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概念を説明することは難しい


概念の例えの曖昧さの特徴

概念の例えが曖昧だと、具体的なアナロジーやメタファーが欠如するために、抽象的な概念を適切に伝えることが難しくなります。一方で、概念の例えが曖昧でも、異なる文脈で解釈されて新たなアイデアや理解が生まれる可能性があります。

説明の解像度

次の事例は、ある企業の人材育成開発に取り組んだ際のエピソードです。新規事業部は若い社員が多く、上司は部下とのコミュニケーションをとても重視していました。上司はチームワークの大切さを理解してもらうために、大好きな野球を用いて部下に説明をしていました。事業部のヒアリングを進めていくと、残念なことに上司の説明は部下の理解に結びついていないことが判明しました。その理由は部下たちは野球に興味がなく、説明からもイメージができていなかったのです。さらに上司は部下たちが野球に興味が無いことを把握せずに説明をしていました。そのため、上司と部下の間いに「理解と共感」の大きなミスマッチが生じていました。

この事例から見て取れるように、コミュニケーションは相手の理解や興味を考慮することが非常に大切です。お互いに共通の話題を見つけることができれば組織全体の理解と共感につながっていきます。そのため本件の解決は、まず上司の方に事実を伝え、状況を理解してもらいました。次に、若い社員達(主に野球に興味がない)とのヒアリングで把握した趣味やトレンドを参考に共通するものを見つけてもらい、説明で用いる具体例の再設定をおこなってもらいました。その結果、事業部内の理解と共感が広がる「説明の解像度」を大幅に改善することができました。

木?森?鳥の目?とは一体

「木を見る〜」「森を見る〜」「鳥のように俯瞰した目で〜」といった比喩的な表現は概念を直感的に理解しやすい一方で、このような比喩的な表現は、具体的な説明が不足しているケースもあります。なぜなら、人は空を自由に飛べる訳でもなく、日常的に森や木がある環境にいる訳でもないからです。そこで、比喩的な表現で気を付ける点は以下の3点です。

  1. 定型表現の限界: 「木を見る〜」「森を見る〜」「鳥のように俯瞰した目で〜」といった表現は概念を抽象的に捉えるため、具体的なイメージや理解につながらない可能性があります。

  2. 解釈の幅広さ: 解釈によっては意図が伝わり難く、受け手が自分なりの解釈を加えて異なる解釈を生むことがあります。そのため文脈が整っていないと理解のミスマッチが生じることがあります。

  3. 説明の省略 : 比喩的な表現は文脈が省略されやすくなる傾向があります。伝え手が比喩的な表現を用いる際は、具体的な言葉を交えて説明することが重要です。

聞き手の背景や経験に配慮した「場(環境、雰囲気)」づくり

コミュニケーションの目的は相互の理解と共感を育むことです。特にビジョンやアイデアのような抽象的な概念を伝える際には、受け手の属性(世代、年齢、業種業界など)を考慮した言葉や事例を用いることが大切です。聞き手が特定の事象や状況に触れたことがない場合、別の具体的な例を交えるなどして理解を深める工夫が必要です。聞き手も疑問や不明点を遠慮せずに伝えことが大切です。そのためには、伝え手と聞き手が相互にコミュニケーションがおこなえる場(環境、雰囲気)づくりが伝え手に求められるパフォーマンスです。ちなみに人材育成開発の分野において、研修のトレーナーやファシリテーターは場づくりの理解とスキルが求められます。

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