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コンセプト × 道


日本の「道」がつく言葉の概念

今回、記事のテーマに取り上げた「道」は、道路を指すものではなく武道や茶道などの「道」で、この言葉の文脈を紐解いていきたいと思います。

日本で「」が付く言葉には、単なる技術や行動の指針だけでなく、精神的な成長や倫理的な原則にも焦点が当てられています。例えば、剣道や柔道などの「武道」は戦闘技術だけでなく、行動や精神の成長も求められます。また、茶道や華道は見立て方だけでなく、完成させるまでの所作が要求されます。このように日本の「道」は、礼儀や調和など日本人が美徳とする所作を概念をカタチにしています。

日本人のアイデンティティの「道」

忘れてはいけない「道」が神道の「ヤオヨロズ」(八百万)」の概念です。この概念は、季節の変化や自然界のあらゆるものに神々が宿るというもので、日本人の生活様式だけでなく考え方に大きな影響を与えています。四季と天変地異という自然が見せる真逆の姿は、自然に対する畏敬の念となって自然との調和と共生、そして他助と共助を重んじる価値観につながっています。

ヤオヨロズ

「八百万(ヤオヨロズ)」は、季節の変化や自然界のあらゆるものに神々が宿るという概念です。この「八百万(ヤオヨロズ)」という表現は、人間の理解や想像力を超越する世界観を表したもので、世の中は単純な二元論では説明しきれないほど多様で複雑であることを示唆しています。

」は、作法や思想を体現する「」で概念を表現します。身近な「型」はマナーやモラルで、挨拶は相手に敬意や友好の意志を示すことで相手の警戒心を解き、心理的な距離感を縮めることができます。地域の「型」は、地域独自の習慣や風習、社会的ルール、そして文化的なアイデンティティを形成します。例えば、食文化、方言、伝統工芸品、祭りなども地域の「型」の一部です。

「ムラ(ウチ)と「ヨソモノ(ソト)」

地域社会やコミュニティの内部を「ムラ(ウチ)」、そこに属さない外部の人を「ヨソモノ(ソト)」と区別することで、外部(ヨソモノ)から内部(ムラ)への影響を抑制し、地域の「型」を維持する役割を果たします。

例えば、地域外の人が地域のコミュニティに移住や村おこしなどで参加する場合、地域内の文化や慣習に十分な理解を示すことが求められ、地域社会に適応するためには地域の暗黙の了解やルールに従う必要があります。このような意識は、地域の価値観や文化の維持に寄与する一方で、閉鎖的な態度や排他性が強すぎると、ヒト、モノ、コトが限定的になります。その結果、地域の発展が阻害され、地域の魅力や競争力の低下を招く原因となります。

企業にもある「型」

このように「型」は暗黙の了解として共有され、コミュニティの一体感や連帯感を高め、集団の秩序や安定に貢献します。その一方で、「型」を守ることが目的となってしまい、時代の変化に対応できず成長を阻害する要因にもなります。このような「型」は、企業にも当てはまります。

閉鎖的な態度が強く、外部からの参入を妨げるようなルールや慣行があると、企業内でのイノベーションが制限される恐れがあります。また、閉鎖的な姿勢は社員の考え方や行動に影響を与え、新しいアイデアや異なる視点に対する受け入れが難しくなることで、社内での人材の流出が加速する可能性があります。一方で、外部からの参入を歓迎する開かれた姿勢があると、社内の活性化や成長が促進されるます。外部からの新しいアイデアや技術、人材が導入され、社内コミュニティの発展に貢献する可能性が高まります。

企業の文化や社風

企業の「型」は、企業の文化や社風として表現されます。これらの概念は、組織内の価値観、行動規範、および共有された信念や慣習など、組織のメンバーが共有する意識や行動のパターンを指します。これは、組織のリーダーシップ、経営理念、歴史、および業界や地域の文化など、さまざまな要因に影響を受けたり与えたりします。

企業の文化は、組織の特徴や強みを反映し、組織の方針や目標の達成に向けた行動を導く役割を果たします。例えば、ある企業の文化がイノベーションや柔軟性を重視している場合、その企業のメンバーは新しいアイデアを積極的に提案し、変化に対応する柔軟性を持つことが期待されるでしょう。

企業の社風は、その企業独自の雰囲気や働き方を指します。これは、組織の価値観や文化が具体的な行動や意思決定にどのように反映されているかを示します。例えば、ある企業の社風がフラットな組織構造を重視している場合、上下の階層が少なく、意見の自由なコミュニケーションが奨励されるかもしれません。

企業の「型」としての文化や社風は、組織全体の運営や成果に影響を与える重要な要素です。良い企業の文化や社風は、従業員の満足度、モチベーション、定着率を高め、生産性やイノベーション力を向上させることが期待できます。

自分たちの「道」や「型」を振り返ることは、自己認識を深める貴重な機会となります。これによって、自分たちのアイデンティティや慣習を再認識し、個性や強みを見出すことができます。また、言語化できていない概念を読み解くことは、自己理解を深めるための手がかりとなります。また、思い浮かんだアイデアや違和感を言葉にすることで、自己の内面や外部の環境との関係性をより明確に理解することができます。それによって、方向性や行動の意味を再考し、より意識的な選択が可能になるでしょう。

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山名秀典

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