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伍魚福のビジネスモデル〜その1「ファブレス経営」〜

子供の頃、父から「伍魚福は工場なきメーカー」だ、と言われて、全く意味がわかりませんでした。
メーカーなのに工場がない、ってどういうこと?
伍魚福という会社は実態がない虚業?
なんか怪しい、とちいさな胸を痛めていました。

大学を出て、伊藤忠商事に勤めました。
法務部に4年半勤務した後、アパレル部門に異動して2年半勤務しました。

気がついたのです。
アパレルメーカーも工場なきメーカーであることに。

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アパレルメーカーは糸を作ったりしません。
生地の種類や色を指定しますが、実際に生地を織ったり、編んだりすることはありません。染める工場も別です。
ブランドをつくったり、デザインしたり、パターン(裁断の型)をつくったりしますが、実際に生地を切って、縫製して商品にするのは、委託先の縫製工場です。
アパレルメーカーは、この他にも品質管理をしたり、物流の手配をしたり、売場を作ったりします。

最近アパレル業界で主流のSPA(製造小売業)でも、販売は自らがやるものの、生地製造、縫製は外注であることがほとんどでしょう。

つまり、アパレルメーカーは「ファブレス」=工場なきメーカーなのです。

伍魚福はもともとスルメ(乾燥させたイカ)の加工業からスタートしました。スルメを焼いて伸ばして味付けして、「のしいか」をつくったり、伸ばしたイカにウニのペーストを塗ってサンドイッチ状にし、乾燥して裁断した「うに松葉」をつくったりしていました。

自らのブランドを冠したパッケージを作り、酒販店に卸す事業を始めた昭和30年代後半から、協力工場から製品をバルクで仕入れてリパックする業態に変わっていき、種類が増え、販路が拡大したことで、最終パッケージまで協力工場にお願いするビジネスモデルに変化していきました。

昭和50年代後半には、「工場なきメーカー」と父が言っていました。「ファブレス」という言葉が一般的でない時代です。かなり先進的なモデルを確立したと言っていいでしょう。

そのおかげで、多品種少量の品揃えができ、伍魚福の基準に合う「すばらしくおいしいもの」(経営理念より)だけを製造、販売することができるのです。
ドライ珍味から、チルド珍味に展開を広げたり、海産物・豆菓子から、肉製品、チーズ製品などに展開できているのも、このビジネスモデルがあってのことです。

単品で大量生産する商品ができれば、工場を作ることもありえますが、「すばらしくおいしいものを造り、お客様に喜ばれる商いをする」という経営理念の実現のためには、「ファブレス」というビジネスモデルが必然だった、といえます。

阪神大震災の後、私は伍魚福に入社しました。
壊滅的な被害を受けた神戸市長田区に位置しながら、震災の1週間後くらいから商品出荷を再開することができたのも、工場が全国に分散していたからです。
結果的に「ファブレス」がリスク分散にもなっていたから、今の伍魚福、今の私たちの仕事があるのです。

支えていただいている全国の協力工場の皆さんに感謝です。

最後までお読みいただきありがとうございました! 伍魚福の商品を見つけたら、是非手にとってみて下さい。社長のいうとおりになってないやないかーとか、使いづらいわー、とか率直なコメントをいただけるとうれしいです。 https://twitter.com/yamanaka_kan