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子どもを産むたび出世が遅れる女性地方公務員

今回は、女性の地方公務員が子どもを産むたびに出世が遅れていくという役所の慣例について、ご紹介したいと思います。※公務員は恵まれているというご指摘もあると思いますが、実例としてご紹介します。


(生涯年収と年金)
社会にでて働くと月々の給料と業績に応じたボーナスをもらうことになりますが、働き始めてから退職するまでもらった労働対価の総額を生涯年収というそうです。
あるところのデータによると男性の生涯年収は約2.7億円、女性は約2.2億円となっていて、約5千万円の格差があります。
これに加えて、退職金をもらうことになりますが、退職金は退職時の基本給をベースに支給することとなるので、生涯年収が男性の方が高いことから退職金も男性の方が高いことが想像できます。
さらに年金は、生涯支払った保険料に応じて支給されるので、生涯年収が高いということは支払ってきた掛金も高いので、65歳以降にもらえる月々の年金額も男性の方が高くなります。

(地方公務員の出世事情)
地方公務員は、一般的に初級(高卒)と上級(大卒)に分かれており、青森県の例では、採用されたときは「主事」、そこから昇任(出世)すると「主査(係長級)」、その後は「主幹(班長級)」、「総括主幹(課長補佐級)」、「副参事(課長級)」、「課長(総括課長級)」、「次長」、「部長」というように上がっていきます。
青森県の場合は、上級の場合は主事から主査に上がるのに10年、その後は総括主幹までは12年程度で上がっていき、それから先は能力次第というのが一般的かなと思います。
あくまでも私が在職していた当時の状況なので、現在は、定年延長や人件費削減などの理由でもっと遅くなっているかもしれません。

(出産休暇と育児休暇で出世が見送りに)
私の妻は地方公務員をしています。首都圏の国立大学を卒業後にすぐに上級採用の公務員になりました。
その妻がある年の12月に出産し育児のための休暇を半年間とったことがあります。
妻は、働いてちょうど10年目の年度でした。特別に問題のない職員は、前述の「主事」から「主査」に出世し、基本給が約2万円程度あがることとなりますが、育児休暇中の妻はその対象から外れました。
10年で出世することは必ずしも約束されたものではありませんが、途中選ばれて外部機関へ出向するなど問題があるどころかむしろ積極的に働いて成果をあげていた方だと思います。
人事部局の話では、出産・育児休暇中は、人事異動や昇任を行わないのが「慣例」だということでした。
その後も出産のたびに同期の職員と比べて昇任が遅れていっています。

(子育てしやすい街づくりとか言っておきながら・・・)
出産と育児のための休暇は、たいぶ昔には病気休暇と同じ扱いだったと聞いていますが、今は違います。ちなみに病気休暇の最中は人事異動や昇任の対象にはなりません。
なぜか今でも、出産と育児期間中の人事には「病気休暇扱いの時の慣例」が残っています。
自分の人事のことってなかなか言いづらいですよね?
とくに依然男性中心の公務員の世界では女性から問題提起してもなかなか共感されない気がして諦めの気持ちが先になってしまいます。
私は妻に何となく申し訳なく思ったのと同時に、少子化対策として「子育てしやすい街づくりを進めて、産み育てたいと思う人を増やそう」と行政は声高に叫んでおきながら、足元では女性公務員が、子どもを産むたび不利益を受けて、それが生涯年収や老後の年金にまで影響するという事態に全く納得いきませんでした。

(市役所での改革)
私は、市役所で人事を担当する部長に就いた際に真っ先に昇任制度の見直しを行いました。
慣例によらず積極的に仕事をして成果をあげた若手職員はどんどん登用しました。
あわせて、女性の活躍が将来にわたる地域の活性化に不可欠だと考え、「出産と育児期間中は人事をしないという慣例を撤廃」しました。
ちょうど育児休暇中で昇任のタイミングの女性職員を昇任させるとともに、職場復帰の際にスムーズに復帰できるようなお試し出勤などの新制度も導入しました。


今は「男女平等」からさらに進んで「ジェンダーレス」の時代です。
「元始女性は太陽であった」という平塚らいてうの言葉がありますが、コロナ禍の今こそ女性が生き生きと輝いているような社会であってほしいと思いますし、その笑顔で子どもたちも元気になります。
行政は、改革を進める際には、まず足元から見直してみることも大切だと思いますし、このこと以外のことでも「慣例の呪縛」を一つでも多く解き放ってほしいと思います。

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