武蔵野美術大学 / コンセントの長谷川敦士先生、コンセントの赤羽太郎さん、パーソルの高橋靖正さん、私の4人から始まって、最近はFABRIC TOKYOの峯村昇吾さん、ALL YOURSの中込勇斗さんなどにも加わっていただき、どんどん充実の度合いが増してきた感じがします。

ここからも論文とか出せたらいいねって話にもなってて、来年もどんな展開になるか楽しみです。

2022年にやりたいこと。論文を書く(笑)

2020年、2021年と、新型コロナウィルス禍への対応で慌ただしかったとはいえ、論文をなかなかちゃんと書けなかったのは、われながらちょっと愧じ入るところがあります。ただ、いろいろ“発酵”“醸成”しつつあるので、2022年はちゃんと活字化していくことにエネルギーを注ぎます。「注ぎたいと思います」ではなく、あえて書きました。注ぎます。

価値循環やエコシステム、サービスドミナント・ロジック、そしてサービスデザインについてもですが、とりわけ企業者的姿勢(Entrepreneurship)についての議論は、そろそろちゃんと活字にしておきたいと考えてます。

がんばります。

4. 公職のこと。八尾市産業振興会議。

2020年から引き続いて委嘱されている八尾市産業振興会議の委員&座長職。ようやく先日、提言書もまとまりました。ほんとに、委員のみなさんの積極的・能動的なMakers Mindのおかげです。ただただ感謝でいっぱいです。

前の期ほどの華やかさはないかもしれませんが、前の期の報告書で打ち出されたMakersのコンセプトをどうやって具体化するのかという点については、いくつか提言として示すことができたのではないかなと。

年内に八尾市長に提出する予定でしたが、議会日程の関係で年明けになりました。これはやむを得ません。提出が終われば、お役から放たれます(笑)八尾市の産業振興会議は、ほんとにみなさんがどんどん意見やアイデアを出してくださいますし、それを先行的に実施もしてくださるので、若輩の座長にとっては心強いこと、この上ありませんでした。その点で、すごく魅力的な会議でした。次期も、ぜひこのMakers Mindが受け継がれていくことを願ってやみません。

5. 人生初のラジオ出演。

2021年で、個人的に特筆すべきできごとのひとつが、渡邉康太郎さんがDJをつとめておられるTAKRAM RADIOへの出演でした。

いわゆる公共の電波に出演させてもらうのは、これが初めて。自分の声をずっと聴くのはしんどいので、ちゃんと聴けてないんですが(笑)、でも康太郎さんとの対話はすごく楽しかったです。

渡邉康太郎さんのことは、『コンテクストデザイン』で存じ上げていて、いつかはお目にかかりたいなって思ってたら、2020年12月に木村祥一郎さん経由でお目にかかる機会を得ることができました。

そのときのことは、こちらに。

けっこう多くの方が聴いてくださって、その時に出させてもらったお題にも多くの方がTwitterで発信してくださいました。ほんとに嬉しかったです。

あと、この出演で嬉しかった、というか、ちょっとだけ誇らしかったのは、私の愛読書の一つ、内田義彦『読書と社会科学』を紹介できたこと。このあと、この本がいくつかの場所で読まれていたようで、もしかすると私とは無関係かもですが、それでも共鳴みたいな感じで嬉しいことでした。

ちなみに、この本はすごくいい本なので、ゼミメンバーは必読。

6. 能のこと。

今年も途中で緊急事態宣言が出されたために、観能の回数は限られました。けれども、2020年に比べれば、観ることができた回数は少し復した感があります。

すべてをあげることはできませんが、印象に残った舞台をまず列挙してみます。

2月19日  大槻文藏『砧』
2月28日  浦田保親『吉野琴』
6月26日  梅若万三郎『景清』☆☆☆
7月22日  浦田保親『景清』
9月25日  浦田保親『重衡』
10月2日  塩津哲生『伯母捨』☆☆☆
10月17日   大槻文藏『維盛』
10月18日   大槻文藏『卒都婆小町』(舞囃子)☆
10月24日   片山九郎右衛門『安宅 延年之舞 勧進帳』
10月24日   浦田保親『定家』☆
11月13日   観世清和『定家』☆☆ 
11月21日   大槻文藏『碁』
11月27日   大槻文藏『善知鳥』☆☆☆
12月12日   大槻文藏『菅丞相』
12月22日   大槻文藏『葛城 大和舞』☆☆☆

どれか一つを、と言われると難しいのですが、塩津哲生さんの『伯母捨』かな。これについては、『能楽タイムズ』2022年1月号に単評を載せていただきました。万三郎さんの『景清』も、少ない動きで、すべてが削ぎ落されたあとに、万三郎さんと景清が重なり合う感じ。ツレの青木健一さんが、万三郎さんの景清の姿を全身で受けとめようとしているかのように映った背筋も印象的でした。

文藏さんがすばらしいのはいつもなので、かえって贅沢にすぎるわけですが、浅見真州さんの逝去代役の『善知鳥』は練られた動きから滲み出てくる哀感がすごくて、今までに感じなかった曲趣を感じることができましたし、明星大学の村上湛先生にお声がけをいただいて観る機会を得た明星大学能楽鑑賞会での『葛城 大和舞』も、ほんとに細部まで神経の行き届いた身体扱いや謡で、すばらしかったです。☆はつけてませんが、復曲三番能も文藏さんの身体扱いの凄さや、曲への解釈が舞台にあらわれていて、どれもおもしろかったです。

そして、今年ちょっと集中的に観たのが、浦田保親さん。身体の居ずまいがすごく整っていて、ひじょうに姿がいいんです。復曲の『吉野琴』などは曲趣が軽やかということもあってか、のびやかな感じで楽しかったです。一方、京都観世能で舞われた『定家』、姿は素晴らしかったですし、間然とするところはなかったのですが、やや後半になって単調になってしまった感も否めませんでした。ノリと抑制とがせめぎ合うような感じになると、もっと素晴らしい舞台になりそうな気がしました。何年か後に、ぜひとも再演してほしいなと思います。

そして、観世清和さんの『定家』も印象に残る舞台でした。ここだけ採りあげるのはおかしいんですが、初段で舞い上げた序ノ舞、甲之掛の小書が付いていて、序を五つ踏んだのですが、ここがすごく豊かで、序というものの効果を思い知らされた感がありました。

文藏さんも、もう満で80歳とのこと。若々しいので、そうはまったく感じないのですが、今、最盛期という感があります。このnoteを読んでくださってる方で、能を観たことがないという方は、ぜひ文藏さんの舞台をご覧になっていただきたいと願ってます。能って、美術館に陳列されるような「古い」ものではなく、古典ではあっても現代に生きる芸能だというのを感じてもらえると思います。

2022年も素晴らしい舞台にたくさん出会えることを願っています。

7. そろそろ〆ます。

もう12月31日の23:52になってしまいました。こればっかりは、年内に書き納めたいので、そろそろ〆ます。

2021年は心臓の血管の狭窄が見つかって(狭心症)、カテーテルでステントを入れる治療(手術)を2回受けました。それまで(GW前後から)、ちょっと歩いただけで胸が締め付けられるような痛みがあったのですが、おかげさまでその痛みは一切なくなりました。こんな状況下で、すごく早くに入院と手術をしてくださった病院、先生方には感謝しかありません。

もう45歳なので、ちゃんと健康に気をつけながら、2022年も楽しい一年になるように過ごしたいと思います。

2021年も、ほんとにありがとうございました。
2022年も、どうぞよろしくお願いいたします!

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